神隠し78
そんな偉い爺ちゃんが、態々出迎えてくれるとは、恐悦至極なりってな。
「あ~そのですね。
私が皆さん、色々と気に掛けて下さっているのですが、私が馴れないので仕方ないんです」
そう告げたらさ、爺ちゃんがね。
「トンでもないことです。
葵天が、お気を使われることなど、ありませぬぞ」って…いや、全然通じてないやんね。
「そうじゃなくてですね。
あ~何て言やぁ良いのか…
そうだっ!
ルマドさんが、俺より偉いと、いきなり取り決められたら、どうします?」
そう尋ねたらな。
「滅相もないっ!
なんと、恐れ多いことを………」
いや、真っ青になって、震え上がるほどのことか?
そんなルマドさんへ、追い打ちを掛ける訳ではないんだが…
「今、ルマドさんが感じている気持ち。
それよりも酷い状態が、今の俺なんです。
俺は世界が違うとはいえ、一般庶民に過ぎません。
つまり平民ですね。
俺の住んでいた国には貴族階級はありませんでしたが、金持ち連中はいました。
俺は平凡な1市民に過ぎない男です。
そんな俺が、異世界へ迷い込んでしまい、招かれ人として、敬われることとなってしまった…
ルマドさんは、俺の言葉に衝撃を受けたようですが、俺は、それ以上の戸惑いと困惑を受けているんです。
そんな俺へ無理のないよう、皆さんは良くしてくださってますよ。
エドワードさん達に非は無いんです」
そう告げたらな、考え込んでしまったよ、皆が…あんるぇ?
良くしてくれる執事長とメイド長が、誤った評価をされないように、援護したつもりなんだがな。
そんな2人を含め、アリンさんとヒューデリア嬢までが、考え込んでしまったぞ。
なんでだ?
したらな、アリンさんが苦笑しつつ…
「下々に身を置き換えて、と言う想定で考えを巡らせることは、意外と難しいものです。
ですが、己の分を超えた評価と考えた場合…意外と身近に感じられましてね。
考えさせられましたよ」
そんなことをさ。
確かにな、別に見下したり、差別する訳ではないが…ストリートチルドレンの身になって考えろと言われてできるか?
俺には無理だ。
可哀想とか、大変だろうな、とは、思えはする。
だが、彼らの身になって、実際に思いを馳せるなど不可能だろう。
だって、実際に経験してないし、生活レベルを下げる想像など無理だろう。
まぁ、極端な生活レベル向上の場合もだがな。
同じようにアリンさん達も、平民で平凡なと言う俺の言葉が理解できなかったに違いない。
なにせ貴族様なんだからなっ!
けど、現状の身で勘違いされて皇族を超えた扱いを自分がされたとしたら…そう考えたのだろう。
なるほどな、現状の自分を基準にしたからこそか…
考え方の基点を変えるだけで、随分と変わるもんだ。
思わず考え込んでしまった俺へルマドさんがさ。
「葵天が、仰られることも、身に染みましてございます。
なれど、招かれ人は貴いとされており、これは覆りませぬ。
ご容赦をば」
いや、別に責めてる訳ではないんだがなぁ~
でも、理解はして貰えたみたいだし、良っかっ。




