神隠し69
皇王様に言われ、あらためて理解したのだが、招かれ人だとは言え普通は容易く真素操作可能になる訳ではないらしい。
「そうと言われても、正直不安なのです」
思わず本音がな。
「不安?なにがかね?」
怪訝顔で尋ねられる皇王様。
っか、フレンドリー過ぎね?
不敬とかないよね?
「あ~、今の状況そのものもですが、招かれ人としての扱われ方もですね。
招かれ人は扱える真素量が多く、真素操作にて様々な貢献を成してきたと聞いております。
なればこその優遇だと思っているのです。
なのに真素が扱えない現状…
招かれ人なのに、ろくに真素操作が行えなかった招かれ人の扱いは、どうなってしまうのかと」
話を聞いた皇王様がキョトンって顔に。
「いや、これは驚いた。
いやいや、考えてみたら、こちらの配慮が足らなかったか?
過去に現れた招かれ人で真素操作が行えない者は居らなんだゆえ、そのように思うとは、露にも思うておらなんだわ。
なにせ招かれ人は滅多に現れぬ存在。
国によっては伝承や伝説、お伽噺での話でな。
我が国では聖女様が居られるが、あの方は俺が産まれる前から、この国に居られるからなぁ~」
そんなことを話していると、アリンさんが…
「陛下、卑賤な身なれど、言上差し上げたく、存じます」ってね。
凄っく畏まっています。
って当然かっ!
「うむ、許す、申すが良い」
まさに、善きに計らえって感じで。
これが正しい接し方なのだろうな。
「御意、お言葉に甘え言上いたしまする。
葵天におかれましては、既にこちらへ向かう鳥車にて、真素を操られておられまする。
ゆえに、真素が扱えられぬとは、ならぬかと」
そう告げると皇王が頷いてな。
「その報告は上がっておった。
だが…扱われた真素操作内容が面妖過ぎぬか?
事実とは信じ難いのであるが?」
そう皇王様が告げると、あらかじめ打合せてあったのか、後方からエドワード執事長がな。
スルスルと皇王様の前へ腰を屈めつつ移動し、ビロードの覆いに包まれた代物が乗った盆を皇王様の前へと。
なんだろね?
「これは?」
皇王様も不思議そうに、それを見た後にビロードの覆いを開く。
って………えっ?
包から現れたのは、○RANGINAの空き瓶でした…なんじぇ?
綺麗に洗われているとはいえ、ごみだぞ、それ。
俺が呆気にとられているとだな。
「そちらが実際に、葵天が真素操作にて創成された品でございます。
本来は飲料物が入っておりましたが、今は失っている状態となっております」
俺達の腹の中になっ!
「ほぅ、これが、か…
話には聞いたが、報告内容では解らんものだな。
確かにガラスのようではあるが、ガラスでない…
かなり軽いな。
しかも、弾力があるゆえ、割れ難いのではないか?」
興味津々ですね、分かります。
「このような品を創成する真素操作を、行われておられる訳でございます」
「うむ、アリン卿。
卿の言いたいことは分かった。
葵様は既に真素操作を行われておるゆえ、出来ぬはずがない、そうだな?」
「御意」
いや確かにさぁ…
「けど、鳥車と言う限られた空間でだぞ。
普通に扱えないと意味なくね?」
思わず告げたが…俺の言葉使いって、不敬じゃね?




