神隠し100
「レクイア鳥って、餌を強請ったりするんだなぁ~
びっくりしたぁ~」
「驚いたのはっ、こちらの方ですわよっ!
このようにレクイア鳥の顔を近くに見たのは、初めてですわっ!」
いや、ヒューデリア嬢…そがぁにさぁ、怒らんでもさ。
「あ、相変わらず…予想できないことを、なされますなぁ…
流石に、驚きました…」
うん、アリンさん、ごめん。
だからさぁ…そんなに脅えなくてもさ…
確かに、レクイア鳥の顔が迫ってきたのは迫力あったけど…
うん、実は、俺も本当は、恐かったけど…
メイドさん達の中には、腰を抜かしたり、パニックに陥った者がね。
エドワード執事長とエルドリア・メイド長が、そんな彼女達の面倒をね。
いや、何気に、大騒ぎになったものだ…
遠い目。
騒動になったので、今日の検証実験は、急遽中止になりましたとさ。
仕方ないか…
レクイア鳥車へと乗り込みヴァルハラ館へとな。
飛翔する鳥車の中からタラーザ荒野を見ると…パニックになった生き物達が走り回っているのがね。
誰が、あんな迷惑なことを?
って、俺か…
いやね。
あそこまでの大騒ぎになるって思わないじゃん。
うん、俺に責はないったら、ない…
済んまそぉ~んっ…
そんなタラーザ荒野を背にヴァルハラ館へ戻ってんだがな、なんだかレクイア鳥が、ご機嫌なのが伝わってくる。
うん、良かったね。
でも…なんで俺、レクイア鳥が、ご機嫌なのが分かるんだろね。
同時に、ユラちゃんも、ご機嫌なんだね。
って、何で分かる、俺?
鳥車へ来る度に、何かしら不思議現象が発生するんだが…流石は異世界だな。
えっ?俺のせい?
いやいや、俺は何処にでもいる一般庶民だよ。
だからさ、俺がなにかできる訳ないやん。
せやからさ、これは異世界だからなんだよ。
うん、証明完了ってね。
そんなことを思っている間に、鳥車はヴァルハラ館へと。
第1宮の駐車場へと着陸した鳥車から、俺達は下車する。
当然、ユラちゃんもな。
まだ結界内だからなのか、レクイア鳥の感情が…
寂しがってる?
なんで?
降りてユラちゃんの背へ付けられた長椅子型鞍へと腰かける。
うん、ユラちゃんが誇らし気で、さらに嬉しそうだな。
結界を越えて第1宮の屋上へと。
葵層へとユラちゃんに揺られて移動したんだけど…なんだか騒がしくね?
「エドワードさん。
なんだか、騒がしいみたいですけど…なにかありました?」
そう尋ねたんだが、一緒に移動していた執事長に分かる筈もなく…
「流石に解りかねますな。
確認して参りますので、しばし、お待ちを」
そう告げた執事長が、俺達の元を離れる。
いったい何事かね?
しばらくして執事長が戻って来たんだが、困惑してるようなんだ。
どうしたんだろ?
何があったのか尋ねたらな。
「実はですな。
レクイア鳥が屋上から離れず、騒動となっておりましてな。
理由が解らず困っておるそうなのです。
このようなことは、前代未聞にございます」
いや、まさか…な。
違うとは思うが…
「鳥車が停まる駐車場へ戻ってみようか。
ちょっと気になることがあるんだ」
そう俺が告げたので、屋上へ引き返すことにな。
俺の気のせいなら良いんだが…
気のせいだよね。




