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『目標補足、これよりミッションを開始する』

難産でした。

 目が覚めると、見覚えのある…もとい宿屋の天井が見えた。

 上体を起こして周りを確認。

 うん、問題無いみたい。


 「よっと」


 さて、昨日は確認できなかったステータスチェック。

 Name   :コモン

 Sex    :男性

 Race   :凡龍ノーマライズドラゴン人化形態ヒューマノイド・フォーム

 

 HP     :100%

 MP     :100%

 

 Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅱ(36%)

 Head   :凡龍兜・頭吉+2

 Bady   :凡龍鎧・義胸+2

 RArm   :凡籠手・右京+2

 LArm   :凡籠手・左京+2

 Leg    :凡龍脚・脛雄+2

 Acce   :凡龍環・厳首+2

 

 Title  :【平々凡々】

 

 Skill  :『武闘術』Lv35 『平凡化』Lv32 『行動制限解除』Lv30 『発見眼』Lv26 『鍵人』Lv2 『趣味術』Lv34 『生存本能』Lv1 『龍言語』Lv5 『精龍魔法ドラゴバルク・マジック』Lv2


 うん、ディレイタイムが完全に消えてさっぱりした気分だ。

 その他のスキルもメキメキと上がってる…上がってるんだけども、どうも『鍵人』って言うのがいまいち解らない。

 そして今一番の不安材料『龍魔法』が何時の間にか消えて『精龍魔法ドラゴバルク・マジック』の表記が現れている件。

 何時の間に取得したんだよ、とツッコミたいんだけど。

 心当たり…はそんなに無い、筈。

 と言うか『精霊魔法オラクルマジック』自体使った事が無い。

 常に己の身一つと(えもの)だけ。

 そして肝心の魔法と言っても、精々が息を吐く程度。

 だからどんなものかピンとこなかった。

 ま、難しい事を考えるのは(やぶさ)かというもの。

 この件に関しては一先ず措いといて、今は依頼序でに観光と洒落込もむのが先決!

 難しい事は後回し、思い出したらって事で。

 さて、食事が済んだらギルドへ。

 取り敢えず食堂で昼食を食べ終わった僕は、ギルドに向かう。

 なるべく街中を移動するだけの依頼が無いか探してみるか。

 覗いてみると、昨日とは違ってオー…何とかというお邪魔虫が消えたせいなのかな? かなり人が来ていた。

 一先ず依頼内容の紙が張り付けられた掲示板に向かうと吟味する。

 ただ、青銅ブロンズだけあってあんまり良い内容の者が無かった。

 採取系やほんのお使い・お手伝い系の依頼の多い事多い事。

 納品系は…無いか。

 というか一つも、無い……?

 いや、有りました。

 新しい依頼書を捲ってみると、ちゃっかりと。

 まぁ、取敢えず受けてみ――――


 「あ」


 依頼書の紙を剥がそうとしたら、横から手が出て掻っ攫っていきやがっただと!?


 「ヒヒヒッ…悪いな。お前が受ける依頼何ざ無いぜ、青銅ブロンズさんよぉ」


 こいつ…。


 「……へぇ」


 すかさず喧嘩上等シリーズ武具へと換装、横槍を入れてくれた不届き者から依頼書を奪った。


 「な…てめぇ!?」


 「あのよぉ…こういっちゃなんだけどよ、お前、書を提出して来た依頼者舐めてんだろ…? ああ?」


 便利だ。

 【メンチ切り】は『龍之威圧ドラゴンプレッシャー』と違って部分変化含む、変身に割くMPを必要としない。

 ただ、喧嘩上等シリーズ(この武具一式)を装備しないと無理だけどね。

 何か叫びたそうなそいつに憐みの眼差しを向け、右手を肩に置いて一言。


 「…強者であれ、何であれ、始めたばかりの冒険者は皆低ランクなんだぜ?」


 常識的に考えれば、の話だけどね。

 さて、コイツがそれが通ずるのかどうかさっぱり解らんけども。


 「…ああ、僕の事は“総長ヘッド”と呼んでくれ。んじゃ、夜露死苦、と…あ、受付のネーチャン、これ、頼んますわ」


 依頼書を受付のお姉さんに提出したんだけど…思いっきり恐がられてます。

 めっちゃ怖がられてます、現在進行形で(なう)

 仕方が無い。

 普段の武具に装備し直して、部分的な『龍化』でちょこっと角を生やしてみる。

 といっても西洋のドラゴン的な、じゃなくて極東の方のイメージで。


 「これで大丈夫、かな?」


 「え、えー…と…」


 「心配無いさ。さっきのは単なる早着替え、ああ言うのを着込まなきゃ脳無し共が付け上がる。さっきまでのはそいつ等に対する警告さ」


 新人に対する洗礼は、内容を加味していても割に合わない。

 特に場馴れした強者と気付かず相対した時、は最悪、死が待っている。

 だから、命が惜しい人間程やらない傾向にある。

 僕に絡んで来た奴は多分、場馴れして無い殆ど未経験の、本当の初心者を弄ぶ事に快感を憶えてる奴とみて間違いない。

 この場合もしかしなくても冒険者としての本業を疎かにしていると考えられる。

 スリ…この場合スナッチ(掠め取り)、もしくはラプター(横槍)行為は常識的に考えれば、いくら早い者勝ちだからと言って、やっちゃいけない最悪の禁忌タブー

 それが常習化しているとなればこいつが溜め込んでる依頼は未だに履行されて無い状態に在るとすれば…。


 「取敢えず依頼人の所に向かいたいんだけど…駄目かな?」


 「え…あ、はい」


 「それと、未了の依頼が無いか、他の受付の人達と一緒に調べて欲しい。さっき掠め取られそうになってね、もしかしたらって事だから。報告はサブマスのグレンさんに」


 トーンを落とし、耳打ち程度のボリュームでさっきの内容を報告。


 「ふぇ!? …へ?」


 「別に今じゃ無くて良いよ。やった所で怪しまれるだけ、だからそいつ等に気付かれない様にこっそりと、ね。悪い奴等を逃がしたくは無いでしょ?」


 「そ、相談してきます」


 「ん。そうそう。ま、“ほうれんそう”は基本だね」


 「???」


 「おっと、何でも無いさ」


 報告・連絡・相談。

 子供の頃からゆっくりと植え付けられる社会人としてのマナーの一つ。

 こればっかりは守らなきゃ格好良い大人にはなれない必須のスキルでもある。


 「んじゃ、行ってきます」


 「いっ…行ってらっしゃいませ」


 大丈夫かな、この娘。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 ギルドから出て、大通りを抜けた先に有る、一般市民が済む住宅街に向かう。

 依頼主の居る場所は直ぐに解った…解ったんだけど…。


 「ボロボロじゃん…」


 此処の一角だけ、ものっそい寂れてる感が溢れて居るんですけど!?。

 何か怖い。

 黒い生命体とか、居ない…よね?


 「御免下さ――――ぎゃおおおん!?」


 ドアを軽くノックしたら、いきなりドアが開いて大量の本らしき物の波に呑まれてしまった。

 ちょっと待て。

 軽くノックしただけだよね?

 なして開くの!?

 というか本置き過ぎるよ!?

 せめて整理とかしてくれないかな!?

 ねぇ!?

 ねぇ!?

 兎に角本の雪崩に巻き込まれてめちゃんこ苦しいです、早く助けて…ぷりーず・へるぷみー!!

 ……早く助けてよ!!

 良いから早く僕を助けなさい!!

 重い!!

 重いの!!

 愛より重い本をどかしてください!!


 「うぁぁぁぁぁ! し、しまったぁぁぁぁ!! や、やっちゃったよぅ…はっそ、そうだ…だ、だだだ大丈夫ですかぁぁぁぁぁ!?」


 やっちゃったって…これ僕だったから良かったなものを、そうじゃ無かったらあの世行きだってーの。

 それよか気が付いたならはよサルベージ、カモン!!


 「でもどうやって…うー、どうしようどうしよう」


 言って無いでどかしてよ!

 一か八かだ!


 「――――『土精龍ノーム、本の山から吾を助け出せ』!」


 すると、小さな土気色の蜥蜴が現れて、本に埋もれた僕をあっさりと引っ張り出してくれたのだ。

 キューキューと可愛らしく鳴きながら僕の肩に昇って頬ずりしてくる。


 『主、助ケ出シタヨ。撫デテ? 撫デテ♪』


 おおうふ…なんともまぁ可愛らしい事。

 これが『精龍魔法ドラゴバルク・マジック』で呼び出した土精龍ノームなのか。

 はは、可愛い奴め、可愛い奴め。

 お礼に撫でたらぺろぺろ舐めてくる、よしよし良い子だ。


 「ふぅ…『風精龍シルフ、吾眼前に映る本を浮かせ倒れない様に積み上げよ』!」


 そういうと、羽毛? の生えた鳥みたいな緑色の蜥蜴が出てきて地面に落ちた本全てが浮き上がって、開いた本棚の中に整理された状態で置かれた。

 勿論、この子も撫でてあげると嬉しそうに飛び回った。


 「『土精龍ノームよ、風精龍シルフよ、こ度の活躍は大変素晴らしいものであった。吾も嬉しく思うぞ。吾魔力は褒美だ、存分に味わってくれ』!」


 『在リ難キ幸セ…主ノ魔力、美味シイ!』


 『嗚呼、何ト言ウ幸セ! 感謝シマス、主!』


 「『そうか、それは良かった。ではまた呼び出す機械が有るかもしれん、それに備えてゆっくり休んでおいてくれ』!」


 『『ハハ。デハ主、我々ヲ呼ビ出シテクレタ事感謝シマス』』


 「『ああ、息災でな』!」


 思わぬ収穫だ。

 勢いで彼等を呼んでみたけど、どうやら上手くいったみたいだ。

 多分呼び出す精霊は皆チビドラ達の姿になるんだろうね。


 「…い、今のは…? はっ!? ああ、そうだ、御免なさい調べものしていたもので!! しかも、片付けてしまわれるなんて驚きました…凄いです。あ、いやそんな事よりもささ、中へ。少々散らかってますが、今お茶を淹れてきますね」


 慌ただしい人だな、と思いつつ家の中へ上がる。

 物凄く紙で溢れてるねぇ…こりゃ片付けるのに一日掛りそう。

 胸中呆れながらも、ソファに腰掛けた。

 改めてみると、結構ハンサムな青年と言ったところかな?


 「済みません。こんな物しか用意できませんでした」


 「いえいえ、お気遣いなく。私は仕事の依頼で来て居りますので」


 「と言う事は、依頼を引き受けて貰えるのですか?」


 「はい」


 「ああ、良かったぁ。これでレポートを期限までに提出できます」


 「内容にもよりますけどね」


 「それでも、です」


ふむ、この人は何かの研究者なのかな?


 「そうそう、忘れてたけど依頼の内容に入る前に自己紹介。僕は薬草学を専門に研究しているサルースと申します」


 「私はコモンと申します」


 「内容としては『毒草から人体に有用な薬を作れないか』と言う物です」


 うわ。

 これ滅茶苦茶現代チックな感じがする。

 いや、そうでも無いか。

 漢方薬なんかはそう言う物が多い。

 因みに罠用として幾つかの毒草をストレージに入れてある。

 一昨日使用した【毒草デモニウム】もその内の一つだ。


 「資料を見てもこれまで普通に薬草として出回っている既存のものしか存在していないんです。同時に採取の依頼等で廃棄されてしまう毒草を研究して薬として新たに利用できないか…というのが今回僕がレポートに取り掛った理由なんです」


 但し、と付け加えて


 「さっきも言った通り、毒草についての内容が記された資料が無いんです。だからこれと言って進んで居ないのが現状ですけどね」


 「成程。だとするならば今解ってる毒草の効力が実際に正しいのか検証してみて、それと並行して人を救える薬の研究をしてみるのが良いと思うんじゃないですか? もし私で宜しかったら微力ながら、手伝わせて頂きます」


 「ほ、本当ですか!?」


 「乗りかかった船ですよ。僕はまだ駆け出しの冒険者ですので素人判断でしかないですけど、それでも把握して備える事は他の冒険者にとっても大切な事だと考えて居ます。結果として研究が役に立つのなら僕は努力を惜しみません」


 「有難うございます! コモンさん」


 兎に角、この街で目標が出来た。


 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸


 先ずは資料に必要な毒物の採取から始まるんだけど、ここ等辺はそんなに珍しい種類が無い。

 今僕がストレージに入れているのは【デモニウム】【ヒデュアガー】のニ種だけ。

 内、【ヒーリス】と【ララクラフト】は回復藥の材料として使用している。

 【ハッカッカ草】はペパーミントや薄荷と同じ様な物だと思われる。

 【ア・ブラ草】に関しては食用だと言う事は判明しているだけで、詳細は全くと言って良い程解らない。

 植物図鑑何て言うのが有れば良いんだけど、そんな本をこの世界で一切見掛けた事が無い。

 はてな、何故(なにゆえ)に?

 必要な事でしょうが!

 モンスター図鑑は有るのに植物図鑑が無いとはこれ如何に。

 考えても仕方ないか。

 それを今からその基礎部分の作成を実行するのはサルースさんの領分で、僕はただのバックアップでしかない。

 となると最初は聞き込みからか。

 アジャンターからアルパシディア間の森の植物がどんな種類なのか知らない現時点だとそんな物だろうね。

 前途多難だ。

 取敢えず今は有るだけ出すか。

 ストレージから毒草である【デモニウム草】と【ヒデュアガー草】、それから【ヒーリス草】、【ララクラフト草】、【ハッカッカ草】を取り出す。

 紙の上に置いた状態で机に置く。

 直接触れるのも怖いので、手袋を付けるのも忘れない。

 無論、サルースさんにも手袋の装着を勧めた。


 「今僕が所持している薬草・毒草の類はこれだけですね」


 「【ヒーリス草】と【デモニウム草】は兎も角、後のは見掛けないものですね」


 「【ララクラフト草】と【ヒデュアガー草】【ハッカッカ草】です」


 「初めて聞く種類です」


 「【ララクラフト草】と【ハッカッカ草】の用途は有る程度はっきりしています。毒草の類は主に罠用として採取、保管しているといった状況ですね」


「一応訊いても?」


 「はい。先ず薬草である【ララクラフト草】は手を加えれば【ヒーリス草】よりかなりの苦み…もといえぐみが抑えられます。現に私がアジャンターで作成した回復藥ポーションにはこれを使用して居ります。一度【ヒーリス草】で作った回復藥ポーションを飲んだら酷い事になりましたから、これは採用の余地が有ります。食用としても優秀ですので栽培出来れば需要が一気に増えるでしょう。副作用も無い様な感じですね」


 「…成程」


 「勿論、【ヒーリス草】が全く駄目という事は無いと思います。ペースト状にして、患部に塗布する方が飲むよりも効き目が良かったですから」


 「その発想は無かった。…そうか、薬だから口に含んで飲むものという概念にとらわれ過ぎて居たのか」


 「次にこの【ハッカッカ草】は喉に良いみたいです。すっきり、爽快な気分になります。【混乱】に対しても耐性が付きます――――ただ、現時点での加工の扱いが『料理』になりますけど」


 「へ?」


 「どうやら“食材”としての扱いを受けて居る様で、最初は僕も驚きました」


 ストレージからハッカッカ飴を取り出して、サルースさんに渡す。


 「【ハッカッカ草】を使用した飴です。【クルミルの実】から取り出した糖分で砂糖を精製するのに骨が折れましたが、それと合わせて作りました」


 「これは…凄い! …爽やかな口当たりと…甘さもすっきりとしている…」


 飴を口に含んだサルースさんから感嘆の声が上がる。

 これはアジャンターにある、ブリギットさんのお店でグミと並んで一、ニを争う人気商品の一つで安めの値段もさる事ながら思考品とは思えない程の効力を備えている。

 因みにNPCだとフルーツ系は子供に人気で、ハッカッカ飴は大人や歌を嗜む人、声を武器にして戦う人達に大人気の商品だったりするのだから世の中何が起こるか解らない。


 兎に角、問題は此処からだ。

 毒草、今お前等のベールを脱がせてやるからな!

 Name   :コモン

 Sex    :男性

 Race   :凡龍ノーマライズドラゴン人化形態ヒューマノイド・フォーム

 

 HP     :100%

 MP     :100%

 

 Weapon :凡剣・日常茶飯事Ⅱ(36%)

 Head   :凡龍兜・頭吉+2

 Bady   :凡龍鎧・義胸+2

 RArm   :凡籠手・右京+2

 LArm   :凡籠手・左京+2

 Leg    :凡龍脚・脛雄+2

 Acce   :凡龍環・厳首+2

 

 Title  :【平々凡々】

 

 Skill  :『武闘術』Lv35 『平凡化』Lv32 『行動制限解除』Lv30 『発見眼』Lv26 『鍵人』Lv2 『趣味術』Lv34 『生存本能』Lv1 『龍言語』Lv5 『精龍魔法ドラゴバルク・マジック』Lv2

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