6/20
2三、 偽りの殻が割れる時
だが、破滅は唐突に訪れる。
「蛇の目」に利用されていた若者は、ある日、組織の身代わりとして役人に売られた。それまで手に入れた金貨はすべて没収され、信頼していたリリスもまた、彼の元を去った。
「ごめんなさいね。私、『強い人』の隣にしかいられないの」
彼女が去り際に投げた言葉は、かつてアウグストが放った言葉よりも深く、若者の胸を抉った。
彼は再び、すべてを失った。それどころか、強欲に溺れて他者を傷つけ、色欲に溺れて自分を磨くことを放棄した結果、彼の「心」はかつてないほど脆く、ボロボロになっていた。
牢獄の中で、彼は自分の手を見た。泥と脂に汚れ、震えている。
そこにあるのは、知性でも品性でもない、ただの**「醜い欲望の残骸」**だった。
「……私は、何のために門を出たんだ」
彼は、暗い牢獄の壁に頭を打ち付けた。その「痛み」だけが、彼がまだ生きていることを教えてくれた。
この時、若者は初めて**「自分を律する本当の掟」**が、外の世界の金や女にあるのではなく、自分の内側にしかないことを、血を吐くような思いで理解し始めた。




