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ゲームの中で魔王から世界を救おうと思ったらジョブが魔王軍のスパイだった  作者: うちうち


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街の外へ一歩を踏み出す

ブックマーク、評価していただいた方、本当にありがとうございます。すごく励みになりました。

 ギルドからいきなり飛び出してきてそのまま通りに頭から滑り込む人間は珍しいのだろう、周りの視線が突き刺さる。あかん、スパイなのに超目立ってる。……今回はHPは減っていないようだった。装備のおかげか、それとも転び慣れし始めたからか。なんとなく両方な気がする。……と、倒れている僕の隣に人が立っているのが見え、飛び起きた。埃を払いながら相手を見るが、僕の服は全く汚れていなかった。そういえばこれゲームの中だったっけ。


「すまん、急に走り出して、どうしたんだ?大丈夫か」


 そう声をかけてきたのは、先ほどギルドの中でも僕を呼び止めたらしき青年だった。後ろにパーティーメンバーらしき仲間が1人。こちらは女性だ。大丈夫?と言っている。今この状況が大丈夫じゃないです。


「すみません……いきなり声をかけられてびっくりしたもので。私に何かご用でしょうか?」


 とりあえず最大限に猫を被って笑顔で返事をする。ほらほら、僕悪い上級魔族じゃないよ。ただ、ここで斬り殺された場合はお前を末代まで呪う。


「あんたはびっくりしたら無言で走り出して道に向かってヘッドスライディングするのか……」


「……いきなり声をかけられてびっくりしたもので。私に何かご用でしょうか?」


 聞こえてきたもっともな感想は無視してとりあえず繰り返すが、どうも向こうの言い分が正当な気がする。隣の女性も大丈夫だよ、と言ってやたら優しい表情で笑いかけてくるが、初対面の人間の後ろ姿に「おい」って声をかける方も少し変だぞ(逆ギレ)。常識人な顔をして恐ろしい2人やでぇ……すると、こちらが身構えているのが分かるのだろう、青年は困ったような顔をしながら、続けた。


「いや、ギルドの中でずっと挙動不審だったから、声をかけたんだ。まだ慣れてないんだろうなっていうのが分かったから。驚かせてごめん」


 ……あれ、この人いい人?話してる内容はまともな気がする。挙動不審云々は聞かなかったことにするにしても。にしても!なんか優しそうだし。でも後で恋人とか殺されたら唐突に冷酷な殺人鬼とかに変貌しそう。偏見かな。偏見だね。すごく失礼なこと(?)を僕が考えていると、後ろの女性がそれに話を続けた。


「それで、せっかく同じテストプレイヤーなんだから、助け合える部分は助け合えたらな、って思って。どこかでちょっと話さない?」





 男性はヴィート、女性はユウと名乗った。テストプレイに友人か恋人同士で応募したのかと思いきや、知り合ったのは昨日らしい。ヴィートがギルドでまごまごしているのを颯爽と救ったのがユウさんだったそうな。それで、ヴィートが自分も困った人を見たら助けようと思っていたところに僕が現れたと。おおう、いい人だ。スパイとしては超利用しやすそうでもある。とりあえずはしないけど。こちらの事情も聞かれたので、昨日は寝込んでいたためギルドに来たのが今日になったこと、ナンパが怖くて身構えていたこと(捏造)を話した。すると、びっくりさせたお詫びにと、何でも教えてくれるらしい。やったぜ。でも知りたいことかあ……なんだろね。街の外の様子と、攻略組の状況、ギルドで取得できるスキル、くらいだろうか。


「街の外は草原になってて、角の生えたウサギとか犬がいたよ」


 ホーンラビット!知ってる!話の最初の方に出てきていっつも肉とか毛皮にされてるやつだ。小説の中で何回も何回も狩られてるのを見たことある。もう僕もホーンラビット狩りのベテランと呼んでもらっていいだろう。自分で実際にやったことはないけど、そんなの些細なことだと思う。……そんなことないか。




「攻略組は、うーん。東の方にいるボスの手前の森まで行ってるって掲示板で見たなあ」


 どうやら、掲示板があるらしい。確かにメニュー画面、ちゃんと見てなかったけど、開いてみたらそれらしき項目がある。後で見てみようか。




「ギルドの訓練場では、鑑定と、各職業の一番基本的なスキルを教えてもらえるわ」


 なんと、僕の天敵の鑑定持ちはギルドで増産されているらしい。ギルドの建物って燃えやすいのかな。ゲームだから無理かな。うーん、街中の建物って破壊できなさそう。困る。


「なんか、こいつ今ろくでもないこと考えてる顔してるぞ」


「可愛いからいいじゃない。可愛いは正義よ」


 ろくでもないことを考えてる顔って具体的に何だろう。顔に出るスパイって致命的じゃなかろうか。……そもそもスパイって言うけど、まず誰に情報伝えるのか、わからない。致命的。でもよかった。これでようやく外に出られるね。






 2人とフレンド登録をした後別れ、僕は街の外に急ぐ。しばらく大通りを歩くと門が見えてきた。そして、入口を守っている門兵に会釈して、ようやく僕は街の外へと一歩を踏み出した。ここまで長かったなあ……と感慨にふけりながらあたりを見渡す。門の外は、足首くらいまでの草が一面に生えそろった草原が広がっており、視界の右の端っこの方には森が、左には岩石地帯っぽいのが見える。草原は風が吹いている場所が波打っていて、なんだか海のようにも見えた。モンスターが出ないなら、ここで昼寝したいくらい。出るから寝ないけど。さて、僕の記念すべき初の獲物はどこだ。ぱっと見いないなあ。プレイヤーはちらほらいるけど。

いちおう1日1話ペースでしばらくは投稿できればと思います。


3話目あたりで街の外に出てるはずだったんですが……うーむ。

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