#1 終わる様に始まる
そして今日も塾の先生に怒鳴られながら追試を終えて家路に着く。
最初の一文からもう全て終わってるんじゃないかと思うくらいに気が重い、
こんな夜遅くには友達がいればあるいはワクワクするのではないか。
深夜テンションとやらで一緒に帰れれば逆に凄まじく楽しいのではないか。
そんなことを考えながらながら独り信号を待つ、
それでもなかなか変わらない信号の色を見ながら少し自己紹介をする。
まずは僕の名前は で、将来の夢が だ。
そのために受験勉強をしている、それだけだ。それだけの人生だった。終わり。
そんな最高に憂鬱なティーンエージャーの自己紹介が終わったところで信号の色が変わった。
いや、ほんとはもっとティーンエージャーらしく将来の夢とかを語るべきなのかもしれない、
あるいはヒロインの好感度が上がる様な子供のころの
語るのも恥ずかしい夢を暴露するべきかもしれない、
あるいはヒーローに変身させてくれる人形みたいな妖精を見かけたと
自慢するべきなのかもしれない、
あるいはやめてしまった運動の紹介をして異世界転生の伏線を立てるべきかもしれない、
あるいは
けど実際は何もないnullなのが僕だ、そんなヌルヌルな心境の僕が駅に着いた。
なんだかんだいってもやっぱり駅まで来ると一日をやり切った達成感がある。
この気分を大事にする為にいつも僕は自販機でとびっきり甘いコーヒーを買う、
そしてベンチに座りながらコーヒーを味わう。
この甘ったるいコーヒー風味の牛乳を多分明日も買うんだと思うと憂鬱になるが、絶対に買う自信がある。
なんだかんだで元気が出てしまうのだからしょうがない、明日も頑張るぜ!
下を向くよりも上を向いて歩こう!何だろう、風が吹いている気がする、確実に!
僕を後ろから励ます追い風が!そんな気分でガッツポーズをしたところで
僕を励ます追い風は僕をホームから落とした、顔を打ち付けた。
あれ、これはどういう事だ?理解が追い付かないまま僕は人生で初めてスポットライトを浴びた、
電車のライトだ、走馬燈は、走馬燈を見る時間は、無い。こうやって華々し
くもなんともなく死ぬのが僕らしい、これで僕は死んだようだ。
案外その時僕は泣いていたかもしれない。




