To know the world which doesn't know
雨が降った次の日、晴れた日は特に好きだ。
青々しい葉っぱに残った水滴たちが、太陽に光に照らされて、遠くで見るときらきら輝いてとてもきれいだ。草木たちを輝かせるその瞬間、俺はすべての作業をいったん忘れ、思わず見入ってしまう。そしてふと思い出し、庭に生えている薬草を摘み始める。
太陽がだんだんと上に昇り始め、だんだんと水滴も空中へと蒸発し始めてきた。
カラン、カラン。
独特の音を耳にし、俺は薬草が詰まった籠をその場に置き、庭の入り口へと向かった。
「こんにちわ。郵便でーす」
俺の姿を認めると、彼は笑顔で手にある郵便物を差し出した。
「お疲れさまです」
「今日はいい天気ですね。お天気がいいうちに、できることはやっちゃわないと」
「そうっすね」
そう言って彼は、身長に見合わぬ大きなカバンを持ち直し、さっそうと去っていった。
俺はさっと受け取った郵便物を見る。どれも俺の師匠宛に届いたもののようだった。
今度はリーンリーンとすんだ鈴の音が聞こえた。振り返ると、家の窓から鈴片手にチェンニが顔を出している。
「ユーリー、ティータイムにしましょ。この間もらったクッキーでも食べよ」
「分かった。裏の荷物だけ持ってくる。あ、あとこれ師匠宛の」
受け取った郵便物をチェンニに渡して、俺は裏へ薬草を摘んだ籠を取りに行く。
家の中に入ると、紅茶独特のいい香りが玄関にまで漂ってきた。
玄関近くの棚に籠を置きダイニングに行くと、チェンニが一足先にクッキーをほおばっていた。
「……それ、師匠が食べたがってたやつじゃないの?」
「いーのいーの。いないほうが悪い! ……あ、おいしー。ユーリーも食べなよ。すごくおいしいよ!」
そう言ってあどけない表情を浮かべるが、彼女の実際の年齢を思い浮かべると、何とも言えない心情になる。そんな俺の心情を知ってか知らずか、チェンニは一生懸命クッキーをほおばっている。
「そう言えば、師匠遅いですね」
「ふん……昨日返ってくる予定ではあったよね。まぁ、でもいつものことだよ。まだ1日だけだし」
「まぁそうですけど」
クッキーを食べながら、世間話をする。今日の紅茶はミルクティーで、クッキーとの相性は抜群。お昼が食べれなくなるからと注意してクッキーを食べるが、何分手が伸びてしまう。
「……そう言えば、明日とか買い物に行くって言ってよね?」
「む? ……ん、行くよ。何か欲しいものとかある?」
「薬草や薬を入れる瓶とか、数個買ってきてほしいな。ほら、ついこの間チェンニが割って、数を減らしちゃったからさ」
「ぐっ……! ごほごほ……あ、あれは、あんなとこにおいてたレベッカが悪いというか、あんなとこに出た虫のせいというか……!」
「まだあるからいいかなって思ったけど、保存用の容器が思ったより足りなくて。お願いしていい?」
「うん、分かった。じゃあ、適当に見繕ってくるね。……それよりもレベッカからの買い出しのリストが半端ないのなんのって……。自分で買ってこーい! って言いたくなるよね」
「もう言ってるぞ」
ここにはいないはずの、第三者の声が聞こえばっと振り返ると、俺の師匠――レベッカが大荷物を抱えて立っていた。
「レベッカ! お帰りなさい。もう、ちゃんと声かけてよ。びっくりしたー」
「声ならかけただろ。……おい、そのクッキー」
「あ、食べちゃった。てへっ」
「……後で覚えてろよ、チェンニ」
人でも殺せるんじゃないかってくらい鋭い目線を投げて、師匠は荷解きを始めた。俺も急いでミルクティーを飲み干して、師匠の荷解きを手伝う。
「……ずいぶんいっぱい採ってきたね」
「あぁ。行く予定なかったとこまで、ちょっと立ち寄ったからな。ついでだからって採ってきた」
師匠が採ってきた薬草や鉱石は、今まで俺が見たこともないようなものまである。俺はすぐにでも師匠にその全てを教えてほしかった。そんな様子を見てか、師匠が苦笑しながら言う。
「荷を片付けたらな。その前に全部分けてしまってくれ」
「分かった」
俺は物珍しいものをじっくりと観察しながらも、選別の手を休めず薬草と鉱石を分けていった。
「そう言えば、さっきレベッカ宛に手紙が何通かきたよ。部屋に置いといたから」
「あぁ、分かった。チェンニ、庭にでかいものは置いてきたからいじんじゃないよ」
師匠が持って帰ってきたものを片付けるのに、ゆうに2時間はかかった。
時計を見ると、17時をまわっていた。




