なん、だと・・・?
・・・女装、だと・・・?
女好きの騎士、サミュエル・グラッド。
彼が何故、自分の目の前に座っているのか、状況を整理しよう。
現在、学園はランチタイム。人気のカフェテラスで友人と食事に来て、自分は席取りをしていたところに彼が突然現れたのだ。女装の理由はわからない。
「君、可愛いね。俺と付き合わない?」
サミュエルの形良い唇から、衝撃発言が成される。
何・・・だと・・・?
周りの学生がこちらに注目しているのがわかる。
周囲の視線が突き刺さるようだ。
「お、ほほほ。良く聞こえませんでしたわ?それと、女性でいらっしゃいますわよね?」
「男だよ。この格好?似合うよね?スカート履くと親父と兄貴達が喜ぶんだよね。俺、死んだ母親にそっくりだから」
ニヤリと笑うサミュエル。声はハスキーで男性とも女性とも付かない声だ。胸の膨らみは何か入れているんでしょうか?本人の言うとおり、女子生徒の制服がよく似合っておられます。
彼の設定に書かれていたことを思い出す。
幼少に母を亡くした彼は、母を恋しがって泣く。母に会いたいと泣きわめく彼に対し、父親は『母様は鏡の向こうにいる』と彼に鏡を見せる。サミュエルの容姿は、母親にそっくりだったのだ。それから彼は髪を伸ばすようになる。鏡を見れば懐かしい母に会えるから。
その設定のせいで、まさか女装までするようになったのか・・・?
「でも気持ちは男だから。可愛い君に惹かれちゃった」
ウインクするサミュエル。
美少女にしか見えません。
「ねえ、俺と付き合おう」
「ご冗談を」
つか、まだお互い子供でしょうがー!
「婚約者がおられますでしょう?」
冷たく言い放つと、眉を上げ、彼は面白げに笑った。
「俺が誰か名乗ってないのに、婚約者がいるってよくわかったね?」
「貴族であれば、婚約者はいらっしゃるかと思いまして。あなたがどなたであるか、私、わかりませんわ」
「サミュエル・グラッドだよ、トゥーリア・ラインヘルト男爵令嬢殿?エルって呼んでいいよ」
サミュエルは、私のことを知っていて絡んで来たのか?
それなら、ギルちゃんが関係しているの?
「まぁ!サミュエル・グラッド様!第三王子殿下のご側近が、私ごときに声をおかけになるなんて、光栄の極みですわ。ではご機嫌よう」
一息に言いきって、急いでこの場を立ち去ろうと立ち上がったが、ガシッとサミュエルに腕を掴まれた。
素早い動きと、サミュエルの美しい笑みに背筋がゾクッとする。
(いやー!!この人なんか怖い!)
「エル、僕の従妹になんの用事?その手を離しなさい」
冷たい、セシリオの声が聞こえた。




