仲が悪い?
いつの間にか、セシリオが側に来ていて、冷たい目で睨んでいた。
(うおおお!セッちゃん!助けてくれるの!)
「エル、手を離して。女性に無闇に触るものじゃないよ」
セシリオは口元に穏やかな笑みを浮かべつつ、サミュエルを見つめる瞳は氷のように冷たい。
「あぁ!逃げようとするからつい!」
サミュエルは悪びれる様子なく、ごめんね、と手を離してくれたが、姿に似合わない強い力だったのか腕が痺れている。
うっわー!腹立つ、こいつ!
腹立たしい気持ちでパッとセシリオの後ろに隠れる。
「あーあ、邪魔しないでくれる、セシリオ?」
サミュエルはセシリオに近づき、頭半分くらい背の高いセシリオを笑顔で見上げる。
なんていうか、スケバン(死語)がガンつける感じだ。あ、男だから、ヤンキーか。
美人で侯爵家の人間なのにこの柄の悪さはなんなんだ。新入生のマナーレッスンに彼が教えに来ていなかったのはこのせいか。
セシリオは、ハッと鼻で笑った。
「なんの邪魔?新入生をからかう暇があれば、もっと成績を上げるよう努力したら?」
セッちゃん、腹黒さがちょっと見えています。
サミュエルは嫌そうに一瞬顔をしかめる。成績悪い子らしい。だが、皮肉気な笑みを浮かべながら言い返す。
「馬術や剣で年下に負ける奴には言われたくないけど?人の交友関係に口を挟まないでくれる?」
「君は剣と馬術と運動系くらいしか、まともに基準点超えてないみたいだけどねぇ?従妹に悪影響だから、関わらないでくれる?」
睨み合う2人の間にバチバチと火花が飛び散っているのが見えるようだが話の内容はかなり低レベルだ。
この2人は仲悪いんだろうか?
周りに目を走らせると少し離れて人だかりができ、見物の生徒達から興味津々で見られている。地味に生きたいと思ったのに、皆の注目を集めている。
集まった生徒達の中には一緒にランチするはずの友人達の姿もある。
申し訳ないと目線で伝えようとしたが、彼女らは私を見ていない。なんだか目がキラキラと頬も高潮している。
彼女達の視線を辿ると、セシリオとサミュエルに辿り着く。
そうだねー。美少年同士(内一人は女装)の絡みだもんね、彼女達の頭の中はイケナイ妄想でもしてるんじゃなかろうか。
遠目だと、2人顔を近づけて笑顔で仲良く話しをしてるようにしか見えないだろうし。
セッちゃんが来て助かったと思ったけど、セッちゃんはサミュエルと嫌味を言い合って周りの注目を更に集めた。
もー、2人ともふざけんな!!
「何をしてるんです、2人とも」
ふいに見物の生徒が左右に割れ、薄い茶髪に黒に近い紫色の目をした少年が現れる。生真面目そうな雰囲気だが、顔立ちは甘く可愛らしい。攻略対象者のクラウス公子だ。彼は王族の一員でギルちゃんの従兄弟でもある。
クラウス公子は呆れたようにため息を付く。
「皆も食事をしてください。昼休みが終わります。サミュエルさんとセシリオさんは僕と一緒に来てください」
手を叩いて見物の生徒に解散を命じる。
そして、私を見つめて周りに聞こえるようにクラウス公子は言った。
「なんだかゴタゴタに巻き込まれたようですね。申し訳ありません。サミュエルさんは生徒をからかうのが好きなんですよ。皆もサミュエルさんには十分気をつけてください」
「はあ!?俺は危険物か?」
サミュエルが非難の声を上げる。
「危険物です。回収しますよ」
クラウス公子はサミュエルの腕に自分の腕を絡め、出口に向かって歩きだす。力はサミュエルのほうがきっと強いはずだが、おとなしくサミュエルは引っ張られるように歩き出す。サミュエルは空いている手をヒラヒラと振る。
「またね、トゥーリア」
「またね、じゃない。二度と声をかけるな」
不機嫌にセシリオが声をかぶせる。
セシリオも、私に会釈をして出口に向かう。
疲れた。
気が抜けて椅子に座り込む。
「トゥーリア、大丈夫?」
「何の話だったの?」
「話はあとあと。食べないと!」
友人達がテーブルに来て持っていたバスケットの中から、サンドウィッチや、果物、飲み物をテーブルに並べてくれる。
「ごめん、席取りしてたらサミュエル様が急に話しかけてきて。びっくりしちゃった。なんだかからかわれたみたい」
クラウス公子の言うとおり、からかわれたことにしておこう。
「そう、びっくりしたわね。あの美少女サミュエル様だったのね」
「女子の制服がお似合いでした!」
「結構、女子生徒の格好で男子生徒をからかってるらしくてよ」
食事しながらも、ぺちゃくちゃと友人達がサミュエルの話で盛り上がっている。
(からかわれただけ。本当にそうならいいけど)




