表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/77

第5章1

『3日で旅支度を……』と言われ、ローレライは買い物に出かけたり準備に忙しい日常を過ごしていた。

同行するのは結局、兄のルシオンとフリードルの他にもう一名。


「お嬢様の事はフリードル様にお任せできますが、ルシオン様はお任せできません。直ぐに行方を眩ますのがお得意な方ですから、それについて行ける護衛は私しかいないと自負しておりますので何としても同行させて頂きます」


無表情に淡々とそう告げるのはルシオンの従者のランドンと言う者で、彼は主のお守りをする事こそが自らに与えられた使命とでも思っているような感がある。

ランドンの素性については誰も詳しい事は知らないが、彼はここに来たばかりの頃より短剣の腕は確かで、護衛としてはかなり信頼のおける人物だ。

今までに何度か連れ去られそうになるルシオンを救っている。

ローレライの侍女も同行を申し出たのだが、危険と分かっている旅にわざわざ若い娘を連れて行く訳には行かないとの理由で却下された。

今回の移動手段は馬に騎乗してのものとなる。

出立前にフリードルより指示が出ており、捜索の状況によっては長旅になる事も十分に考えられる為、それを踏まえた上で馬の選択をするようにと言われていた。

結果ローレライは相棒として今回牡馬ジュリアスを選んだ。

愛馬であるアドレアは、まだ産後1か月と言う事で無理をさせたくはなかったし雌馬より牡馬の方が脚力も持久力も優れている。加えて盗まれたドレアスは父馬であるジュリアスにそっくりな青鹿毛で額に三日月の白斑があり、左前足内側の付け根にも同じ形のものがあった。

親子と言えど、ここまで似ているのは珍しいので、きっとドレアスを探すのに役に立つに違いないと口添えしてくれたのは、行く事に難色をしめしていた父である伯爵だった。


服装は、あからさまに女が居ると思われるのも何かとトラブルの元にもなり得る事から、男物を着用する事となった。

幸いルシオンが子供の頃に着ていたものを母がまだ幾つか大切に保管してあるとの事でそれを探し出して貰い、その中から着ていく物と着替え用のものを2着選んでローレライは用意した。



瞬く間に3日が経過し、約束道理戻ってきたフリードルは先ず伯爵に面会を求めた。

預かった書状は、無事意中の人物の側近へと直接手渡す事が出来た旨を報告すると、伯爵はとても安堵した様子を見せると共にフリードルを労っていた。

しかし、今回の件に関しては多少の疑念もあったようだった。


「先日、城での仕事は辞めたと申していたが、今は何をしているのだ? 候の手伝いをしている風にはとても思えないのだが……」


「鋭い洞察、恐れ入ります。実は今、私は城勤めを辞めた同じ志の者達と一緒に行動を共にしています。詳しい事は現段階ではお話しする事は出来ませんが、己を恥じるような行いだけはしておりませんから父も分かってくれているではないかと勝手に都合の良い解釈をしております」


「侯爵は……、それについて何も言わないのか?」


「はい。昔からそうですが、父は私のする事に口を出す事は一切ありません。城の勤めを辞めた時も『そうか』の一言を告げたのみで、後の事は何も……」


「候は、お主を信頼しているのだな」


「さぁ、それは如何でしょうか?」


フリードルは苦笑いを浮かべていた。


伯爵は、この者ならば心配する必要も無いだろうと感じていた。

無いものを求めても如何にかなるものでも無いのだが、つい思ってしまうのだ……。

自分の息子も根は真面目だし心根も優しいし良い息子だとは思っているのだが、身近にこう言う者の存在を目にし、加えてここ数日のフリードルの行動を見ていると少し羨ましくなって来るのだ。


(あいつも、もう少し物事を軽んじて行動することさえ無ければ申し分ない息子なのだが……)


伯爵は心の中でそっと呟いた。




フリードルは伯爵との謁見を終えるとその足で、先ずはいない間に準備された旅支度の品々を確認していた。

準備された物は予想に反し必要最小限の品々ばかりで感心し頷く。

ローレライの風貌も満足するものだった。


「これは誰の指示?」


「えっ? ああ、これはランドンが……」


「私も同じ提案をするつもりだった。持ち物も最低限必要なものだけが準備されているし、何?これも彼?」


「ええ、全てランドンの指示よ」


「彼はかなり出来る人物のようだね」


爽やかな笑みを浮かべてそう告げると、ランドンに向けて手を差し伸べた。


「君には色々と助けられる事もありそうだな。宜しく」


「畏れ入ります……」


いつもはあまり表情の変わらないランドンなのだが、フリードルからその様な言葉を掛けて貰えると思っていなかったのか、少し驚いたように目を見開くと、片手をゆっくりと差し出した。

その握手する姿がとても新鮮で、伯爵家の兄妹はそれを笑みを浮かべて眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ