↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/76

第75話 聖女の網――宮廷掌握の陰影

隣国の宮廷は、煌びやかな装飾と格式ある貴族たちの談笑で賑わっていた。だがその華やかさに隠れて、キャサリン・フランの目は冷徹な計算で光っていた。王太子リカルドとの接点を得た今、次の狙いは明確だった。側近たちを完全に掌握し、宮廷での発言力を着実に拡大すること。


「フフ……これからが本番ね」キャサリンは側近たちに微笑む。アルト、ビンセント、ゲオルグ、ニコル――忠実な者たちが緊張感を帯びながら視線を合わせる。


「令嬢、具体的には?」アルトが慎重に問う。


キャサリンは机の上に広げた宮廷図を指でなぞりながら答える。「まずは王太子の側近たちの性格や嗜好、忠誠心、野心を把握し、必要に応じて価値提供を行うの。情報、健康相談、漢方薬、町での信頼……すべてを駆使して、私の存在が欠かせないものと思わせるのよ」


ビンセントが眉を寄せる。「ただし、宮廷の側近たちは警戒心が強く、外部の令嬢に簡単には心を開きません」


キャサリンは冷静に頷く。「だからこそ、私は直接的に迫るのではなく、価値を体験させるの。薬や健康相談の効果、町での信頼、聖女の称号……それだけで十分に影響力を積み上げられるわ」


まず最初の標的は、王太子の秘書役アルベルト・フォン・シュタイン。彼は理知的で警戒心が強いが、健康管理には疎い。キャサリンは漢方薬の効果や使用法を説明し、健康相談として接触する。


「アルベルト様、この漢方は体調を整える効果が高いです。どうぞお試しください」


アルベルトは半信半疑ながらも、キャサリンの冷静な論理と聖女の称号に押され、薬を受け取る。健康面での微細な効果を実感すると、自然と彼女への信頼を寄せ始める。


次に、騎士団長子息フェリクス・フォン・カルテン。宮廷での秩序維持と警備に長けているが、外部情報には疎い。キャサリンは舞踏会や集会での配置や注意点をさりげなく助言し、信頼を築く。


「ここで少し配置を変えれば、より自然に動けます」


フェリクスは彼女の観察眼と助言に感心し、自然と協力的になる。漢方薬の実績と知識が彼の心に安心感をもたらすのだ。


外交官の若きゲオルグ・ルッツには、町や貴族間の情報を提供する。彼もまた、キャサリンの情報網の精密さに驚きつつ、自然と彼女に頼るようになる。ニコルは宮廷内外での評判管理を担当し、貴族や町の人々にキャサリンの有用性を伝える。


こうして、側近たちは知らず知らずのうちにキャサリンの影響下に置かれ、王太子リカルドも、側近たちを通じて自然に彼女の存在を意識するようになる。直接接触は最小限だが、価値提供と実績により心理的な掌握は確実に進んでいた。


夜、薬屋の明かりが町を静かに照らす中、キャサリンは側近たちの反応や宮廷情報を整理する。香水の香り、漢方薬の効能、聖女の権威……すべてが計算された戦略装置であり、王太子や側近たちの心に静かに影響を及ぼす。


そして、心の奥底で彼女はほくそ笑む。「誰にも言わないけれど、私の薬の秘密の一部は、ちょっとした心理的な演出にもなる……この微妙な効果が、側近たちの注意や好意を自然に私に向けさせるの」


外見上は薬と健康相談の範囲内であり、誰にも疑われることはない。秘密の小さな計算が、側近たちをより深く掌握するための助けとなるのだ。


こうしてキャサリン・フランは、側近たちを完全に掌握し、薬と聖女の権威を駆使して宮廷での発言力を拡大するとともに、秘密裏の微妙な影響を側近たちに及ぼす準備を整えた。隣国の宮廷は、今や彼女の計算された戦略の中で静かに、しかし確実に動き始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。