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理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


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第73話 聖女の策――教会を揺さぶる令嬢

隣国の町に、キャサリン・フランの名は再び高らかに響き渡っていた。彼女は教会から正式に聖女の称号を授与されており、薬屋を通じて町の住民や貴族に健康と癒やしを提供する存在として知られていた。しかし、表面上の祝福とは裏腹に、彼女は心の中で微笑んでいた。


「フフ……聖女の称号を得た今、教会も私の動きに口を出さざるを得なくなる」


キャサリンの思惑は明確だった。聖女という権威を盾に、あえて教会の規制や圧力を誘発することで、町や周辺の貴族に自分の影響力を強く印象付けるというもの。これまで隣国で少しずつ薄れかけていた支配力を、一気に回復させる狙いだった。


側近たちは、彼女の微妙な策略に少し戸惑いながらも忠誠を尽くす。アルトは慎重に文書管理と教会への情報調整、ビンセントは警備と店舗周囲の秩序維持、ゲオルグは薬の在庫管理と配送、ニコルは顧客対応と相談窓口の補助を担当。全員が緊張感をもって動く中、キャサリンは自身の計画を冷静に進めた。


まず彼女は、薬屋の運営や健康相談の中で、あえて教会の指示や規範に反するような微妙な行為を織り交ぜる。例えば、特定の漢方薬の配合比率を変更して健康効果を強める一方で、形式上は教会の承認を経ない形で配布したり、聖女としての権威を前面に出して住民の意見を優先させたりする。


「教会が黙っているわけがない……それでいいの」


予想通り、教会はすぐに反応した。大司教や信徒たちは、聖女の行動に対して警告文書や監督通達を送り、薬屋の運営や活動に制限をかけようとした。町の住民や貴族たちは一瞬戸惑うが、キャサリンはこれをチャンスに変える。


彼女は香水の香りや薬の効能を控えめに漂わせつつ、町の人々に語りかける。


「教会からの注意は受けましたが、私たちは皆の健康を第一に考えて行動しています。どうか心配せずに、安心して相談してください」


住民たちは、教会の圧力にもかかわらず、彼女の誠実さと実績を目の当たりにして信頼を深める。圧力そのものが、逆にキャサリンの信頼性を示す演出材料になったのだ。


側近たちは忙しく動く。アルトは教会への報告文書を精査し、必要な体裁だけ整えて実際の行動は自由にする方法を見つけ出す。ビンセントは教会関係者が薬屋周囲に近づきすぎないよう警護する。ゲオルグは安全で安定した薬の供給を確保し、ニコルは町の住民に安心感を与える説明を行う。


「圧力はプレッシャーではなく、舞台装置に過ぎない」キャサリンは側近たちに微笑む。「私たちはこの演出を使って、町や貴族たちの目を私に向けさせるのよ」


さらに、キャサリンは教会の圧力を逆手に取り、町の貴族や商人に対して「教会の監督下でも私の活動は効果的で安全だ」とアピールする。人々は、聖女としての称号と教会の警告を同時に体感し、キャサリンの影響力がさらに強固なものだと認識する。


夜、薬屋の明かりが静かに町を照らす中、キャサリンは側近たちと計画の整理を行う。香水の微妙な香り、漢方薬の健康効果、住民や貴族への細やかな対応、そして教会の圧力――すべてが精密に計算された演出だ。


「聖女の力を最大限に使えば、教会の圧力すら味方にできる。隣国での私の影響力は、誰も無視できないものになるわ」


こうしてキャサリンは、聖女としての権威を利用し、教会の圧力を巧みに演出材料に変えることで、隣国での影響力をさらに強化した。町の住民も貴族も、教会の監督を意識しながらも、彼女の薬屋に集まり続ける。圧力さえも、キャサリンにとっては支配力の増幅装置となったのだった。



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