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理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


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第60話 隣国への決意

キャサリン・フランは、自室の大きな窓から夜の街を見下ろしていた。王都から離れた隣国の町は、まだ自分にとって未知の舞台であり、挑戦の場である。静かに手を組み、唇を引き結ぶ。


「……やはり、ここではもう限界ね」


これまで王都で築いた影響力、側近たちの忠誠、教会からの制約と圧力――すべてが彼女の頭の中で整理されていく。王都では聖女の称号を得たとはいえ、教会や貴族の監視下で自由に動くことは難しく、策略の幅も限られていた。だが、隣国に移れば、自由に動ける舞台が待っている。自分の手腕を存分に試せるのだ。


アルトが静かにドアの前に立ち、声をかける。「令嬢……決意は固まりましたか?」


キャサリンは振り返り、鋭い瞳で側近を見つめる。「ええ。ここで私が得られる影響力には限界がある。隣国に行き、私の力を最大限に活かすのよ」


「しかし、隣国は未知の土地です。商人や貴族、教会の仕組みも王都とは違います」ビンセントが慎重に口を挟む。


キャサリンは微笑む。鋭い笑みの奥に、計算と決意が光る。


「未知だからこそ、私にはチャンスがあるの。王都で築き上げた経験と側近たちの力があれば、どんな状況でも対応できる」


彼女は机に置かれた地図に指を置く。隣国の町、城、教会の位置、主要な商業地――すべて頭の中で整理されていた。どの町で薬屋を開くか、どの貴族や商人と関係を築くか、すでに戦略は描かれている。


「まずは小さく、しかし確実に拠点を作る。薬屋を開き、住民と貴族の信頼を得るの。私の存在感を見せつけ、王都と同じように影響力を築き上げる」


ニコルが軽くうなずき、補足する。「令嬢、薬や漢方の調合は王都での実績があります。隣国でも同様の品質を保証できます」


「そう、それで十分よ。王都での経験は秘密にしておく必要がある。誰も私の前世の知識や工夫を知ってはいけない」キャサリンは表情を引き締める。秘密は、彼女の武器であり盾でもある。


ゲオルグは地図に目を落とし、慎重に言葉を選ぶ。「生活基盤や住居、教会や役所との関係も確保する必要があります。無計画に動けば、混乱や圧力に巻き込まれるかもしれません」


キャサリンはにやりと笑った。「だからこそ、慎重に動くの。側近たちの力を最大限に使い、情報と資源を確保してから拠点を構築する。圧力や反発も、私の策略の一部として利用できるわ」


夜が更け、城下町の灯りが静かに瞬く中、キャサリンは側近たちと具体的な準備計画を立て始める。薬の調合、店舗の設計、住民や貴族へのアプローチ、教会との関係調整――一つひとつが緻密に計算され、隣国での影響力を最大化する布石となる。


「教会の圧力も利用するのよ。聖女としての称号は隣国でも有効。圧力や注意喚起を受ければ、逆に住民や貴族に私の存在価値を強く印象付けられる」


アルト、ビンセント、ゲオルグ、ニコル――側近たちはキャサリンの意図を理解し、忠誠心を胸に決意を固める。誰も疑わず、彼女の計画を支えることを誓った。


「よし、明日から準備を始める。隣国での生活、そして影響力拡大のための第一歩だ。全員、私の指示に従う」


キャサリンの瞳は、夜の暗闇の中でも光を宿していた。未知の国で、彼女が新たな舞台を作り出す決意は揺るがない。王都での挫折や教会の圧力も、今はただ戦略の一部として利用されるべきものに過ぎない。


「隣国での私の力……絶対に手放さない」


こうして、キャサリン・フランは隣国への移住と新たな舞台での挑戦を決意した。薬屋を拠点とし、側近たちの協力を得て、再び影響力を取り戻すための準備は静かに、しかし確実に始まったのだった。



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