第36話 煌めきと策略の王都
王都の社交界は、かつてない緊張感に包まれていた。マリアンヌ・フォン・ルーベルが生み出したクズ石アクセサリーと化粧品は、すでに王都中の令嬢たちの間で人気を博していた。その影響力は単なる流行にとどまらず、王都の経済や社交界の勢力図さえも塗り替えつつあった。
しかし、この輝きに嫉妬した者もいる。アンベシル伯爵令嬢は、これまで王都で絶対的な地位を誇り、社交界の中心に君臨していた。しかし、マリアンヌの登場で、従来の優位性は完全に揺らいでいたのだ。
「このままでは私の立場が……!」
アンベシル伯爵令嬢は心の中で怒りを燃やし、策略をさらに強化することを決意する。社交界の集会でマリアンヌの作品を貶める噂を流すだけでは不十分だ。次の手は、王太子の関心を自分に向け、マリアンヌの信用や評判を揺るがすことだった。
「王太子があの令嬢を気にしているなんて……許せない」
伯爵令嬢は周到に準備を進める。贅沢な宝石で身を飾り、社交界の目立つ席に座り、他の令嬢たちを巻き込んでマリアンヌを批判させる。手に入れられない高価な商品への嫉妬心を刺激することで、マリアンヌの人気に陰りを出させようと画策した。
その動きを察知した王太子は、すぐに行動を起こす。書斎で侍従に指示を出す。
「マリアンヌ・フォン・ルーベルの安全と評判を守るため、王家として必要な支援を全面的に提供せよ。彼女の事業や流行に関する情報は逐一報告させろ」
王太子は、マリアンヌが社交界で孤立することを許さず、自らの影響力を駆使してバックアップする決意を固めた。彼女の才能と無関心さに心を奪われた以上、王太子はただ見守るだけではいられなかった。
その一方で、マリアンヌ自身も社交界の波を利用して反撃の準備を進めていた。彼女は表面上は平静を装いながらも、流行の波や人々の心理を巧みに読み取り、策略を練る。クズ石アクセサリーの新作を限定数で発表し、特に王妃や王家の後ろ盾を得ている令嬢たちに先行販売することで、アンベシル伯爵令嬢の計略を逆手に取ったのだ。
「流行は、人々の心理を操る道具にもなる……あの令嬢の策略も、逆に私の立場を強化する材料になるわ」
マリアンヌの計略は見事に機能した。社交界の令嬢たちは、アンベシル伯爵令嬢の批判や妬みに惑わされず、むしろマリアンヌの新作を求めて集まり始める。王太子はその様子を王宮から報告で確認し、心の中で小さく微笑む。
「やはり、彼女は私が思った通り……誰の策略にも左右されず、自らの道を切り開く」
アンベシル伯爵令嬢の焦りは増すばかりで、社交界での小さな失策が重なり、かえって評判を落とす結果となった。王太子は静かに策を講じ、マリアンヌの信用を守るために信頼できる貴族たちに協力を要請する。
マリアンヌはタウンハウスで冷静に観察を続け、次の手を打つ準備をしていた。クズ石アクセサリーの限定版をさらに配布し、化粧品の新作も同時に発表する。これにより、アンベシル伯爵令嬢の批判は完全に無力化され、流行の波はますますマリアンヌの味方として押し寄せる。
王太子は心の中で、彼女を守る責任と喜びを感じながら、こう思った。
「この令嬢……ただの婚約候補ではない。社交界も事業も、すべてを自在に操る才能の持ち主だ。だからこそ、彼女の側で支え、共に未来を見守る価値がある」
王都中の人々が、クズ石の煌めきに魅了され、マリアンヌの戦略に気づかぬまま流行に身を委ねる中、アンベシル伯爵令嬢の策略は完全に空回りする。王太子の視線は常にマリアンヌに注がれ、彼女の一挙一動を守る準備は整っていた。
社交界は混乱の中にありながらも、マリアンヌの影響力はさらに強固になり、王都全体が彼女の光に照らされ始めていた。そして王太子は、自分が初めて心から惚れた少女の輝きを、これからも守り抜くことを固く誓った。
煌めきと策略、嫉妬と信頼……王都の社交界は、今、最も熱い舞台となりつつあった。




