第31話 13歳令嬢たお茶会無関心
マリアンヌ・フォン・ルーベルは13歳。公爵家の令嬢としては幼い年齢ながらも、王都での事業や領地経営で日々奔走していた。レストラン、服飾、化粧品事業、領地の区画整理や上下水道整備、教育制度の構築……やっと軌道に乗った公爵家の改革には、13歳の少女とは思えぬ責任と負担がのしかかっている。
そんなある日、家宰のセバスチャンが王宮からの招待状を手に訪れた。
「マリアンヌ様、王太子の婚約者候補を決めるお茶会へのご招待状が届いております」
マリアンヌは眉をひそめ、椅子に腰を下ろす。
「13歳で王太子……婚約者の話? 今は領地と事業の方が大事なのに」
前世で理系知識オタクとして培った合理的思考は、社交界の慣習を無駄と感じさせる。王太子に興味はなく、婚約者として選ばれることにも関心はない。彼女にとって重要なのは、事業や領地改革が計画通り進むかどうかだ。
「王太子が誰であれ、私の時間を無駄にする余裕はないわ」
それでも王家の後ろ盾を得ている身として、招待を断るわけにはいかない。マリアンヌはファスナー付きで動きやすいドレスに身を包み、王宮への準備を整える。服飾事業の成果も兼ねたドレスは、見た目の華やかさと実用性を両立していた。
王宮の大広間に到着すると、令嬢たちが華やかな装いで集まっていた。彼女たちは王太子の注目を集めるため、香水や刺繍の豪華なドレスで着飾っている。マリアンヌは冷静に周囲を観察し、心の中で呟いた。
「……みんな気合入れすぎ。衣装コンテストじゃないんだから」
お茶会が始まり、王太子が入場する。噂通りの美しい青年だが、マリアンヌには全く関心がない。彼の視線が令嬢たちに向けられ、赤面する少女たちの姿を横目に、彼女は静かに紅茶を口に運ぶ。
「興味ない……今は領地改革や事業の方が大事」
王宮の役人が順番に自己紹介を求める。多くの令嬢が緊張して言葉を詰まらせる中、13歳のマリアンヌは淡々と答えた。
「マリアンヌ・フォン・ルーベルです。領地経営、商会の運営、教育制度の整備に取り組んでおります」
その答えに周囲は驚き、ざわめきが広がった。王太子も眉を上げ、興味を示したが、マリアンヌ本人は微動だにせず、事務的に話を終えた。華やかさやおしゃべりより、実務能力を優先する態度は、逆に強い印象を与えた。
お茶会の間、マリアンヌは事業や領地の進捗を思い浮かべながら、心の中で今日の予定を確認する。
「明日にはセバスチャンに化粧品の新試作を依頼し、服飾事業の展示会準備も進める……王太子の婚約なんて後回し」
令嬢たちは王太子に媚びを売ろうと必死で動く中、マリアンヌは冷静なまま椅子に座っている。王太子も次第に、彼女の独自の雰囲気と実務能力に興味を持ち始めたが、マリアンヌ本人は完全に無関心だった。
お茶会が終わり、マリアンヌは自分のタウンハウスへ戻る。城下町の通りを歩きながら、思わず微笑む。
「婚約者? そんなことより、領地の収益と教育、人材配置の方が何倍も面白いわ」
夕日が王都を染める中、彼女は次の計画を頭に描く。レストランの新メニュー、服飾の新作、化粧品の改良、そして青田刈りで育てた人材の配置――13歳の令嬢にとって、王太子の婚約話など些細な形式に過ぎなかった。
「幼き令嬢の挑戦は、王太子の婚約話に左右されるものじゃない……領地と王都を変革するのは私自身なのよ」
星が瞬く夜空の下、マリアンヌの瞳には、未来の領地と王都を支える優秀な人材たちの姿が浮かんでいた。社交界の華やかさに惑わされず、13歳の幼き令嬢の挑戦は今日も着実に王都と領地の未来を形作っていくのだった。




