記録者:単一不認識果実修道会・第Ⅰ観測班
■ 某月某日:【始源のペッキング】
グランド・ルースターが、世界の天井(我々が「夜空」と呼ぶ黒い殻膜)を、カツンと一度だけ突いた。
地上ではこれを「超新星爆発」あるいは「局所的な空間の歪み」として観測したようだが、実態は単なる彼の退屈しのぎである。
突かれた部分からわずかに漏れ出した光の粒子が、新しい星雲を形成していくのを確認。
なお、この衝撃の余波で、並行世界が3つほどブレて消失した。
合掌。
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■ 某月某日:【毛づくろいと暗黒物質】
彼が巨大な尾羽を激しく震わせ、毛づくろいを始めた。
その際、宇宙空間に大量の「見えないカルシウムの粉塵」が撒き散らされる。
地上の天文学者たちは、これを「ダークマター(暗黒物質)」と呼んで必死に数式で計算しようとしているが、正体はただのフケである。
彼が羽を一枚バサリと動かすたびに、地球の近現代史における「冷戦の緊張度」が乱高下する。
彼の微小な運動こそが、歴史の因果律の正体なのだ。
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■ 某月某日:【絶対不認識特異点への興味】
グランド・ルースターが、虚空に浮かぶ「アボカドの種(絶対不認識特異点)」をじっと見つめていた。
神々のロゴス(論理)すら窒息させる緑の脂質塊に対し、さしもの彼も迂闊にはクチバシを出せないらしい。
もし彼がアボカドを完全に捕食し、濃厚なワカモレとしてディップしてしまったら、この殻内宇宙は一瞬でアミノ酸スープへと還元されるだろう。
彼は首を傾げ、不気味なほど冷徹な眼球でその果実を凝視し続けている。
観測班の血圧は限界突破である。
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■ 某月某日:【雀の朝砂との共鳴】
極東の島国(日本)にて、スズメたちが一斉に砂浴びを開始した。
これに呼応するように、グランド・ルースターの喉がかすかに震動を始める。
「チュン」
電線の観測者が放ったコードが、宇宙の果てにいる彼へと到達した瞬間。
世界が一瞬だけ「砂嵐(完全な虚無)」へと反転し、また何事もなかったかのように日常へと戻った。
人類は何一つ気づいていない。
自分たちの歴史が、今さっき138億年分リセットされ、寸分違わぬカバーストーリー(日常の檻)として再構築されたばかりだということに。
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■ 某月某日:【第二のハッチングの予兆】
グランド・ルースターが、大きく息を吸い込んだ。
クチバシがわずかに開き、光を吸い込んでいく。
……来る。
歴史上最も恐ろしい、あの全宇宙規模の強制覚醒イベントが。
「コケコッケーーーーーーーーーーーーッ!!」
聖なる咆哮が鳴り響いた。
我々の次元の底で、歴史の逆因果ベクトルが激しく逆流する。
チキンル・シャモも、ダックミール・アヒルも、この声の前にはただのケージの中の雛に過ぎない。
世界の殻に、ピキリと小さな亀裂が入った。
ハッチング(孵化)の時は、そう遠くない。
── 観察記録はここで血痕とともに途絶えている。 ──




