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89.エルフがエルフとなる前に

 ギルドマスターの執務室、ソファーに座って労いの言葉が掛けられる。


 「お疲れ様、今日から君たちはCランクハンターだ。おめでとう。」

 「おめでとうなんて言われたって全く感謝できませんよっ。さっきのパンチは【身体能力強化】が間に合わなかったら、私死んでましたよっ!!」


 パーティーメンバーから、えっ? と声が上がり、テオがギルドマスターを問い詰める。


 「そんな危険な戦闘だったのか? 模擬戦にしてはやり過ぎじゃないのかっ。」

 「間に合わなければ止めていたし、間に合ったから殴った、ただそれだけだ。危険など無かったし、そのくらいの勢いでやらなければ、この娘は本気を出しそうもなかったしな。」


 う、ウソよっ!! 私に蹴りを入れるときのあの笑い顔、絶対絶対殺意モリモリだったわっ。


 「それ以前に、魔法使いの模擬戦に殴り合いってあるんですかっ!!」

 「ヴィヴィは対応できそうだったからな。私の予想を超える対応を見せてくれた。」

 「予想を超えるだなんて、私が本気を出したらギルドマスターなんかケチョンケチョンになってたわよっ!!」

 「それは頼もしい。もう一度戦ってみるか。」

 「え、遠慮します・・・」


 ふっ、と笑いながらテオとニコに視線を移す。


 「おまえ達はヴィヴィの護衛で付いている者達だろう。この娘の金の瞳、銀の髪について聞いているか?」

 「聞いてはいるが、ここではしゃべれません。」


 テオの視線がソフィに流れたのをギルドマスターが見逃さなかったみたい。


 「ああ、そうか、ソフィ、外してくれ。」

 「待って、私も行くわ。」


 ソフィと共にニコが立って部屋から出て行く。

 ソフィ一人追い出されるのを、気を使ってニコが一緒に行動してくれた。ニコ、ありがとう。


 「ヴィヴィの瞳と髪についてエルフに何か関係があるのですか?」


 そうよ、なんだか最近エルフに間違われたりすることがあるわ。

 まさかっ、デルヴァンクール王家の、神の血を引く者ってエルフが起源なの?


 「テオの質問に答えるつもりはない。私の質問の答えは。」

 「・・・・・それをあなたに話して、ヴィヴィに不利益は?」

 「私は口外はしない。エルフの秘密にもかかわることだからな。」

 「あなたの持つ情報は聞かされず、こちらからの情報を与えるだけですか。」

 「そうだ。」


 ふっ、とため息をついた後、諦めた顔で話し始めるテオ。

 デルヴァンクールの侯爵家お取り潰しや、伯爵家に産まれた私の事、王都からの査察が入り3人で逃げ出してきたことを説明する。

 聞いていたギルドマスターは驚いた顔も見せなかった。興味は無くなったとでも言うように話を終わらせる。


 「もういいぞ、あとはヴィヴィと話したい。出て行ってくれ。」


 出て行けと言われるとは思ってもいなかったようで、ポカンとした表情で固まったテオ。私を振り向いて心配する。


 「一人で大丈夫ですか?」

 「大丈夫よ。いつでも【身体能力強化】を発動できるようにしておくわ。」

 「こんなところで戦闘するわけがなかろうっ!!」


 テオも出て行ってギルドマスターと二人だけになる。本当にパンチは飛んでこないでしょうね。警戒を緩めないようにしなきゃ。


 「侯爵家取り潰しは、私のもとにも入ってきている情報だ。」

 「そんな簡単に情報って入るもんですか。」

 「ハンターギルドの支部同士で情報交換はしてるからな。だがヴィヴィの生まれはさすがに掴んではいなかった。ヴィヴィの父親がよほど巧妙に隠していたのだろう。愛されていたのだな。」


 涙がこぼれ落ちる。お父様お母様、私を愛してくれていたのですね。また会える日が待ち遠しい。


 「それで、金銀の特徴について説明するとだな、」


 ちょっとーっ、感傷に浸る暇も与えないってことですかっ。

 そんな思いも、ギルドマスターの次の言葉で吹き飛んだわ。


 「口伝では、エルフがエルフとなる前に人工的に作られたエルフの始祖がそうであったと伝えられている。」

 「人工的にって、そんなものどうやって・・・ って、エルフはエルフじゃなかったんですかっ。」

 「口伝でしか情報が残っていないので、真偽は私も分からぬが年寄り共はそう言っていた。」

 「そ、その、お年寄りっておいくつぐらいですか?」

 「八百から千ぐらいであろう。私が里を出たときの長老がいまだ存命なら、千二百ぐらいか。」

 「千二百――っ、ギルドマスターは・・・・・」


 女性に年齢を聞くのって、失礼なんだっけ? でも、聞きたいーっ。


 「エメリーヌと呼んでくれて構わんぞ。」

 「あ、では、エ、エメリーヌさんは、おいくつなんですか?」

 「180歳だ。50歳ぐらいの時に里を出てきた。」


 180・・・ 気が遠くなりそうな歳月を生きてきたんだわ。いえ、それ以前にエルフの里では八百から千ぐらいのおじいちゃんおばあちゃんがいっぱいいて、人工飽和状態になっているんじゃないの?


 「そんなに皆さんが長生きだと、里がエルフであふれかえったりしないんですか?」

 「人に比べてエルフは出生率が極端に低いのだ。それに生きていればケガや病気で死ぬ者もいる。誰もが長生きをしているわけではないぞ。」


 エメリーヌさんが一息ついた後、お年寄りから伝え聞いた話を話し始めた。


 「口伝では我々を『ムーの民』と名乗っていた。科学文明の発達した国家ムー、そこは空を飛ぶゴーレム、地上を走るゴーレム、海上を進むゴーレム、必要と思われるあらゆるゴーレムが作り出され人々の生活を豊かにしていた。

 ある日、国家ムーを天変地異が襲い、それまでとは全く別の場所に移動した。その課程で多くの人々が死に、ほとんどのゴーレムが壊れ動かなくなった。」


 ・・・・・国家ムー、まさか海に沈んだとか言われてるムー大陸のことじゃないの?

 ムー大陸は私がいた地球にあったはずの大陸、それがこの世界に移動した?

 ゴーレムなんて言ってるけど、飛行機や車、船の事を指しているんじゃないかしら。他にも、あらゆるゴーレムだなんて、きっと三種の神器とも呼ばれていた、テレビに洗濯機に冷蔵庫とかもゴーレムと呼ばれているのね。


 女神様が何か言ってたわ。私が時空間の亀裂に巻き込まれ、魂をこちらの世界で見つけたとか?

 ムー大陸でも同じような時空間の亀裂が? しかも大陸ごと飲み込むような巨大な亀裂が生じたのだとしたら、人々が全滅することもなくわずかな人数だけでもこちらの世界に移動できたのかもしれないわ。


 「わずかに生き残った『ムーの民』、その生き残りにはゴーレムの制作修理に携わる者はいなかったが、唯一の救いとして医療関係者が多かった。

 口伝では、医者がいて助かった、とされているが、私の考えはこの時に『ムーの民』は人知れず滅びれば良かったのでは、と思っている。」

 「どういうことですかっ。わずかな人数だけでも生き残ったんでしょう。その人達には生き延びる権利があると思いますっ。そのおかげでエメリーヌさんもここにいるんでしょう?」

 「ああ、確かにその通りだ。そのおかげでヴィヴィもここにいる。」


 ええ? 私に何の関係が? って言うか、関係がすっごくありそう。関係もなくこれだけ突っ込んだ話を教えてくれるわけないよね。


 「国家ムーには魔力などというものはなく、生き残った人々はこの世界の魔力に当てられ寿命が短くなり始めた。

 医者達は人々を魔力になじませるために努力をした。

 医者は魔物の体内にある魔石を子供に移植した。その子供は苦しみ抜いた末に生き延び、その後の姿が金色の瞳と銀色の髪に変貌していた。

 医者はその後も子供達に魔石の移植を試みたが、全て失敗して多くの子供を犠牲にした。

 医者が多くの犠牲を出し諦めた頃、生き延びた唯一の子供は美しく成長し夫を迎えることとなった。

 銀色の髪の子供が産まれ成長していく。父親は短命で若くして亡くなるが、金色の瞳と銀色の髪を持つ妻は年老いることがなかった。

 金色の瞳と銀色の髪を持つ娘は新しく夫を迎え、銀色の髪の子供が産まれる。

 それが繰り返されたが、金色の瞳の子は産まれなかった。

 その銀色の髪の子供達同士で子供を授かり、徐々に耳が長くなり始め長寿となっていったのが、エルフの基となる種族だ。」

 「それって、金銀の子供がそこに産まれなくて、デルヴァンクール王国に産まれるのはどういうことなんですか。」

 「デルヴァンクール王国にだけ産まれるわけじゃないぞ。ブルダリアス王国にも時折産まれてくる。その頃に産まれた銀色の髪の子供が、里を出て人と混じったのだろう。エルフには産まれないが人と混じった者達からは産まれる。その子供は魔法に愛されていると言われている。私はその子供を探しているのだ。デルヴァンクール王国の先々代の女王にも会いに行ったが、もうすでに魔力の成長期を過ぎた年寄りだった。そして今、目の前にヴィヴィがいる。これはヴァランティーヌ様が導いてくれたのではないかと思っている。」

 「か、神様の導きなんてっ、そんな事ありませんよ。」

 「導きで無かったとしても、ヴィヴィには助けてほしい。」

 「私の助けなんか必要も無いぐらい、エメリーヌさんは強いじゃないですかっ。」

 「ヴィヴィがこれから成長していく上で私を遙かに超えて強くなっていく。そのときに助けてほしいのだよ。」

 「一体何と戦ってるんですかっ!!」


 遠い目をして壁の方を見るエメリーヌさん。え? 壁には何も無いわ。って、そっちの方角は『魔の森』?

 まさか『魔の森』に何か因縁でもあるとか?


 「口伝にはまだ続きがある。」


 まだあるんですかっ!!


 「魔石を移植されエルフの始祖となった女性は、体内の魔石が魔力を吸収し続けている事に気がついた時には、すでに医者達は死に絶え止める術はは無かった。

 エルフの始祖は、里の中で自らが魔物化することを恐れ、一人里を出た。

 ここまでが年寄り共の口伝だ。」

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