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たった一つの輝くもの  作者: ともむらゆう
第4章 オーロステラ
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八十八話 難星グンマー

 タゴサクは【天界】から帰り、ジャパンステラでソーニャやイアと合流した。

 話を聞きたがる二人だったが、まずは女神に報告しに行ってイベントを終わらせる。

 レアステラに行ってまで【強化ゴブリン】を救ったおかげで、クリアできた。


 オーロステラにはまだ行けなかったが、若干変化があった。

 女神からオーロステラの名前を聞けたのだ。

 公式で発表されているため、プレイヤーはオーロステラの存在を知っている。女神のイベントと関係しているのも周知の事実だが、本来ならここで初めて情報を入手する流れなのだ。


 オーロステラの名前が出たなら、ゴールも近いと考えていい。

 終わりが見えるとやる気も倍増する。近日中には金色になれそうだ。

 ハイテンションのままで宿屋に移動し、タゴサクは【天界】に行ったことや条件を教える。


「PK数かあ。私はどっちが多いんだろ? PKされた回数の方が多そうな気はするけど、【天界】に行けなかったってことは、条件を満たせてないのよね」

「わたしは同じくらいかなって思う。片方だけが突出するケースは少ないよ」

「高レベルなのに、コモンステラでPKに勤しむような人でもないと、なかなか増えないわよね」


 大抵のプレイヤーは、PKをするし、PKされる。

 両方を体験しつつ進めるのがSOSの遊び方だ。


「で、お兄ちゃんは【天界】のスキルを覚えたんだっけ?」

「すんません。誘惑に負けてしまってすんません。【魔界】の魔法も手に入ればいいなって思ったんです」

「わたしが【魔界】に行けるなら、サクさんにあげてもいいですよ」

「い、いや、それはちょっと……ぶっちゃけ欲しいが、ダサいから嫌だ」


 好きな子に貢がせるのはダサい。物欲はあるが思いとどまった。


「トキヒメなら、下僕の男に行かせて両方持ってるかもね。スキルと魔法を四つ全部持ってて、二種類の奥義を覚えてても驚かないわよ」

「ありそうだね。でも、たくさんあっても使える数は限られるし、使わないんじゃないかな。金色の奥義も強いのがあるだろうしね」


 二人の中では、相変わらずトキヒメの評価が最悪になっている。

 いずれ誤解が解けてくれることを願うばかりだ。


「まあ、私とイアじゃ行けそうにないわけね。残念だけど諦めるわ」

「条件を満たそうと思えば満たせるぞ。俺がソーニャとイアをPKしまくればいいんだ。逆に、二人が俺をPKしてもいい。奪った金やアイテムは返せば解決する」


 PKした回数もPKされた回数も、仲間がいれば水増しするのは簡単だ。

 PKの際に奪った物、奪われた物は、譲渡用のアイテムを使って返せる。

 譲渡用のアイテムを購入するのに少々金は必要だが、今なら十分な数をそろえられるし、やってやれなくはない。


「私はやらなくていいわよ。あからさまな水増しはちょっとね」

「わたしもソーニャちゃんに賛成。自然に行けるようになるのを待つ方がいいよ」


 二人がやらないと言っているので、話はおしまいだ。

 タゴサクがレアスキルを覚えたことで満足とする。

 本日のゲームはここまでだ。レアステラでずっと【強化ゴブリン】狩りをしていたせいで時間がかかった。

 ログアウトし、軽く勉強をしてから寝る。


 翌日も朝からSOSだ。

 藍子(あいこ)が遊びにくるのを待ち、彼女が猫のタゴサクとじゃれ合ってから、三人でログインする。

 夏休みの日課となった流れだ。猫のタゴサクもすっかり藍子に懐いている。


「わたしを待たなくてもいいのに。勝手にサクちゃんと遊んで、満足したら勝手にソーニャちゃんの部屋に入って、勝手にログインするよ」

「自分の家みたいな気軽さね。それ、本当にログインするだけで済むの?」

「無防備なソーニャちゃんにいたずらしようとか考えてないよ。サクさんの部屋に忍び込もうとか考えてないよ」

「はい、アウト。私の貞操が危険だから、絶対に待つわ。お兄ちゃんはどうでもいいけどね」

「いいの? わたし、ちょっと用事を思い出した。二時間ほどログアウトするね」

「待てい!」


 現実のタゴサクの肉体が危険なのでイアを止めた。

 兄を売るソーニャもソーニャだ。

 強い衝撃があればVRゲームデバイスが感知して強制ログアウトさせるが、微弱な刺激は無視される。

 イアが多少いたずらをしても、タゴサクはログインしている限り抵抗できない。


「二時間もいる? お兄ちゃんなら二分でいい気がするけど」

「サクさんってそうなの?」

「お前ら、最近マジで自重しないよな。セクハラ発言のオンパレードだ。俺のお株を奪うなよ」

「私たちのセクハラは、いいセクハラ。お兄ちゃんのセクハラは、悪いセクハラ」

「なんつう暴論を」


 朝っぱらから酷い会話だ。

 頭の悪い会話は切り上げて、ゲームで遊ぼう。

 ジャパンステラで女神の情報を探すが、問題が一つある。


「残ってる星ってどこだっけか?」


 実のところ、タゴサクたちは四十七の星をほぼ訪れている。

 行っていない星はあるが、それは【絶壁街ゼル】のように色が限定される星だ。

 ここは、鈍色のタゴサクと黒色のイアは行けて、橙色のソーニャは行けない。

 逆パターンで、ソーニャが行けてタゴサクとイアが行けない星もある。


「三人で行けない星は除外するとして、残りは五つもないんじゃない?」

「数えれば分かりますよね。ちょっと待ってください」


 イアは、町に転移するアイテムを使い、行ける場所を数えていた。

 これなら行っていない星が分かる。鋭い考えだ。


「こことここは同じ星の町で……これはコローレステラだし……あ、数が分かんなくなっちゃいました」


 鋭い考えだが、実行する側の頭脳が追いついていなかった。


「頼りになるのかならないのか」

「サクさんに言われると屈辱です。だったら、サクさんが数えてくださいよ」

「いいぞ」

「私もやるわね。二人の意見が一致すれば、多分正しいでしょ」


 タゴサクとソーニャも数え始める。

 コモンステラからコローレステラまでの町があり、並びが五十音順になっているせいで数えにくい。


「これさ、星順でソートできるよな? 五十音順だからごっちゃになるんだよ」

「サクさん、ずるいです! 卑怯です! 反則です!」

「気付かないイアが悪いわよ。私も気付いたのに。えっと、【桃源郷シュト】から始まってて、【コローレ】の前までだから」

「四十三だな。【絶壁街ゼル】を除けば四十二」

「私は【絶壁街ゼル】に行ってなくて、四十二だったわね」


 二人が一致したので、まず間違いあるまい。

 特定の色でなければ行けない星は、【絶壁街ゼル】、【月光街ソル】、【恐竜街アル】の三つだ。

 すなわち、まだ訪れていない星は二つだけになる。


 訪れた四十二の星の全てで女神の情報を得たわけではない。女神の情報を求めて訪れたはいいが発見できず、まともに探索していない星も多い。

 単に遊ぶだけなら、ダンジョンもクエストもあるが、今日は残る星の片方に行ってみる。


 宇宙船に乗り、目指すは【難星(なんせい)グンマー】だ。

 理由は知らないが、群馬県であると思われるこの星は、四十七の星の中で最高難易度を誇る。

 モンスターがやけに強く、フィールドに出た途端、雑魚モンスターに殺されかねない。クエストを一つクリアするにも困難を極める。ダンジョン攻略などもってのほかだ。


 仮に女神の情報を発見したとして、到底クリアできるとは思えなかったので後回しになった。

 今のレベルでも攻略は難しいが、他に選択肢もないしやるだけやってみる。


「もう一つの星にした方がよかったですかね?」


 イアは不安そうに言ったが、正直どちらでも変わらない。


「残ってるのは【修羅の星ヘヴンズ】だろ? あっちはあっちで問題だからな」


 ここは、NPCが全員敵という恐ろしい星だ。世紀末世界に登場しそうな、モヒカンヘッドでヒャッハーなNPCが住んでおり、町を歩いているだけで襲われる。

 店で買い物をするにも、民家でクエストを受けるにも、必ずNPCとの戦闘が発生する。戦闘に勝たなければ、施設は利用できないしクエストも受けられない。

 まさしく修羅の星である。なのに天国(ヘヴンズ)とはバカなネーミングだ。


 どうでもいいが、【修羅の星ヘヴンズ】に該当する都道府県はない。

 特定の都道府県への風評被害になるので避けたのだろう。

 該当する都道府県がない星は、【陰火(いんか)帝国モッコリーゴ】や【皇星ジャパン】もそうだ。

 代わりとして、【水の国トゥーリバー】が香川県と石川県であるように、一つの星で複数の都道府県をまとめて数を調整してある。


「ちょっと心配事があるんだけど」


 イアに続いて、ソーニャも不安そうな声を発した。


「【難星グンマー】は、ジャパンステラ中で最高難易度でしょ。ここにいるプレイヤーも高レベルぞろいだと思うのよね。モンスターも心配だけど、こっちも心配でさ。PKされそうになった場合、私たちが勝てる?」

「無理だろうな」

「わたしも無理だと思う。昨日も男性プレイヤーにPKされたけど、あのくらい強い人がうじゃうじゃいそうだよ」

「どうするのよ」

「内容次第だ。【難星グンマー】でモンスターを倒せとかダンジョンを攻略しろとか言われりゃ、諦めるしかないな。レアステラで【強化ゴブリン】を救えって言われたみたいに、他の星に行ってクリアするタイプならなんとかなる」


 PKも、町の中にいる限りは安全だ。フィールドに出なければ襲われない。

 他の星に行くタイプか、あるいは町の中で完結できるタイプであることを祈る。


 多くの不安を抱えながら、宇宙船は【難星グンマー】に着陸した。

 町の様子は、よくあるジャパンステラの町だ。和風になっている。

 プレイヤーの姿も見えるが、妙に強そうな空気を纏っていると感じるのは気のせいだろうか。

 コダっているタゴサクたちは、嫌悪の目で見られてしまう。

 あからさまに舌打ちしたり、罵倒の言葉を吐き捨てたりするプレイヤーもいる。


 ここにいるのは上級者ばかりで、SOSで長く遊んでいる古参プレイヤーだ。

 古参プレイヤーが定めたマナーに従わない、常識知らずの新参者に対して、厳しい態度を取るのは当然だった。


「フィールドに出れば、即PK間違いなしだな」

「空気悪いわよねえ」


 タゴサクとソーニャがぼやいた。

 マナー違反をしているのはこちらであると理解している。

 理解していても気分のいいものではない。


「だから、わたしたちの出番なんですよ。最近は言ってませんでしたけど、世界が定めた運命に抗うんです!」

「確かに、久しぶりに聞いたな。どうやって運命に抗うんだ?」

「もちろん、PvPですよ。パーティー戦で優勝すればいいんです。PvPのためだけに組んだ即席パーティーよりも、わたしたち三人の絆が一番強いです」


 優勝とは大きく出たものだ。目標は高く持つべきだが、高過ぎる気もする。

 イアは優勝する気満々のようだ。ナレーションっぽくまとめる。


「世界がパーティーを否定しても、屈さずにここまできました。三人の絆を引き裂こうと、様々な試練が襲いました。些細なすれ違いから、一時は別れる寸前まで追い込まれますけど、世界が定めた運命に抗い続けたんです。そして、集大成となる試合で優勝して脚光を浴びます。めっちゃ格好いいです!」


 この部分だけを聞けば、本当に少年マンガのような展開だ。

 実際は、それほど立派でも綺麗でもない。実にバカなことばかりやってきた。

 しかし、バカでこそタゴサクたちだ。真面目になったりシリアスになったりするよりも、バカのままで笑い合い、遊びたい。


「優勝するためにも、金色にならなきゃな」

「それなんですけど、この際言っちゃいますね。わたしは金色になるつもりがないんです」

「マジ?」

「わたしは黒ですからね。黒天女、深淵、死宮と色んな二つ名を名乗ってきましたけど、結局のところわたしは黒です。黒のイアです。最後まで黒で通します。最高峰の金色にならなくても、黒のままでパーティー戦に優勝してみせますよ」

「あれこれ言ってるけど、格好いいのが好きってことでしょ?」


 ソーニャの身も蓋もないまとめに、イアは全力で頷く。


「うん! シンプルイズベスト! 色々名乗ってきて、最後は黒のイアに落ち着くんだよ! めっちゃ格好いいし鼻血出そう!」


 イアらしい理由だった。顔面崩壊レベルで興奮している。

 ここまでゲームを楽しんでもらえれば、開発者たちも嬉しいだろう。


「じゃあ、私も言っておくわね。私も金色にはならないわ」


 イアに便乗して、ソーニャも暴露した。


「ソーニャもかよ。夏休みに入ってから、金色になるために頑張ってきただろ。女神との戦闘を三周したりとか」

「結構悩んだけど、いつでも金色になれる状態にしておけばいいかなって。いざ金色になりたいと思っても、そこから女神のイベントをやり始めたら大変でしょ」


 すぐに金色にならなくても、なれる状態にしておけば無駄にならない。

 PvPで金色同士の試合があり、参加したいから急いでいるだけだ。強制参加ではないし、金色になれる条件を満たしておいて現状維持でも問題ない。


「金色になりたかったのは、トキヒメにバカにされたのが悔しいからなの。完全下位互換の評価を見返してやるって。でも、金色にならなくても戦えそうだし、橙色のままでいたいかな」

「この流れは、俺も鈍色のままになるのか?」

「お兄ちゃんは金色になればいいわよ。というかさ、気付いてないの?」

「何をだ?」

「私は橙色の奥義を育てるのよ。金色になっちゃうと使えなくなるでしょうが。金色になるなら、色に関係ない奥義を育てるべきかなって考えてたの。でも橙色の奥義の方がいいし、悩むなあって。育てる奥義を決めた時から、金色になる気はほとんどなかったわ」

「わたしも同じですよ。黒の奥義を育てるので、金色にはなりません」

「……全然考えてなかった」


 今、ソーニャに言われるまで、タゴサクの頭になかった考えだ。

 言われてみればその通りである。

 黒の奥義は黒でしか使えない。橙色も鈍色も同様だ。

 金色になれば、現在覚えている奥義の大半が使用不可能になってしまう。

 スキルや魔法も大部分が入れ替えになるし、戦闘スタイルがガラリと変わる。


「お兄ちゃんは気付いてるから、【全テヲ滅スル光(ラグナロク)】を育てるのかと思ったけど」

「うっわ……俺ってバカだな。当たり前のことを忘れてた。【全テヲ滅スル光】は鈍色の奥義じゃないし、金色になっても使えるのか。偶然だが助かった。鈍色の奥義を育てるっつってたら、マジでただのバカだ」


 結果オーライだが【全テヲ滅スル光】を育てると決めてよかった。

 おかげで、安心して金色になれる。


「私もイアも金色にならないけど、女神のイベントは一緒にクリアするから。レアアイテムとかをもらえればラッキーだしね」

「サクさんは金色になってください。わたしたちのリーダーです。金色のサクさんを筆頭に、橙色のソーニャちゃんと黒色のわたしが合わさって……うへへへ、ぐへへへへへ、ぐうぇっへっへっへ」


 ゴールデンウィークにも聞いた、気持ちの悪い笑い方三段活用だった。

 少年マンガチックでイアの好みなわけだ。


 三人とも金色になるよりは、個性が出ている方がいいと思う。

 タゴサクは変わらずに金色を目指す。ソーニャとイアは今のままだ。

 そうと決まれば、町で女神の情報を集めよう。

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