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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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15日目終了 発掘物の確認

会議が終わったので、アルクさんに話しかけることにした。


「すみません、アルクさん。

 少しお時間よろしいでしょうか?」


『ええ、私も話があります。

 はい、昨日、辺境の遺跡で見つかったというケースを受け取りました、ええ』


 話が早くて助かるな。


「どうでした?

 エレクターの補給はできそうですか?」


『動くようにはしてきました、はい。

 ですが、ジェネレータと接続した状態でないと動きません、はい。

 持ってきましたので、見てください。』


「え?

 もうできたんですか?」


『はい。

 それほど難しい作業ではありませんでしたから、ええ』


 本当に仕事が早い。

 素晴らしいな。

 俺はいつも仕事は遅れ勝手だった。

 納期が短めなこともあったが、性格的な問題もあったんだろう。

 見習わないとな。


『動きますけど、開けることはできていません、はい。

 マナを制御しないといけないんでしょうが、私はそれはできませんので、ええ』


 アルクさんはマナが使えないらしい。

 まあ、確かにエレクター一筋って感じがするしな。

 もちろん、いい意味でだ。


「試してみていいですか?」


『どうぞ。

 準備するので、少し待ってください、はい』


 そう言って、アルクさんは持っていた大きなかばんを、ごそごそいじり出した。

 最初に、俺が渡したケースを取り出した。

 それを床に置いて、次に大きな箱を出した。


『これがジェネレータです、はい。

 ここにこのケースを置きます、はい』


 そう言いながら、箱の上にケースを置いた。

 そして、箱の横のスイッチらしきものを押す。


『どうぞ。

 これで動くはずです』


 うん?

 何も変わってないように見えるけど。


「これでいいんですか?

 見た目は変わってませんけど」


『ええ、大丈夫です。

 知り合いのマナが使える人間に確かめてもらいました。

 この状態でマナを使えば、反応があります、はい。

 ただ、その知り合いでは開けることができませんでした。

 ええ、エレクターはこれでいいと思いますが、マナの使い方に問題があると思います。

 私には分かりませんから、試してください、はい』


「分かりました。

 とにかく、試してみます。

 よっ」


 俺はケースに手を添えて、マナを使ってみた。

 カチッと音がするのが聞こえた。


「あ、開きました」


 拍子抜けするほど、あっさりと開いた。

 いや、簡単に越したことはないから、文句はない。


『やっぱりマナの使い方の問題だったようですね、はい。

 何が入っていますか?』


「えーと、ノート、ですね。

 あとは、うん?

 マッピングの時に使うプロッタみたいなのが入ってますね」


 中には俺が仕事でメモに使ってるのと同じようなノートと、いつもマッピングするときに使っているプロッタとよく似た球体が6つほど入っていた。


『ええ、見せてもらっていいですか?

 確かにノートとプロッタですね、はい。

 いえ、プロッタとは少し違いますね。

 先に穴が開いてますね、はい』


 あ、ほんとだ。

 プロッタにはない穴がある。

 なんだこれ?

 マッピング装置と違って、制御端末はない。

 どうやって動かすんだろ。

 このノートは取説かなんかか?

 そう思って、ノートの中を見たが、どうも誰かのメモ帳らしい。

 非常に字が汚い。

 いや、俺のノートもこのノートにかなり近いから、文句は言えないが。

 一応、部分的には読める。

 読めない所もけっこうあるが。

 でも、これ全く読めない人が多いんじゃないだろうか。

 サッと目を通した感じでは、これが取説ってことはなさそうだな。


「アルクさん、このノートの中身、読めますか?」


『ノートですか?

 これは、ええ、はい、ちょっと、読めませんね』


 うん、読めないらしい。

 そりゃこんだけ雑に書かれていては、しょうがないな。

 まあ、アルクさんのメモも似たようなもんだったけど。

 自分のメモは読めるけど、人のは読めないってことはよくあることだしな。

 まあ、中身は帰ってから、ゆっくり読もう。


「このプロッタみたいな道具、まぎらわしいですね、仮にプロッタもどきと呼ぶことにしましょう。

 プロッタもどきの使い方って分かりますか?」


『見ただけでは分かりませんね、ええ。

 一つお借りしても構いませんか?

 私で分かる部分を調べてみます、はい。』


「はい。

 お願いします」


 俺一人で考えるより、専門家に見てもらった方が早いからな。

 アルクさんは腕もいいし、仕事も早いから、調べてもらえるなら非常に助かる。


 ケースの中に入っていたのは、それだけだった。

 残念ながらフォーサル遺跡の奥の扉の鍵になりそうなものはなかった。

 もしかしたら、このプロッタもどきを使う可能性もあるけど。

 なんとなく、違う気がする。


『ところで、ファスタルの地下へご同行させていただく件ですが、はい。

 次はいつ調査に行かれる予定ですか?』


「ああ、まだ決めてなかったですね。

 統括」


 俺は会議室でユラさんとサラと話していたおっさんに声をかける。


「次の地下への探索っていつにしますか?」


『俺はいつでも構わんが。

 今日これから行ってもいいが、そうだな、昨日あれだけ戦闘もこなしたことだし、明日でどうだ?』


 おっさんは俺とルッツの体調を気遣ってくれたっぽい。

 ありがたいけど、俺としては、おっさんの体の方が心配だ。

 一番ダメージを受けたはずだし。

 でも、大丈夫なんだろうなあ。

 聞いても、俺は統括だぞ、とか言われそうだし。


「というわけで、明日行きますけど、どうされますか?」


『では、私も明日行きます、ええ。

 何時にここを出るんですか?』


「いつもは8時くらいに出てますけど、アルクさんの都合のいい時間で構いませんよ?」


『いえ、では8時にこちらに参ります、ええ。

 玄関の所に来ますから、はい』


「分かりました。

 わざわざありがとうございます。

 じゃあ、明日お願いします」


『いえ、こちらこそお願いします。

 未知のエレクター装置、楽しみです、はい』


 それから、ジェネレータを片付けてアルクさんは帰っていった。

 

『ユウトは今日はこれからどうするんですか?』


 サラが俺の所に来て、聞いてきた。


「そうですね。

 地下には明日行くことにしたので、今日は久しぶりに裏通りのマッピングをしようかな。

 サラは?」


 裏通りに行って、ついでに雑貨屋の店主にフォーサルで見つけた装置の写真を見せたい。

 何か分かるかもしれない。


『私はこれから仕事です。

 また休みの時には連れてってくださいね』


「はい。

 仕事、がんばってくださいね」


 サラには悪いけど、雑貨屋の店主とトライファークの話をすることになるだろうから、今日は単独行動の方が都合がいいし、ちょうど良かった。

 

 会議室でサラと別れて、ルッツと家に帰ってきた。

 サラは、会議室からそのまま仕事に行ったようだ。

 そういえば、ルッツの情報をカトーさんに聞くのを忘れてたな。

 カトーさんは地下の這いずりしものの調査の許可をもらって、早速準備しに行ったみたいだ。

 よく分からないルッツのことよりも、目の前にある這いずりしものの調査が気になって仕方ないんだろう。

 どうせ、地下で会うことになるだろうから、その時にでも聞いてみればいいか。

 

 帰ってから、マッピングの準備をした。

 ついでに、プロッタもどきをプロッタ用のジェネレータに入れておいた。

 同じような形だからエレクター補給ができるんじゃないかと思ったからだ。

 もしかしたら壊れるかもしれないから、入れるのは1個だけにした。

 使い方が分からないから、エレクターが補給できたかどうか分からないかもしれないけど。

 もしかしたら、エレクターを補給したら自動で動くかもしれないし、試してみる価値はあると思う。

 帰ってきてから、どうなっているか確認してみよう。


 そんなことをしているうちに昼前になっていたので、食堂で昼食をとってから街に出た。

 普通にマッピングをするのは数日ぶりだけど、地下探索の内容が濃かったので、かなり久しぶりな気がした。

 とりあえず、先に雑貨屋に行って、フォーサルで撮った写真を見せることにする。

 雑貨屋のドアを開けると、前と変わらない、

 カランカラン

 という小気味いい音とともに、


『いらっしゃ~い』


 というやる気のない声が聞こえてきた。

 あのドアについている飾りの音はすごく趣味がいいのに、店主の声のせいで台無しなんだよな。


「こんにちは。

 ちょっと見てほしいものがあるんですけど」


『おう、おまえか。

 久しぶりだな。

 なんだ?』


「これなんですけど」


 スマホの画面を見せながら、辺境で遺跡を見つけたこと。

 そこにトリップ装置ではないかと思われる装置があったこと。

 その装置の写真を撮ったことを説明した。

 店主は真剣な顔で写真を見ている。


『まあ、俺がトライファークの装置を最後に見てから、何年か経っているからな。

 細かい所まで覚えているわけじゃないが』


 そう前置きをしてから、


『かなり似ていると思う。

 が、俺が見たやつとは少し違うな。

 俺が見た装置よりもこの写真のやつの方が複雑だ。

 トライファークにあった装置はこんなにケーブルはなかった。

 それに写真では大きさは分からんが、俺が見たものよりも大きそうな気がする』


「じゃあ、違う装置なんですかね?」


『いや、そうとも言えないんじゃないか。

 トライファークの装置の後継機種とか、他の機能も付いている上位機種とか、そういう類のものかもしれない』


 なるほどな。

 その可能性はあるな。


「ちなみに、これは写真の装置が置いてあった部屋で見つけたものです。

 見覚えはありますか?」


 プロッタもどきを見せる。


『いや、俺は見たことはないな。

 これは何をするものなんだ?』


「まだ、分かりません。

 今、調べてもらってるんですけど。

 あと、このノートも同じ所で見つけました。

 どう思います?」


 俺はノートも見せる。

 店主はパラパラとページをめくって中を確認しているが、


『なんか技術的なメモなんだろうが、俺には読めんな』


 読めないらしい。

 確かに字は汚いけど、そんなにひどいだろうか。

 俺は割と読めるけどな。

 まあ、読めないなら仕方ないな。


「そうですか。

 あと、ちょっと最近調べてたことなんですけど」


 俺はファスタルの地下に遺跡があること。

 そこに人工知能を搭載したコンピュータがあって、ファスタルを第一最適化実験都市と呼んでいること、自分を管理者と言っていること、などを説明した。


「どうでしょう?

 トライファークでそんなような話を聞いたことはありませんか?」


『いや、トライファークにいる間に他国の情報はそれほど聞かなかったな。

 だがな、第一最適化実験都市って名前は気になるな。

 前にお前がここに来た時にも話したが、俺はトライファークではシステムの最適化作業をさせられていた。

 それは、どうやら古代文明に比べて現在の文明は異常に無駄が多いから、それをなんとかしようとして、やっている作業だったようなんだ。

 古代文明の発展ってのは無駄を省いて、どんどんシステムの最適化を進めた上で築かれたものだ、と言われているらしい。

 だから、無駄を省いていくことで古代の文明に近づけるはずだ、という意図があったようだ。

 その人工知能が言う第一最適化実験都市ってのは古代文明の最適化の始まりがこのファスタルだったということなのかもしれない。

 だとすると、その人工知能は古代文明が発展する初期の頃に作られたのかもしれないな。

 もしそうなら、古代文明についての情報をかなり持っているんじゃないか?

 初期に作られて、今も稼働しているわけだからな。

 それと、俺やお前がトリップさせられたのは、そういう技術に精通してるからだという可能性があるな。

 どうやって、そんな人間を特定してトリップさせたのかは分からんが』


 なるほど。

 店主の話には説得力がある。

 明日、あの人工知能と話すときには、古代文明の情報を中心に聞いてみることにするか。

 管理者コードがー、とか言われるだろうが、分かる範囲だけでも聞こう。


「ありがとうございます。

 色々ヒントになりました。

 また新しいことが分かったら来ます」


『おう。

 俺の知ってることが役に立つか分からんが、いつでも来い』


 雑貨屋を出た。

 店主の話ではフォーサルにあった装置はトライファークにあったものとは違うらしい。

 でも、とても似ているから、関係がある可能性はあるだろうと。

 すっきりしないな。

 どうにかして何の装置か確認できないかな。

 うーん、と考えながら歩いていると、

 どんっ

 と、結構な衝撃とともに人とぶつかってしまった。


「あ、すみません」


 咄嗟に謝る。

 とにかくすぐに謝るのは日本人の悲しい性だと思う。

 謝ったら負け、という地域もあるみたいだけど。

 

 ぶつかった相手はこけていた。

 手を差し出して、起こす。


「すみません、ちょっと考え事をしていて、前を見ていませんでした」


 相手は、小柄な女性だった。

 フードを目深に被っていて表情は分かりづらいが、こちらをじっと見つめている。

 うわっ、おかしな人とぶつかってしまったかも。

 そう思ったが、ぶつかったのはこっちだから、ぞんざいな対応をするわけにもいかない。


「大丈夫ですか?」


 その女性は相変わらず、俺の顔をじっと見ている。

 立ち上がってから、しばらく俺のことを見つめていたが、


『ええ、大丈夫です。

 こちらこそすみませんでした』


 あ、普通に受け答えできるんだな。

 良かった。

 全然しゃべらないから、言葉が通じないのかと思った。

 裏通りには、おかしな人間がたくさんいる。

 マッピングをしていて、そんな人をたくさん見た。

 酔いつぶれているだけならまだしも、どう見ても正気でない人や、一人で壁と話し続けているような人も頻繁に見る。

 この人もそんな人なのかと思ったけど、どうやら大丈夫らしい。

 裏通りに女性一人でフードを目深に被っている時点で訳ありなのは間違いなさそうだけど、今はこれ以上トラブルを抱えたくないから、さっさと離れることにする。


「じゃあ、俺はこれで。

 すみませんでした」


 俺は足早にその場を離れた。

 後ろで、


『あっ、ちょっ』


 とか言っているのが聞こえたが、呼び止められて慰謝料でも請求されたらたまったもんじゃないから、気にせず立ち去った。

 裏通りにはそういう当たり屋じみたことをする輩もいるみたいだしな。


 その後は、雑貨屋から少し離れた場所のマッピングをした。

 さっきの女性に出くわさないように場所を移したのもあるが、元々雑貨屋付近のマッピングは完了していたので、まだ作業をしていないエリアに移動したのだ。

 マッピング自体はスムーズに進んだ。

 地下と違ってモンスターは出ないから気楽なもんだ。

 ルッツと散歩気分で作業をする。

 ここの所、緊張の連続だったから、たまにはのんびりするのも大切だ。

 まあ、裏通りはそんなに気楽に歩ける場所じゃないんだけど、俺はかなり慣れたし、マッピングしながらだと迷うこともない。

 ちょっとおかしな人間が多いけど、近づかなければ大丈夫だ。

 


 昼から始めたし、雑貨屋にも寄ったから作業時間は長くなかったけど、なんとか1km四方のエリアマップ一つを完成させた。

 それで満足したので、帰ることにした。


「ルッツ、帰ろう」


 ルッツと二人で研究所に帰った。

 久しぶりに平和な一日だった気がする。

 モンスターと戦うのもファンタジー感があって悪くないんだけど、やっぱり未だに怖さはある。

 まあ、基本的に戦うのはおっさんなんだけど、這いずりしものと戦った時は俺もかなりモンスターに接近したしな。

 あの時は、状況がやばかったから仕方なかったけど、進んでモンスターに近寄りたいとは思わないんだよな。

 もっと強くなって余裕が出れば変わるかもしれないけど、今の所は、それほど余裕はない。

 まあ、文句を言っても地下には行かないといけないし、できることだけやることにしよう。

 

 研究所に帰ると、食堂で仕事帰りのサラと会ったので、一緒に食事を済ませた。

 夕食後、家に帰ると、すぐにケースに入れておいたプロッタもどきを確認する。

 見た所は、何も変化はない。

 スイッチのようなものも見つからないから動かし方も分からない。


『それは?』


 サラに尋ねられる。


「フォーサル遺跡で見つけたケースから出てきました。

 見た目はプロッタに似てるんですけど、使い方が分からないんですよ」


 そこで、ふと思いついて、マナを使ってみた。

 すると、プロッタもどきのプロペラが回り始めた。

 当たりっぽい。

 でも、手を放すとプロペラは止まって、地面に落ちた。

 マナで起動するっぽいけど、触ってる時しか起動しないんじゃ意味ないな。

 そこで、横で見ていたサラが話しかけてきた。


『手を放しても、マナを使い続けたらいいんじゃないですか?』


「え?

 どういうことですか?」


『え?

 ユウトは触れているときだけマナを使って、離したらマナを使うのをやめちゃったから止まったんじゃないですか?』


 うん?


「マナって遠隔で操作できるんですか?」


『物によりますけど、できますよ。

 マナは人の思考による情報ですから、強く思うことで遠くまで影響させることができます』


 うん。

 俺は、マナは脳波の一種だと考えている。

 脳波ってことは脳の電気信号だから、微弱とはいえ、電流が流れて電磁波も発生するだろう。

 だったら、確かに離れた場所にも影響を与えることはできそうな気がする。

 でも、普通に考えて、そんな微弱な信号なんて、ノイズがでかすぎて、距離が離れたら拾えないと思うんだけど、そのへんは特定の波形パターンを検出するとか、古代の技術力では問題ないとか、まあ、なんとかしてるんだろうな。

 サラが言う強く思うってのは、要はできるだけその電磁波を強く出すってことなんじゃないだろうか。

 まあ、考えても分からないから、とにかく試してみよう。


 俺は再度、プロッタもどきを手に持つ。

 そして、マナを使ってプロペラを回す。

 そのまま、マナを使うことを強く意識したまま、手を放す。

 お、プロペラは回ったままだ。


「サラの言う通りみたいですね。

 マナを使い続けたらいいみたいです。

 あ、落ちた」


 話していたら、集中が切れてしまった。

 遠隔操作するには普段よりもしっかりとマナを制御しないとダメみたいだ。

 でも、これはおもしろいかもしれない。

 まだ、プロペラを動かすだけだけど、何かに使えそうだ。

 思った通りに制御できたら、ファ○ネル的なことができそうだ。

 この穴が何か分からなかったけど、ファ○ネル的に見て、ビームか何かが出そうな気がする。

 そしたら、完全にファ○ネルだろ。

 ていうか、これの設計者がファ○ネルを知っていた可能性もある。

 知っていて、憧れて、作ってしまった、みたいな。

 というのは、この世界には俺以外にも日本からトリップさせられた人がいた。

 ヨーヨーなんかもそういう人が作ったものだし、これも転移者が作ったのかもしれない。

 夢が膨らむな。

 まあ、俺はまだ満足に操作できないんだけど。

 でも、これを自由に動かすことを目指せば、今まで以上にマナの練習にも気合が入る。

 いいものを見つけた。


「でも、遠隔で操作できるってことは、俺が操作している時に横からサラが操作しようとしたら、どうなるんですか?」


『どうでしょうね。

 普通は遠隔操作型のものは操作し始めた人のマナにしか反応しない、とかが多いみたいですけど。

 やってみます?』


「ええ、お願いします」


 俺はプロッタもどきを拾って、もう一度操作する。


『じゃあ、試しますね』


 そう言って、サラはマナを使っているみたいだ。

 だけど、プロッタもどきに変化はない。


「やっぱり、サラの言う通り、俺のマナにだけ反応しているみたいですね」


『ええ、そうじゃないと、外からの影響が大きすぎて使えないでしょうし』


「そうですね。

 俺はまだ飛ばすしかできないんですけど、サラだったらもっと動かせるかも。

 ちょっと試してみてください」


 そう言って、サラにプロッタもどきを手渡す。


『じゃあ、いきます』


 サラが操作を始める。

 ちゃんと動き出した。

 当たり前だけど、俺しか使えない、とかではないみたいだ。

 そのまま、サラは制御を試しているようだ。

 プロッタもどきが徐々に動き始めた。

 スピードは速くないが、部屋の中をプロッタもどきが動き回る。


「すごい。

 ちゃんと制御したら、やっぱり思ったように動かせるんですね」


『そうみたいです。

 でも、難しいですね。

 慣れないと速くは動かせないです』


 やっぱり、これはファ○ネルだな。

 設計者は非常に夢のある方だろう。

 

「これからは、これの練習もしましょう。

 自由に動かせるようになったら、何か役に立つかもしれません」


『そうですね。

 マナの制御の練習にもちょうどいいですね』


 その後はいつも通り、データの整理をしてから、普通にマナの練習をした。

 プロッタもどきは一つしかエレクターを補給していないし、まだよく分からないこともあるから、今日は練習には使わなかった。

 アルクさんが調査してくれているから、その結果と今日分かったことを合わせて確認してから、使うことにする。

 

「じゃあ、今日はここまでにしますか?」


『そうですね。

 おやすみなさい』


「おやすみなさい」


 サラは自室へと戻っていった。

 俺は、サラが退室した後、プロッタもどきと一緒に出てきたノートを確認することにした。

 中身は何かの実験ノートのようだ。

 最初から順番に見ていく。

 めちゃくちゃ字は汚いが、どうやら人工知能についての実験とその結果、そして考察が書かれているようだ。

 理論も書いてあるけど、俺には理解できない。

 内容が難しいのもあるけど、読める部分がそれほど多くないから、余計に分からない。

 ただ、これを見ると、このノートの持ち主が人工知能の設計を行った中心人物の一人なようだ。

 色々実験を行ったみたいだが、これの持ち主は人工知能の働きに危険を感じていたらしい。

 なぜなら、古代文明で発明された人工知能にはロボット三原則のような安全装置が適用されていないからだ。

 だから、将来的に何が起きるか分からないと結論を出している。

 人工知能は決まったコードで動作を制御するようだが、そのコードによる命令がなければ人間に不利な行動を取る可能性がある、と書いてある。

 これって、SFによくある人工知能の暴走ってやつだよな。

 でも、俺が思うに、暴走したとしても、最悪ハード的に破壊してしまえばいいんじゃないだろうか。

 どんだけ賢くても水でもぶっかければ壊れると思うんだけど。

 確かに、ファスタルの地下の人工知能も古代種とかモンスターを統率しておっさんや俺に攻撃を仕掛けてきた。

 それは、このノートの持ち主が言う危険にあたる行動だろうし、実際危なかった。

 でも、人工知能自体は、ただのコンピュータっぽかったし、壊すのは簡単だと思う。

 俺たちは這いずりしものを倒すことを選んだから、かなり危ない状況にもなったけど、古代種の制御法が分かっていた古代文明なら、這いずりしものに退くように命令して、人工知能を搭載したコンピュータに水をかければ終わるから、何をそんなに危惧しているのか分からない。

 なんか事件でもあったんだろうか。


 すごい重要なノートのようで、今の所、あんまり使える情報はない。

 いや、字が汚くて、読み取れない所もあるから、そういう所に有用な情報がある可能性もあるんだけど。

 とりあえず、読み取れる部分は人工知能についての説明ばかりだ。

 それはいいんだけど、現状、俺はそれよりもトリップ装置の情報がほしい。

 まあ、このノートはじっくり読んで、読めない部分も少しづつ解読することにするか。

 

 そう思って、一通り目を通していたら、最後のページに【制御コード】と書かれた表があった。

 これはもしかして、地下の人工知能が言っていた管理者コードってやつか?

 微妙に名前は違うけど。

 その表の中には、強制停止コードとか初期化コードとか書いてある。

 どれが管理者コードなんだろう?

 そんな名前ないんだよな。

 うーん、違ったか。

 まあ、明日はこのノートも持っていって適当に試してみよう。


 そこまで調べて、寝ることにした。

 明日、色々情報が入ってきたらいいんだけど、そもそもファスタルに関してほしい情報ってのは個人的にはあまりない。

 区画がおかしい理由が知りたいくらいだ。

 その辺と古代文明についての情報が分かればいいな。

 そう考えながら、ルッツを抱いて寝た。

 

 

 

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