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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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異世界生活16日目 最初のAI

 「うーん。

  朝か」


 伸びをしながら目覚める。

 昨日は変な夢を見たけど、今日は大丈夫だった。

 良かった、毎日変な夢でうなされるのは勘弁だからな。

 

 今日も体調はばっちりだ。

 時間もいつも通り。

 日課をこなすことにしよう。


◇


 日課の朝練から朝食まで済ませた後、研究所を出ることにした。

 おっさんとは食堂で会ったから、既に合流している。

 まあ、朝練も一緒にしたんだけど。

 すっかり仲良くなってしまったものだ。

 いや、めちゃくちゃ色々助けてもらってるから、ありがたいけど。


 玄関に着くと、アルクさんが待っているのが見えた。

 結構な荷物を抱えている。


「ずいぶん大荷物ですね。

 何が入ってるんですか?」


『はい、昨日聞いたところでは、見つかったエレクター装置は壊れている部分があるそうですからね。

 測定装置と修理道具と適当な部品を持ってきました、ええ。

 簡単な破損なら直せると思います、はい』


『それにしたって、お前にその荷物はでかすぎるだろう。

 仕方ないな、貸せ』


 おっさんがアルクさんの荷物を持ってあげている。

 さすが頼れる統括だな。


『申し訳ありません、はい。

 自分でも持ってきすぎたとは思いましたけど、ええ。

 やはり必要なものですから、はい』


 アルクさんも自覚はしてたみたいだけど、反省はしてなさそうだ。

 まあ、地下に入ったら俺が持とう。

 おっさんはモンスターとの戦闘をしてもらわないといけないかもしれないし。

 今日は既に通ったことのある道で奥まで進むから、マッピングする必要はないし。


『じゃあ、行くぞ』


 おっさんの言葉で研究所を出る。

 地下への階段までは俺が先頭で歩いた。

 俺は裏通りの地理にはかなり強くなったから、知っている場所なら地図を見なくても問題はない。

 すぐに階段の場所に辿り着いた。


『じゃあ、ここからは俺が先頭を歩く。

 モンスターがいるかもしれないから、警戒しておけ』


 これは主にアルクさんに向けられた言葉だ。


『わ、分かりました、ええ。

 私は邪魔にならないようにしておきます、はい』


 階段を降りる前に俺がアルクさんの荷物を受け取った。

 アルクさんに申し訳なさそうな顔をされたが、色々お世話になっているので、全く問題ない。

 そこから、おっさん、アルクさん、俺の順に進む。

 ルッツはおっさんの前を歩いている。

 人工知能がある部屋までは、ある程度距離がある。

 別に急いでいるわけじゃないので、ゆっくり進むことにしている。

 道中はプロッタもどきの話をしていた。

 最初に、昨日俺が気づいたことを話した。

 アルクさんは昨日帰ってから、調べてくれていたみたいで、俺が気づいたことは既に分かっていたようだった。

 

『おっしゃる通り、マナで動かすことができるようなのですが、その制御はかなり難しいようです、ええ。

 私の知り合いは動かすことはできませんでした、はい』


 まあ、サラですら、難しいって言ってたからな。

 相当慣れないと思い通りに動かすことはできないだろうな。


『あと、あの穴なんですけど、調べた限りではマナウェポンに似た構造になっていると思われます、はい』


 お?おお?

 マナウェポンと同じ?

 ってことは


「つまり?」


『つまり、うまく制御すれば、マナウェポンのように刃状にしたり、弾を飛ばすことが可能になると思われます、はい』


 やったぞ。

 やっぱり、ファ○ネルだったんだな。

 これは、使えるようになるのが非常に楽しみだ。

 それにしても、アルクさんはマナウェポンのことを知ってるんだな。

 というか、エレクターを使う装置のことはなんでも知ってそうだ。


『ただし、それにはかなり膨大なエレクターが必要になりますので、エレクターの補給を十分にしないと、すぐにエレクター切れになると思われます、はい』


 そりゃそうだよな。


「それはマナウェポンも同じですよね?」


『ええ、ですが、マナウェポンにはそれ自体にジェネレータ機能もついていますので、常に自動でエレクターを補給しています、はい。

 プロッタもどきにはジェネレータの機能はありませんので、使っていない時にはエレクターの補給をしておいた方がいいと思います、ええ。

 それと、昨日調べたところでは、マナウェポンよりもエレクターを保持できる量自体が小さいようなので、マナウェポンほどの継続戦闘能力はありません、はい』


 まあ、それは仕方ないだろうな。

 小さいし。

 マナウェポンも小さいけど、あれはなんか伝説の武器的な感じがするし、相当高性能なんだろう。

 プロッタもどきもそれに近い性能があるんだから、十分だな。

 問題は性能じゃなくて、ちゃんと使えるようになるかどうかだろう。

 俺次第ってことだな。


◇


 しばらく進んで、這いずりしものがいた空間まで来た。

 モンスターには出会わなかった。

 もしかしたらだけど、モンスターを統率しているのはあの人工知能って言ってたから、おっさんに雑魚を差し向けても無駄だと判断して、モンスターに俺たちを避けさせてるのかもしれない。

 

 這いずりしものの死骸の周りには、古代種研究会のメンバーと思しき人たちが何人かいた。

 早いな。

 みんな精力的に動いているようだ。

 まあ、こんな完全な形の古代種のサンプルなんて、今までなかっただろうからな。

 その中から、カトーさんを見つけて挨拶しておいた。

 ルッツのことを聞いてもよかったが、とても忙しそうにしていたし、俺も奥の部屋の人工知能の調査の方が優先度が高いと思っていたから、次の機会にすることにした。


 おっさんを先頭に奥の部屋に進む。

 その部屋に入ると、昨日と同じように装置の駆動音が聞こえていた。

 隣にいるアルクさんが異常に興奮しているのが分かる。

 

『発音装置起動、完了。

 音声処理開始。

 解析、完了』


 前に来たときと同じ音声が聞こえた。


「前と同じですね」


『ああ、情報収集はお前に任せる』


「分かりました。

 えーと、聞こえますか?」


『はい。

 音声処理は正常に動作しています』


「先日故障箇所があると聞きましたけど、今日は技術者を連れてきたので、調査していいですか?」


『メンテナンス行為に問題はありません。 

 自己診断におけるエラー箇所は3番ブロックになります』


 管理者コードとか言われるかと思ったけど、大丈夫だった。

 メンテナンスの時とか、認証が必要だと思うんだけど。

 コードが必要な基準が良く分からないな。

 別にどうでもいいけど。

 複数ある筐体にはそれぞれ番号が振ってあるから、その3番てことだろうな。


「では、アルクさん、お願いしていいですか?」


『ええ、はい、お任せください』


 アルクさんはかなり嬉しそうな顔をして、3番の筐体に近づいていく。

 故障箇所の調査はアルクさんに任せよう。


「いくつか聞きたいことがあります」

『どうぞ』

「あなたがファスタルの都市計画を管理しているんですね?」

『はい』

「今の区画は整備されていると思えませんけど、どういう状況なんでしょう?」

『現在の区画状況は機密事項となります。

 開示には管理者コードが必要となります』


 うん、前と同じだ。

 俺はノートを取り出して、制御コードと書かれたページの言葉をいくつか言ってみた。

 だが、


『機密事項の開示には管理者コードが必要となります』


 と言われるだけだった。

 うーん、このノートの情報ではないのか。

 まあ、これはフォーサル遺跡で見つかったものだしな。

 仕方ない、質問を変えてみるか。


「あなたは、最初に作られたAIで間違いありませんか?」

『はい』

「役割は都市開発の最適化で間違いありませんか?」

『はい』

「あなたの管理するのはこの都市だけですか?」

『現在はこの都市のみとなります』

「今の都市の状況は当初の最適化計画から外れていますね?」

『はい』

「なぜですか?」

『現在の区画状況は機密事項となります』


 ふむ、機密事項の判断基準は良く分からないけど、今のごちゃごちゃな状況は最適化の結果ではなく、何かの理由でこうなっている、というのは分かったな。

 

「あなたの後にも管理AIは作られたんですよね?」

『はい』

「それは何台あるんですか?」

『全部で管理用AIは4台です』

「今も全て稼動しているんでしょうか?」

『機密事項となります』

「管理用AIの役割は全て都市開発ですか?」

『いえ、その役割は様々です』

「どんな役割があるんでしょうか?」

『機密事項となります』

「前に来たときに紛争で都市が壊滅したと言っていましたが、それは文明の崩壊を引き起こした紛争のことですか?」

『はい』

「何と何が争った紛争なんですか?」

『人間同士が争いました』

「なぜですか?」

『分かりません』

 

 うん?機密事項ではなく、分からないと言われた。

 管理用AIにも分からないことがあるんだな。

 他には何か聞くことあったっけな。


「この辺りの生物の管理はあなたがしているんですよね?」

『はい』

「どうやってですか?」

『機密事項となります』

「その生物には人間も含まれますか?」

『機密事項となります』


 なんとなく、違うなら違うと言いそうな気がする。

 ということはこのAIは人間にも干渉している可能性がある。

 方法は分からない。

 俺が気になっているのは、このAIがファスタルの管理をしているとして、どうやってそれをやっているのかだ。

 直接聞いても、機密事項と言われるし。

 だが、どう考えても、こいつ自身が動くことはできない。

 となると、こいつの手足となるものが必要だ。

 そして、現在のファスタルで都市開発をしているのは人間だけだ。

 機械が街を作ったり、ということはない。

 ならば、コイツが何らかの方法で人間に指示を出していることになる。

 ……やっぱり管理者コードとやらがほしいな。

 どこかにないだろうか。

 レオンハルトさん辺りに聞いてもいいけど、人工知能すら知らなかったから、心当たりはないだろうなあ。

 まあ、機会があれば探すことにするか。


「地下のモンスターを倒してしまってもいいですか?」

『外敵からこの地下を守るために必要なので、倒されない方が都合がいいです』


 言い回しが変だけど、倒すなってことだな。


「ですが、襲われたら倒さざるを得ませんよ」

『あなたたちと這いずりしものの調査に来る人間に関しては、襲わせないようにしましょう。

 あなた方が積極的に倒すことは自重して頂きたい』

「分かりました」


 まあ、襲って来ないものをこっちから倒しに行く意味はないな。

 今ので、やっぱりこのAIが警戒している外敵がいるのは分かった。

 そして、人間に対してそれほど敵意を抱いてなさそうだということも分かった。

 つまり、このAIに関しては、暴走はしていなさそうだ。

 まあ、都市開発が目的の割に、ファスタルがめちゃくちゃだから、そういう意味ではちゃんと動いてない気もするけど、理由はあるみたいだし。

 放置しておいても人間が滅ぼされる、とかはないだろう。


「この地下に開かない扉がありますが、あなたと関係ありますか?」

『はい。私が管理しています』

「開けてもらっていいですか?」

『管理者コードが必要になります』


 嫌になるな、全く。


「とりあえず、俺が聞きたいのはこれくらいですけど、他に何かありましたっけ?」


 何か色々聞くこともある気がするけど、機密機密言われて完全に萎えている。


『俺からはないな。

 これからどうする?

 もう少し地下を調べてもいいが』


「そうですね。

 アルクさんの調査も時間がかかるでしょうから、俺たちはその間に地下のマッピングを進めましょうか。

 あ、忘れてた」


 再度AIに対して、尋ねる。


「この地下にある罠もあなたが管理しているんですか?」

『はい』

「できたら止められませんか?

 そのままにしておいたら、俺たちが破壊しますよ」


 これは別に嘘をついているわけじゃない。

 多分、少々の罠だったらおっさんには効かないと思う。

 基本的にはおっさんが先導するから、俺が罠にかかる可能性は低い。

 だから、折角外敵からの防衛手段として設置している罠でも、特に敵意のない俺たちに潰されるのはこのAIにとっても不利益なことだと思ったのだ。

 もちろん、罠が怖いってのもあるが。


『分かりました。

 私が解除できるものに関しては、あなた方には反応しないようにしましょう。

 ただし、無理に扉を開けようとする、地下を破壊しようとするなどの行動を取った場合には、防衛行動を取ります』


「肝に銘じておきます」


 全然情報は得られないが、思ったより融通の利くAIだと思う。

 もっと何でも機械的に処理されるかと思ったが、こちらの要望も聞いてくれるらしい。

 自我とかあるんだろうか。

 話した感じでは微妙な所だよな。

 俺の薄っぺらいSF知識では、AIに自我が芽生えたせいで暴走するような作品が多かったと思うから、このAIも、もっとはっきりした自我があったら暴走するんだろうか。

 そうなったら破壊するけどな。

 現状では、破壊が難しいとは思えないし。


「アルクさん、俺たちはちょっとこの周辺のマッピングをしてきますけど、修理はお任せしてもいいですか?」


『はい。

 私はここでもう少し作業します、はい』


「何か分かりそうですか?」


『ええ、経年劣化で破損してそうな部品をいくつか見つけました、はい。

 今日持ってきた荷物の中に部品もありますから、ええ、その交換はすぐにできます。

 ですが、それ以外の破損個所はまだ分かりません、はい』


 流石だな。

 もう破損個所をいくつか特定しているらしい。

 俺の経験的には、電解コンデンサとかフォトカプラとかが怪しい気がするけど、コンデンサはともかく、フォトカプラなんてこの世界にあるかどうか分からない。

 やっぱりアルクさんに任せるしかないだろうな。


 それから、俺とおっさんは周辺のマッピングを行った。

 AIの言った通り、モンスターにも罠にも引っかからなかったから、スムーズに進んだ。

 その過程で、ドアを2つほど見つけた。

 一応、開くか確認したが、やっぱり鍵がかかっているようだった。

 あまり無理に開けようとして、AIと敵対しても仕方ないので、放置することにした。

 昼に休憩を兼ねて、アルクさんの様子を見に行ったけど、集中して作業していたから、邪魔しないようにすぐに立ち去った。


◇


 それから、夕方近くになったので、再度AIのある部屋に戻ると、アルクさんはまだ作業をしていた。


「どうですか?

 直りそうですか?」


『ええ、とりあえず、簡単な部品交換はこれで終了します。

 それ以外の複雑な部分は、ここではちょっとどうしようもありません、はい』


 やっぱり仕事が早い。

 お、最後の部品交換が終了したみたいだ。

 すごいよな、電源を落とさずに部品交換するってのはなかなかに危険だ。

 感電の危険があるし、場合によっては、さらに他の部品の破損を引き起こしかねない。

 俺なら、通電中の装置には手を触れない。

 その辺は、日本の常識とこの世界の常識が違うのかもしれないが。


「現在の稼働状況はどうですか?」


『稼働領域をチェックします。

 現在の稼働状況は正常領域85%、エラー領域5%、未使用領域10%です』


 おお、10%も故障が直っている。

 あとの5%は今はどうしようもないだろう。


「さすがですね。

 一日でかなり修理できたみたいですよ」


『いえ、私が直したのは単純な経年劣化の部分だけです、はい。

 かなり複雑な回路で色々参考になりました、ええ。

 流石古代の装置です、はい』


 アルクさんは満足そうだ。

 自分の仕事にも満足だろうけど、それ以上に、新しいエレクター機器に触れられたのが嬉しいらしい。

 まあ、俺たちがこの装置を直す意味はあまりないかもしれないけど、変に壊れたら暴走の原因とかになりそうだし、もしかしたら、ファスタルがめちゃくちゃなのも故障のせいかもしれない。

 正常動作させといた方がいいだろう。


「とりあえず、今日は帰りましょうか?」


『そうだな。

 そろそろいい時間だ』


 俺もおっさんも危険がないのであれば、特に地下にこだわりがあるわけではない。

 ただ、危険がなさそうなことを関係各所に伝える必要があるだろう。

 みんな、そのことを心配しているのだし。

 古代種研究会はそんなことに興味なさそうだったけど。

 あとは、どこかでAIの管理者コードを手に入れたいな。

 

 帰り道も特に問題はなかった。

 研究所に着く前にアルクさんとは別れた。

 別れるときに、また連絡すると言われた。

 プロッタもどきの調査結果を報告するのと、場合によっては、またAIの所に連れて行ってほしい、とのことだったので、承諾しておいた。

 おっさんと二人で食堂に行くと、サラを見つけた。


「サラ、今夕食ですか?」


『あ、ユウト。

 おかえりなさい』


 うん?

 なんか元気ないな。


「どうしました?

 体調が悪いんですか?」


『いえ、なんでもありません』


 いや、なんでもあるだろ。

 こんなに元気のないサラは初めて見る。

 でも、こういう時って、あんまり突っ込まない方がいいよな。


「そうですか。

 俺で良かったら力になりますから、何でも言ってくださいね」


『ありがとうございます』


 その後も、サラは終始元気がなかった。

 何か考え込んでいるようで、話しかけてほしくなさそうだったので、そっとすることにして、食事中はおっさんと話していた。

 おっさんとは主に明日以降の行動について確認した。

 一応、地下の探索の目的はある程度達したわけだけど、地下自体のマッピングは全然終わっていない。

 モンスターが襲って来ないであろう状態だから、俺一人でも大丈夫なんだけど、念のため、明日もう一度、一緒に地下のマッピングを行って様子をみようということになった。


 食後、サラと一緒に家に帰ったが、サラはそのまま自室にこもってしまった。

 いつもなら一緒にマナの練習をするのに、それもしなかった。

 もしかして、俺嫌われた?

 いや、そんなことはないはずだ。

 何かあったんだろう。

 一度、ユラさんにでも聞いてみようかな。

 そんなことを考えながら、日課をこなした後、寝ることにした。 

 





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