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チートなし異世界生活記  作者: 半田付け職人
第5章 異世界生活5日目以降 ファスタル裏通りのマッピング~地下遺跡
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9日目終了 マッピング~改造完了~夜

 一度家に帰ってルッツを連れてから、街に出た。


 明日はおっさんと地下探索に行く予定だから、今日は裏通りのマッピングをできるだけ進めておきたい。

 昨日、レオンハルトさんから言われたので、一応すでにマッピングを完了しているエリアも確認しておいた。

 さすがにまだ俺が作業し始めて数日しか経っていないし、新たに道ができている、というようなことはなかった。

 かなり慣れてきたから、マッピング作業自体はだいぶ効率よく進むようになっている。

 でも、慣れたと言っても俺の移動速度が速くなるわけではないので、結局地道に計測していくと、1日に1エリアとちょっとくらいが俺の作業スピードの限界みたいだ。

 それでも日給10万ちょっとなわけで、稼ぎとしては十分だと思う。

 マッピングをしていて、改めて思うのが、ファスタルがかなり広いということだ。

 まあ、ファスタルという国名になるくらいの都市らしいから、大きいのは当たり前なんだろうけど。

 この都市の整備をするとなると、かなり大事業になると思う。

 その事業の責任者ということはレオンハルトさんは年齢の割にかなり重要な仕事を任されていると改めて感じた。

 俺、こっちの世界に来てから、偉い人と縁があるな。

 ユラさんとかおっさんとか、レオンハルトさんとか。

 サラだって王女様だし。

 やっぱ、異世界トリップってのはそういうことに縁があるもんなんかね。

 でも、俺のイメージしてた王族ってもっと貴族然としてる感じだったんだよな。

 ユラさんは偉い人って言うより支店長みたいな感じだし、おっさんは部長って感じなんだよな。

 サラはかわいい同僚って感じだし。

 みんな、偉い人感が薄い。

 いやまあ、役職的な偉さは感じるんだけど、貴族的な偉さは感じない。

 その辺、やっぱり想像してたファンタジーとは違うんだよな。

 この世界では国に王がいるっぽいんだけど、あんまり王国って感じではない。

 雑貨屋店主の話からすると国自体も規模が小さいからそれも影響しているのかもしれないが。

 サラからこの国について教えてもらった時に革命を起こした人が現在の国を治める人たちだと聞いた。

 どうも今までに出会った偉い人たちとか、教えてもらった歴史を考えるに、歴史ある貴族の出身とかじゃなくて、今の文明を作るときに周辺に対して影響力を持っていたか、武力を持っていた人たちが現在の王族だということなんだろうな。

 まあ、歴史ある貴族と周辺に対して影響力持っている人は一致するかもしれないから、俺の勝手な想像なんだけど。


 そんな風にとりとめもないことを考えながら、黙々とマッピングを続けた。


 日が落ち始めそうな所で、ちょうどキリもよかったので、今日の作業は終わることにした。

 

「ルッツ、帰ろう」


 ルッツと研究所に帰った。

 いつもは帰ってすぐ食堂に行くのだが、今日は中庭でエレクター技師からケースをもらえることになっている。


 中庭に行くと、隅の方でエレクター技師がまだ作業しているのが見えた。

 俺は近づいて、声をかける。


「お疲れ様です。

 お願いしていたもの、どうでした?」


『はい、はい。

 ええ、ああ調査員の。

 できてますよ、はい。

 これです。

 この線に繋ぐとエレクターが供給されるようにしました。

 はい、確認してみてください』


「ありがとうございます。

 試してみます」


 日は落ちかけているが、なんとかジェネレータで発電ができる程度だろう。

 技師に言われた線をスマホに繋ぐ。

 線はかなり手作り感にあふれていたが、それなりにしっかり作られていた。 

 これなら、すぐに断線して使い物にならなくなる、ということもなさそうだ。

 コネクタ部分も金属の細い管と樹脂を使ってうまく作ってくれたみたいだ。

 器用だな。

 思ってたより相当腕がいいような気がする。

 お、スマホのLEDが点いた。

 充電できている。

 やった、これで電池切れを心配する必要がなくなるぞ。

 まあ、スマホが役に立つ機会はそう多くないだろうが。


「ちゃんと動いてます。

 ありがとうございます。

 すごいですね、ほんとに1日で作ってもらえるとは」


『いえ、ただケースの中の同程度のエレクトの点から線を出して、繋がるようにしただけですから、はい』


「そういえば、お名前を伺っていなかったと思うのですが、お聞きしてもよろしいですか?」


『ええ、はい、私はエレクター技師のアルクです。

 一応、ファスタルに雇われています、はい』


「アルクさんですね。

 良かったら、今後もエレクターについて何か分からないことがあったらお聞きしたいんですが」


『はい?

 私にですか?

 ええ、構いませんが。

 私は本当にエレクターのことしか分かりませんよ』


「はい、ぜひお願いします。

 この研究所にはよく来られるんですか?」


『ええ、はい、月に何度かは来ますね。

 ここは設備も整ってますからね、はい』


「じゃあ、聞きたいことがあったら、ここでお見かけした時に声を掛けさせて頂きます。

 これからもよろしくお願いします。

 ホントにありがとうございました」


 そうアルクさんにお礼を言って中庭を後にした。


「ルッツ、待たせたな。

 晩飯食いに行こう」


『わん』


 2人で食堂に来た。

 食堂に入ってすぐにサラを見つけた。

 ちょうど定食を注文している所だった。


「サラ、今から夕食ですか?」


『ええ、ユウトもですか?』


「はい、タイミング良かったですね。

 じゃあ、一緒に食べましょう」


 二人とルッツで夕食を食べ始めた。


『そのケースはどうかしたんですか?』


 俺はプロッタを入れるケースを持っていたので、それを目にしたサラに聞かれた。


「ああ、ちょっとエレクター技師の方に改造してもらって、受け取ってきたところなんですよ」


『エレクター技師?

 アルクさんですか?

 お知り合いなんですか?』


「はい、お知り合い、というか、今日お知り合いになったんですけどね」


『へえ。

 あの人はとても優秀なエレクター技師として有名な人なんですよ。

 ただ、ちょっと変わってるというか、とっつきにくい所があって、あんまり人と関わらないそうです』


「そうなんですか?

 まあ、話し方が独特な人でしたけど親切な人でしたから、これからも色々教えてもらおうと思ってます」


 まあ、国に雇われてるって言ってたから、優秀なのは確かだろうな。

 俺も腕がいいと思ったし。

 変わってるってのもその通りかもな。

 でも、もっと変な人なんて大学の研究室にいっぱいいたしな。


「エレクター技師ってのは珍しい職業なんですか?

 これだけエレクターの使用が普及してるんだから、たくさんいるのかと思ってたんですけど」


『そうですね。

 自称エレクター技師という人はたくさんいるみたいですよ。

 ですけど、国が認める様な人はほんとに少ないと思います』

 

 なるほど。

 じゃあ、昨日俺がレオンハルトさんに報酬の増額じゃなくてアルクさんを紹介してもらうように頼んだのは正解だったな。

 何も考えてなかったけど、ラッキーだった。


『ところで、どういう改造をしてもらったんですか?』


「ああ、俺が持ってる機械のエレクター補給ができるようにしてもらったんですよ」


『え?

 機械ですか?

 あ、そういえば、地下に行くときに持ってたあれですか?』


 あ、いらんこと言ってしまったかも。

 説明しづらいな。


「ええ、まあそうですね。

 サラに説明するまでもない、特になんともない機械ですよ」


『何か隠そうとしてません?』


「う、いえ、何も隠してませんよ」


『別に言えないことなら言えないでいいですけどね』


 あ、サラがちょっと拗ねてしまった。


「すみません。

 今度ゆっくりお話ししますよ。

 ホントに大したものではないんです」


『ううん。

 まあ、しょうがないですね。

 ユウトがそう言うなら、教えてくれる時まで待ってます』


 渋々ながら、あきらめてくれるようだ。

 別にスマホ自体は見せてもいいんだけど、なんで俺がこんなものを持っているのか、とかを説明するのがちょっと大変なんだよな。

 下手に異世界トリップなんて言っちゃうと、トライファークの話を出さざるをえなくなりかねないし。


 俺とサラが変な喧嘩みたいなことをしてると、


『おう。

 痴話喧嘩か?』


 おっさんが話しかけてきた。


「ああ、統括。

 今日は遅いですね」


 ちょうどいいので、スマホの話はなかったことにさせてもらう。


『ああ、調査完了の報告が長引いてな』


「調査完了?

 じゃあ、今日まで受けてた依頼は?」


『おう、予定通り今日で終了した。

 明日から、地下の探索だな。

 まあ、細かい打ち合わせは明日の朝練でするとしてだ。

 お前の方の準備はできてるのか?』


「ええ、まあ大体は。

 というか、そんなに準備することもないですし」


『まあ、そりゃそうだな』


「あ、一つ統括に教えてほしいことが。

 ナイフの扱い方なんですけど」


『ナイフ?

 ああ、お前は武器の扱いは素人って言ってたな。

 俺もあんまり分からんぞ。

 ただな、今回の探索に限って言えばな、モンスターが現れても基本的に俺がどうにかするから、お前はナイフは身を守るために使え。

 自分からどんどん前に出るようなことはするな。

 その辺は明日の朝にもう少し相談するつもりだ』


「そうですね。

 じゃあ、具体的な探索の話は明日にしましょう。

 サラ、そんなに心配そうな顔しないで。

 何か危険があったら、統括に押し付けて逃げますから」


 サラが不安そうな顔でこちらを見ているので、フォローしておく。


『おら、本人目の前にして何てこと言ってやがる。

 いや、それでいいんだがな。

 直に言われると、良くない気がするだろうが』


「冗談ですよ。

 統括だけ置いていったりしませんて」


『いや、危険になったら俺だけ置いてけ。

 俺一人ならなんとかなるが、おまえがいたらどうなるか分からんこともある』


 うわ、足手まといって言われた。

 事実なんだろうけど。


「まあ、そんなに危険になるところまで深入りするつもりはありませんけどね」


『そうだな。

 だが、何があっても対処できるように心構えだけはしとけ』


 なんかフラグ立ててるよな、この人。

 あんまり言ったら本当に危険な状況になりそうだ。

 ここで俺が、サラ、俺が帰ってきたら結婚しよう、とか言ったら決定的だな。

 言わないけど。


「まあ、その辺も含めて明日相談ですね」


 今日はもうこの話はやめとこう。

 サラは本当にすごく心配してくれているようなので、話を続けるといたずらに不安を煽ってしまいそうだ。

 その後は、他愛のない話をして夕食を終えた。



 夕食後、家に帰ってきた。


「今日もいつも通り、一緒に練習しますか?」


『はい、お願いします』


 俺はマッピングデータをまとめた後、サラと一緒にマナを使う練習をした。

 サラの技術はどんどん向上している気がする。

 これ、最終的にどうなるんだろう。

 一人○レクトリカルパレードとかできそうだ。

 ハハッ。


 実は俺自身もちょっとずつ上達してはいる。

 でも、横にサラがいるからどうしても自分の下手さが目立って上達している気がしない。

 もっとがんばらないとな。


 ある程度練習した後、回路の勉強をした。

 この流れも日課になりつつある。

 サラは座学の方の理解も早いから教えるのが楽しいな。

 俺の復習にもなっているし。

 

 それなりに勉強して、キリのいい所で切り上げる。


「じゃあサラ、ここまでにしましょうか。」


『はい。

 今日もありがとうございました。』


「こちらこそ、ありがとうございました。」


『じゃあ、寝ますね。

 おやすみなさい。』


「おやすみなさい。」


 明日はいよいよ地下探索だ。

 今日はもう余計なことはせずに寝ることにした。


「ルッツ、寝よう。」


 今日もルッツを抱いてベッドに入る。

 明日のことを考えると、ちょっと緊張するけど、無理やりにでも寝よう。

 寝不足で判断が鈍る、なんて最悪だからな。

 うん、こういう時にルッツを抱き枕にするのは最高だな。

 癒される。

 ルッツの柔らかい毛を撫でているうちに眠りにつくことができた。


 

5/13 誤字修正 、、 → 、

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