兄
読みに来てくださった皆さん、ありがとうございます。
最後まで終われるように頑張りたいと思います。
高校生の稚拙な文章ですが、どうか寛大な心で読んでくださると嬉しいです。
ちなみに初投稿です(^.^)
ドンっ。ドンっ。ドドンっ。
私は自分の部屋の窓を開けて夜空を見上げた。
藍色の空に咲く綺麗な花達はほんの一瞬しか私たちにその美しさを見せてくれない。
でもみんなこの一瞬の美しさに魅了される。首が痛くなるまで空を見上げ、綺麗だ綺麗だと繰り返す。
私は窓を開けたままにして床に大の字で寝そべった。浴衣の帯が背中にあたって痛かったが、気にせず、天井を見上げる。
窓から入ってきた夜風が私の頬をなでた。ひやっとした。頬が濡れてる。。。
1年でこの日だけ。この日だけはこうやって花火大会に行くわけでもないのに浴衣を着てここに寝っ転がって涙を流すことに決めている。
部屋のドアが開いた。
「千奈美!浴衣のまま何してるの!」
11年前の今日に聴いた、ちょっとハスキーでどこか安心するような声が聴こえた気がした。
でも、ドアの先にいたのはその声の持ち主ではなかった。
「千奈美?何やってんだ?おまえ今日花火大会行くのか?」
顔だけそちらへ向ける。
だるっだるのジーパンにアイロンのかかっていない白シャツ、ヒゲがちょっと生えた無駄に顔は良い男がたっていた。
「お兄ちゃん……」
涙をふいて、笑顔を作って起き上がった。
兄はわざとなのだろうか?私の顔ではなく窓の外を見ていた。
「あ、行かないよ。友美と行く予定だったんだけど、急に無理になったみたい。」
嘘だ。そんな約束してないし、だいたい隣に住んでいた友美は大学を出ると同時に海外へ行ってしまった。
兄も知っているはずだ。
「そっか。じゃあ俺と行くか?」
なのに兄は納得したような返事をして、小馬鹿にしたような半笑いでそう聞いてきた。
「なにそれ。冗談?嫌だよ。ここから見えるしいいの。ってかお兄ちゃんいつ帰ってきたの?」
「ついさっきだよ。ちゃんと俺の部屋掃除しておいてくれた?」
「しておいたよ。お兄ちゃんこそ明日の服ちゃんと持ってきたの?」
「うん。もちろん。」
そこで会話は終わる。
しばらく2人で座って窓から空に舞い上がる花たちをみていた。
兄がこの家に来るのは毎年2回だけ。
お正月とお盆。
お盆は…母の命日でもある。
突然兄が立ち上がり、ニカッと笑った。
「よし!千奈美。やっぱ花火行こうっ」
兄の整った顔がくしゃっと笑うのに効果音がつくように、隣の部屋でガタッと物音がした。
「ダメだよ。ちょうどお父さん起きちゃったし。」
兄と行っても良かったけれど、なんだか照れ臭くて「うん」って言えなかった。
「あ、おまえ今日親父おいて友美ちゃんと花火行くつもりだったのか?」
妹の私がいうのもなんだが、兄はかなりの美形だ。非の打ち所がないくらい端正な顔つきをしているから普通にしているとちょっと怖く見える。けれど、ほんの少し顔を緩めればすごくかわいい笑顔がのぞく。
今日もそんな笑顔をずっと浮かべていたのに、急に怖い顔になった。
「うん。お兄ちゃんくるから2人っきりになってもらおうと思ってた。」
これも嘘。
なんで兄にはこんなに嘘をついてしまうのだろう。
でも兄はまた笑顔でそっかと言う。
「父親と息子だけで語り合うってか?笑それも必要だな〜。でも帰ってきてからでよくね?」
「どこから?」
「花火大会?」
「そんなに行きたいの?」
「ってか…そろそろ行けるようにしたほうがいいだろ?もう11年経ったんだ。1つずつ克服していこうぜ。」
兄の母ゆずりの大きな目が私の顔を覗き込んできた。
兄のこの目が、この優しい目が大好きだ。なんだか懐かしくて心がくすぐったくて、でもすごく心が痛くなる。
そうか。だから兄にはあんなに嘘ばかりついてしまうのか。
兄はまるで……母そのものだから。




