第61話 水龍
「で、おれたちはそのポロシェン湖とやらに向かえばいいんだな」
「ブレジネフ、モビ」
「ペレス湖よ。何を聞いていたの!」
カグヤが怒った。
「いや、冗談だ。わかった。サハギンを退治してこよう」
「成功すれば冒険者ランクがCCBに昇級します」
「CCB?FFの次はそうなのか」
「はい。あ、男性はCCBだけど、女性はCCガールズです。BはボーイのBなので」
その設定いるの?と思ったが、話が脱線するので訊くのは止めた。
俺たちはオータの街を出発し、問題なくペレス湖に到着する。
「ここがペレス湖か。綺麗な場所だな」
「シジミが名産なのじゃ」
「へえ。そいつは是非とも食ってみたいな」
「アルミを一杯含有しているといいモビ」
「そんな公害の産物みたいなの食えるか!」
「亜鉛は含有しているモビ!」
「まあ、そりゃそうなんだが」
「来たわよ!」
サクラが敵の来襲を教えてくれる。
探すのが面倒なので、敢えて大声で会話して、ここにいるのを知らせたわけだ。
案の定。
「うろこで覆われた体と、トライデントに鉄の盾。こいつらがサハギンか」
みれは20体ほどが俺たちを囲むように出現した。
「貴様ら、死ね!」
いきなり襲ってくる。
話し合いは無理だ。
【エロージョン】
スキルを使い、トライデントと鉄の盾を使い物にならなくする。
それを確認したサクラが飛び出す。
剣を抜いて一閃。
トライデント、サハギン、盾が真っ二つに斬れた。
「ぎゃあ」
「なっ!」
絶対の自信を持っていた鉄のカーテンこと、鉄の盾が斬られて相手は動揺した。
「カイ、こいつら強いぞ!」
「わかった、俺がやる」
カイと呼ばれたサハギンが前に出てくる。
他のサハギンよりもひと回り大きい。あいつがボスっぽいな。
「このまま私にやらせてもらえる?」
サクラが振り向いた。
「適役だよ」
サクラは嬉しそうな顔をして前を向き、相手との距離をつめた。
「人間風情が!」
サクラの速度に反応し、拳を前に突き出すサハギン。
あの速度に反応できるあたり、かなり強い。
が――
「ふん!」
気合一閃、サクラの斬撃は血の華を咲かせる。
「ぐはっ。だめだ、お前ら水龍様を呼んで来い」
その指示でサハギンたちは引き上げた。
「水龍?そんなものがいるのか?」
「いるモビ」
「くっくっく。人間ども、水龍様が来れば貴様らなど」
斬られたくせに、勝ち誇った表情がムカつく。
だから、とどめを刺さずに、水龍様とやらが目の前で俺たちに倒されるのを見せて、絶望を味わってもらうことにした。
待つこと数分。地響きが近づいてくる。
来たのはフタバスズキリュウみたいな大きく、首の長い龍だった。
「水龍様!」
カイの顔がパッと明るくなる。
「そこは、おめえの運をわしにくれや、おやじにくれやって言うところなのじゃ。血を出して倒れているカイなのじゃから」
「甲斐正三モビ」
「どこの異世界のサハギンが哭きの竜を読んでいると思っているんだ」
このアルミラージとヴァンパイアの知識が異常なんだぞ。
「貴様らが、この湖を荒らす冒険者か?」
水龍が訊いてくる。
「俺はおたくらが人間に危害を加えていると聞いているんだがな」
「危害とは誤解も甚だしい。我らはテーゼに従い、戦っているだけ」
「残酷な32年のテーゼモビ」
「少年がプチブル的日和見主義になって、自己批判を強要されるのじゃ」
「話が進まないから、黙ってて!」
アルとヴェロニカを注意した。
事情はなんとなく分かった。
彼らにとってもここは生活する場所。ならば、話し合えばよかったものを、最初から人間と衝突して、双方ともに被害が出たため、和解など出来ない状況に。
「バルタン星人と同じ失敗しているモビ」
「同じかどうかは置いといて、戦うしかないようだな」
「人間風情がこの水龍たる、私と戦うというのか。よかろう、その蛮勇に免じて名を聞こう」
「アルト」
「サクラ」
「デーボじゃ」
「アル、モビ」
「ヴェロニカなのじゃ」
アルミラージとヴァンパイアも人間枠でいいのかわからないが、こちらは全員が名乗った。
「我が名はケイ。さあ、来るがよい!」
その名前を聞いてアルとヴェロニカの顔が崩れる。
「水龍のケイモビ」
「み、水龍。きっと宝箱を持っているのじゃ」
「君ら、これから命を懸けた戦いが始まるっていうのに、エロ同人の話はやめてね」
そんな緊張感のない会話をしていると、水龍が魔法を発動しようとした。
「我の前でそのようなふざけたことを!」
「やくい!不良にまつわるエトセトラ【ラジオ体操】」
「何!?」
周囲に流れるラジオ体操。
その音楽に合わせて水龍やサハギンがラジオ体操を始める。
「不良の選別で呼ばれた客の工場では、決まった時間にラジオ体操が流れる。そうなったら、全員がラジオ体操をしなければならない。俺は丁度守衛で受付をしていたが、守衛と一緒にラジオ体操をしながら、入門に必要な氏名や会社名を記入したんだ。やらないと守衛に注意されるからな!」
来訪者にもラジオ体操を強制するのはなんなんだろうな。
こうして、水龍は体の自由を失った。
あとはみんなで美味しくいただきました。




