再会への別れ
ハルの身体に刺さっている短剣。その短剣は確実に心臓を貫いていた。ハルの身体に抱き付いて泣き叫ぶルキの視界は、悲しみの涙で遮られている。
「こんなの……こんなのってっ!!」
「ルキ。気持ちは察するけどら、いつまでも抱えては駄目ら」
「でも……でもぅっ!!」
《おーい、ルキさん? 悲しんでくれてるところ悪いんだけど》
「シーラ、お願い! もう少しだけ!」
「ん? わっちは何も言ってないら」
「へっ!?」
《おーい! 聞こえるかあ!?》
「誰なの!?」
「わっちにも聞こえたんら! この声は……ハルら?」
「そんなわけ!?」
《いやあ……そのまさかなんだけど》
「えええ!? だって死んで……るわよね?」
《その身体はな。俺が心臓を貫いた時に、災厄の龍の力で幽体離脱したんだよ》
「幽体離脱!?」
「面白いら!」
《いやいや、面白くないから。災厄の龍の悪足掻きなんだとよ。単に殺されるのは勘弁とかで、俺に呪いを掛けたんだ》
「呪い?」
《俺の五感の異常の原因である自分が完全に消滅する代わり、俺を幽体離脱させたんだ。おまけに、災厄の龍の力を渡すときたもんだ》
「ハルは……どうなっちゃうの!?」
《戻る身体は無駄死にだ。俺の姿を認識出来てないだろう? お前やシーラのようにはいかないだろう》
「なにか方法は!?」
《ない。この世界に掛けられた呪いは解いたから魔術は使えない。かといって、また呪いを掛けるのは嫌だし》
「魔術が使えたとしても……幽体離脱したハルをどうにかするなんて無理だわ」
《……災厄の龍が消えた……。うーん、どうするか》
「ハル」
《完全に死んだわけじゃない。俺なりになんとかしてみる》
ハルは、ルキに抱えられた自分の身体を燃やす。身体を貫いた短剣と懐中時計が遺された。
「どうして燃やしたの!?」
《その方がいいだろう。俺は旅の途中ってことだ。まだ可能性があるのなら、俺は実体に戻ることを諦めない》
「言うのは簡単ら。大丈夫なのら?」
《大丈夫じゃない。だから足掻いてみるよ》
「待ってても、信じてもいいのよね?」
《待っててくれるのか? そいつは心強いし、励みになる》
「いい感じら~!」
《ルキ。災厄の龍が言ってたんだけどよ、お前の転移に魔術は関係ないって話だ。俺がこの世界に転生したのは、災厄の龍とこの世界に繋がりがあったかららしい。災厄の龍が転生したのが俺だからな。だから、恐らく転移した先がこの世界なのにも繋がりがあるんじゃないか?》
「繋がり?」
《それからそれから! 召喚されたミントなんだけどよ、魔術が消えたことによって、元の世界に戻ったと思う》
「分かったわ」
《じゃあ行くな? 俺に気を遣って生きるのは駄目だぞ。お前のことを大事にしてくれる奴が現れたら……》
「……現れたら蹴るわ! 先客がいるから!」
《いつまで有効だ?》
「無期限だわ! だから戻ってきて! 信じてるからっ!」
《……行ってくる!》
「いってらっしゃい!」
ハルの姿を目では見えないが、心で見ているルキ。涙を拭って笑顔を見せる。〝さようなら〟ではなく〝いってらっしゃい〟と見送ったルキの意志は固かった。




