収穫
愚痴会へと変わったお見合いを終えてルキが相手の車で送ってもらい帰宅すると、留守番をしていたミントが出迎えた。
「おっかえりー! どうだった? 何か収穫はあったか?」
「何もなかったわけではないわ。話をする前に一息つきたいわね」
「あいよ」
※ ※ ※
普段着へと着替えたルキが座りながらミントに説明する。簡潔に話しているが、ミントに説明するには充分であった。自分なりに話を理解したミントはラジオをつける。軽快な音楽が気分を変えてくれる。
「やっぱそうか。新薬開発の為の被験者として集められたのは、その大多数がスラムの人間」
「研究が始まったのは二十年前みたいだけれど、十年前に戦争が起きてしまい、研究は暫く頓挫した。終戦後、戦争により傷を負ってしまった人達は治療を求めたけど、戦争によって大きくなった貧困の格差の皺寄せにあった。アンオールで言えば、アロポリアのスラム街に追いやられてしまったのよ。傷の手当ては、貴族などの富裕層や権力者が優先されたみたいだわ」
「戦争によって被験者は減っちまって、その穴埋めに選ばれたのがスラムの人間ってこったね」
「国連は、病気や怪我を治す為の研究に熱心になった。その甲斐あって出来た薬はあるけれど、万能薬みたいなものはないわ。そして数年前から国連の研究内容が変わったの」
「死の研究に、てか。戦争の惨事を見りゃあ気付くもんだけどねえ……死に」
「新薬開発に行き詰まった為の方向転換。その研究結果が、あの発表だったわけ」
「医術が進んでないとは聞いていたけど、新薬開発を諦めてりゃあ世話ねえ。生かす為の研究から、死の定義の研究に変わっちまってりゃあね」
「ワタシのお見合い相手は諦めずに新薬の研究を続けたけど、強制的に中止させられたのよ。『生かす研究が出来なくなって残念』と言っていたわ」
「アタシらがあれこれ言っても仕方ねえ。が、転生者のマルにとっては事情が違う。ホントに死火については分からねえのか?」
「死火についての研究もしていたらしいけど、その研究の間にも死火によって死者が出ているみたい……被験者も研究者も」
「いつの世も人は死ぬ。そんなの常識だ。けど、いきなり発火して死ぬだなんて非常識でしかねえ。懸命に生きてる人間の気力がなくなるし、進歩だって止めちまう」
「研究所は閉鎖するみたいだわ。〝人は死ぬ〟だなんて当たり前なことが成果になってしまう世界なのよ、異世界は」
「結局、死に怯えながら生きるしかねえってこったねえ。生き地獄だね、ホント」
「何も出来ない自分が腹立たしいわ」




