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作戦

 何やら騒がしいと思い様子を見に外に出ていた三人。軍が車で倉庫街の方と司令部の方を往復しているのを不審に思ったミントは、司令部の方に向かう車を停めた。


「すまないが急いでいる」


「そこのネエチャンとは知り合いでね。何で血塗れだ?」


「撃たれた。急いで病院に運ばなければいけない」


「フーン。撃ったヤツはどこ?」


「司令部に連れていった。それとは別に捕まえた男が、自分を取り調べをしていた軍人を気絶させ、軍服を盗み着て逃走したらしい」


「引っ捕らえたのに逃げられたってか!? 軍が聞いて呆れるね」


「言葉もない。兎に角急ぐ」


「アタシらも乗せてってくんね」


「何を言っている!? 危険だ!」


「じっとしてんのが性に合わなくてね」


「……断れば?」


「アンタをぶん殴ってでも」


「軍人に危害を加えたら只では済まん」


「上等じゃねえか」


「……オレは責任を負わない」


「アタシらの独断だ。負ってくんなくて結構じゃねえか」


 ジャックは溜め息を吐きながらも、三人を渋々乗せて走る。ミントの行動に、巻き添えを食らったハルとルキも溜め息を吐いた。司令部の前で三人を降ろして病院へ向かうジャック。噴水が噴くのをじっと見つめるミント。


「逃走犯の特徴がねえに等しい。軍人に変装されちゃあ尚更」


「見掛けたのを問い詰めたところで、正直に言うとは思えないしな」


「ちょっと考えがあるのだけど」


「何か名案が浮かんだか、ルッキー!」


「それには軍の協力が必要になるわ」


※ ※ ※


 司令部から離れた場所で座る軍人。司令部から逃げ出した男である。トランシーバーから聴こえてくる通信にケラケラ笑っていた。


「馬鹿な奴等だ。全部筒抜けだぜ」


 お店や家が建ち並ぶ、見晴らしのいい通り。軍人が歩いていても不思議に思われない。見回りと、見る人は思うからだ。


【逃走犯の目撃あり! 場所は……】


「ぷっ! 全然見当違いだ! こりゃ楽に逃げれる」


【全軍に伝令! 軍服の着用を禁じる!】


「はっ!?」


 軍服の着用を禁じる命令が下され、男には焦りが生まれた。着ていれば怪しまれるが、脱いでしまったらバレてしまう。取り調べ前に写真を撮られていたからだ。


「ちっ! さっさと脱いで身を潜めるとするか」


【全軍に伝令! 軍服の返却を命じる!】


「軍服の返却だと!? ……名前があるのか!」


 つなぎの内側を見た男は狼狽えた。これを返しに行かなければ疑われるからだ。


【軍服には個別の発信器を付けている! 確実に届けよ!】


「発信器!? 既に居場所がバレているのか? いや、それならばとっくに来ているだろう。多分、俺の発信器は壊れている。その辺に捨てても問題はない」


※ ※ ※


 司令部の前に集まってくる軍人達。指揮をしている男性とルキが話していた。


「どうなの?」


「動き始めた。軍服を脱いだのかもしれない」


「上手くいってよかったです」


「本当に助かった。あとは(我々)に任せてくれ」


※ ※ ※


 物陰に隠れる男。その手にはトランシーバーがある。軍の行動を把握する為に持ってきた。


「ざまあないぜ。天下の軍も大したことない」


 司令部を逃げ出して気を張っていた為、逃げ切れた安堵から空腹に襲われる。


「そろそろいいだろう。胃を満たさないと」


 物陰から出る。その瞬間、男の視界に飛び込んできたのは、銃を構えた軍人だった。


「もう逃がしはしない。大人しくしろ!」


「な、何故だ!?」


「種明かしは司令部でしてやる」


※ ※ ※


 病院の手術室の前のソファーに座るジャック。手を組み、祈るように目を閉じていた。


「アンチャン」


「君達!」


 ジャックと合流した三人。それからどれだけ経ったのだろう。手術を終えた医者が汗を滲ませて出てきた。力強く親指を立てて。

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