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謎のスナイパー

 司令部周辺を見回っていたスズメだが、特に不審な人も物も見当たらなかった為、近くのベンチに座っていた。相変わらず、つなぎの前を大胆に開けたままである。通り掛かる人の視線が向いていることは承知の上だ。


「平和なのが一番っす。おや? おーい、先輩! こっちっす」


 偶然見掛けた軍服の男性を呼ぶスズメ。黒髪を短く切っており、つなぎの軍服もきちんと着こなしている。


「大声で呼ぶんじゃない。オレは目立ちたくないの」


「先輩が目立つのは先輩のせいっす。誰のせいでもないっす」


「全くもう。大体こんなところでサボりか?」


「サボりじゃないっす、休憩っす」


「まあいい。誰の迷惑にもなっていなければ」


「大丈夫っす。先輩は心配性っす」


「お前さんの心配はしていないの」


「それはそれで寂しいっす」


 頬をぷくっと膨らませるスズメ。ポニーテールを振り回して寂しさを訴える。


「またそれか。今度は何が欲しいんだ」


「人肌の温もりっす」


 そう言って先輩に寄り掛かる。つなぎを着ている為、実際には人肌の温もりは感じ辛いのだが。


「くっつくんじゃないの」


「嫌っす。先輩は暖かいっす」


 そのまま寝に入ろうとするスズメ。そんな彼女の寝顔を見つめる先輩の表情は優しい。左肩に寄り掛かるスズメの頭を撫でながら、身体を優しく揺さぶった。


「休憩は終わりなの。そろそろ見回りの続きをしないと」


「えー!」


「それと前を閉めろ。怪しい動きを発見したの」


「怪しい動きっす!?」


 つなぎの前を閉めて立ち上がると、ホルスターから銃を取り出して構える。先程までの緩い感じはなりを潜め、軍人の顔へと切り替わる。


「司令部の側でドンパチは避けたい。この辺は待ち合わせ場所にも使われるから、人の往来は多い」


「困ったっす。迂闊に撃てないっす」


「あのジャージの奴だ。妙な動きをしている」


「追い掛けるっす」


「待て。少し泳がす」


「尾行っす?」


「そんなところだ」


 周りを警戒しながら歩いている不審者。何かを抱えてフラフラと進んでいく。木が景観の為に植えられている場所まで歩いたところで立ち止まると、抱えていたリュックから何かを取り出した。


「何を出してるっす?」


「分からない。もう少し近付こう」


 不審者との距離を詰めていく二人。が、そこで不審者に気付かれてしまう。小さな容器から液体を辺りに撒き散らし、ライターを取り出して震えている。


「来るなっ! 近付けば火をつける! 撒いたのはオイルだ!」


「そうっすか。こちとら銃を持ってるっす。脅しにならないっす」


「それはどうだ?」


 不審者が空を見上げる。空には人が浮いている。一丁の銃を構えて狙いを定めていた。


「ライフルだ。しかも、あれは軍の銃」


「盗まれたって聞いてたっす」


「面倒なことになったの。オレの嫌いな展開なの」


「兎に角、あのジャージを捕まえるっす」


 銃を左手に持ち変えて撃つスズメ。不審者の肩をギリギリ外すと、上空のスナイパーを警戒しつつ、不審者を捕まえた。


「どうするの? 数では不利だけど」


 先輩の言葉にスナイパーは逃げていく。軍から盗んだライフルを持ったまま。


「逃げられたの、スー」


「しょうがないっす。このジャージから訊くっす」


 不審者を司令部に連れていく。

 逃げたスナイパーは、そんな二人の後ろ姿を見ていた。


「邪魔だ、目障りだ。めった撃ちにしてやる」

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