ヒノン
カフェを出た三人は、ルーキッド邸へと向かった。ルキの自室へと招かれたハルとミントは溜め息を溢す。
「「意外だ」」
「口を揃えて何事かしら。ワタシの部屋がおかしくて?」
「いや、何て言うかよ、意外と乙女なんだな」
「そーそー。もっと冷たい感じを想像してたからね」
机と椅子は温もりを感じる木製、ガラスのテーブルで大人を演出しているかと思えば、カーテンの色はオレンジ色である。ベッドは白で統一されているが、ベッドに置かれた猫のぬいぐるみは茶色。
「ワタシを何だと思っているのかしら」
「この間のドレスは青だったろう。なんとなく寒色系だと」
「アタシは黒一色だと思ってたね」
「別にワタシが何色の物を置こうが勝手でしょう。それよりもミント、この本に載っているわ」
「アタシがか!?」
「違うわよ! ヒノンだわ、ヒノン」
「あーそっち」
「これ見て準備をした方がいいわね」
「フーン。街中を軍人が闊歩してるのか」
「治安が悪いのか?」
「アンオールでいう騎士団と狙撃団の両方を兼ね備えているわ」
「いいじゃねえか。そんな連中が歩いてりゃあ安心だよ」
「本当に大丈夫なのかよ、お前だけで」
「一緒に行きたいのか? マル」
「お前は召喚されたんだぞ。この世界でも死ぬ」
「おっかねえことを口走るね」
「心配してやってんだぞ」
(心配……ハルはミントを心配している。幼馴染だから? 友達だから? それとも)
「ミント、ワタシも一緒にいいかしら?」
「そいつは助かるね。少しでも詳しいのが一緒の方が楽だ」
「じゃあ俺も!」
「ルッキーだけで充分。アンタは留守番だ」
「いいや! 尚更心配になった! 俺も行く!」
「仕方ないねえ。足を引っ張ったりするんじゃねえよ?」
(ワタシも行くと言った途端にこれだわ。ワタシだけにミントを任せられないのかしら。そこまでミントが心配なのね)
「トイレに行くわ」
足早に部屋を出てトイレに入る。扉を閉めた途端、膝から崩れるルキ。自然とポロポロと涙が溢れる。
「……こんな……こんなに苦しい! この気持ちは何なの!」
※ ※ ※
数日後、三人はヒノンに到着していた。アンオールの最北端は寒く、上着を羽織って橋を渡ってきたが、ヒノンはそれよりも寒かった。春から冬に変わったようだ。
「寒いなっ」
「ええ」
「橋を渡っただけで変わりすぎじゃね?」
凍える身体を温めるように走り出す三人。街でスープを飲みたい一心であった。




