表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/100

兄と姉

『今日も太陽は眩しい。分け隔てなく全てを照らす。日向は、時に暖かく、時に暑いもの。恋しい時もあれば、避けたい時もある。恋愛も似ている。一緒にいたい時もあれば、離れたい時もある』


 筆を動かす音が鳴る。机に芯が当たって音が鳴る。それは軽快な音楽のよう。紙をクシャクシャに丸めて後方へ。部屋には紙が散乱していた。

 部屋の扉がゆっくり開く。そーっと中を覗くリーリッドだが、シャリアに簡単にバレてしまった。


「襲いにでも来たのせえ? ワタクシは大歓迎せえ」


「僕は狼じゃないよねん」


「冗談せえ。でぇ、何の用せえ?」


「ラルロアを見なかったか、と」


「相変わらずの心配性だ。弟離れしないといかんせえ」


「まだ六歳だから。兄としての責任もあるよねん」


「まだ、か。六歳ならば、自分で善悪の区別くらい付く。好奇心が旺盛な分、物事を吸収するのが早い。ナナを見ていれば分かるせえ」


「そうだろうか」


「仮に間違った行いをした時は、正しいことを教えてやればいい。それが兄の……姉の役目せえ。叱る役割は親に任せればいい。叱られて泣いていた時、傍にいるのが兄の……姉の役目せえ」


「難しいよねん。ラルロアが間違っていたら、僕が真っ先に叱ってしまうよねん」


「両親が家を空けることが多い分、その代わりをしているんせえ。ラルロアは両親に甘えているだろう?」


「確かに。僕が叱った時は、両親にベッタリだよねん」


「子供は世渡りが上手いせえ。大人になるにつれて下手になる。立場を弁えてしまうからせえ。子供は遠慮なしせえ。大人が言えないことをハッキリと言う」


「正しいかどうかは二の次だけどよねん」


「正しいなら褒めればいい。間違っているなら叱ればいい。そうやって子供は成長するせえ」


「そうだよねん! そうだよねん!」


「随分と話が逸れてしまったせえ。ワタクシを襲いに来たのだったせえ?」


「違うっ! ラルロアを見なかったかだよねん!」


「あーあ。そうだったせえ。……心配は不要せえ」


「そうか。執筆の邪魔をしたよねん、ごめん」


「許嫁に遠慮は不要せえ。頼られるのは悪くないせえ」


「ありがとう、シャリア」


 静かに部屋を後にするリーリッド。クルッと部屋を見渡すと、散らかっていた紙が片付いていた。


「優しい許嫁せえ。ゆっくり語り合うのも悪くないせえ」


『心が寂しさを感じれば、それを埋めようと動くもの。食べて埋めるか? 見て埋めるか? 聴いて埋めるのも悪くはない。が、寂しさの原因が恋愛ならば、愛しの人に会うのが一番だ。心を埋めるのもまた、心なのだろう』


 筆を置いたシャリアは満足していた。腕を伸ばして深呼吸。黒い髪を触りながら、持参したアロマでリラックスしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ