王城散歩
茶色の長髪を後ろに纏め、静かな王城を歩くミク。大統領の孫娘として脚光を浴びてきた彼女も今はゆっくりしている。王城のインテリアを眺めたり、三階にある書庫へと入ったり。子供が探検をするかのように歩いている。
そんなミクと行動しているミラ。リルリッド家のメイドとして忙しい毎日を送る彼女もまた、一人の客人として自由にしている。
「一部屋ひと部屋が広いです。歩くだけでも楽しいですね」
「そうだね。私の祖父のお屋敷よりも広いよ」
「大統領の孫というだけで注目が集まるのは大変でしょう? 息抜きはしてらっしゃいますか?」
「その時したいことをすることかな。苦痛に感じることをしないのが一番だから」
「そうですか。リーリッド様は何をご所望でしょう。メイドとして出来ることがあるならしたいです」
「男女で感性が違うから、私の提案では的外れになってしまうかもしれないけど……肩でも揉んであげたらどうかな?」
「肩揉み、ですか。メイドが御奉仕ですか」
「ご奉仕って響き、なんだかドキッとしちゃうな」
「アーバイン家の人の発言とは思えないですね」
「私だって人間だよ。ドキッとすることもある」
「ドキッですか。ミク様は恋をしたことがありますか?」
「恋、か。何が恋なのか分からないな。ちょっとした仕草にときめいていたから」
「意外に惚れやすいのですね」
「熱しやすく冷めやすいのかな? 自分で自分が分からないよ」
「なんだか安心しました。アーバイン家の人も、他の人と変わらないことが分かって。親近感が湧きました」
一階のフロアに降りてきた。壁に大きく飾られた絵画に二人は見惚れる。馬に乗った男が、夕陽をバックにしている絵だ。その絵画を見た二人は無言になってしまう。つーっと流れた涙に驚く。悲しいわけでもないのに。
「心が洗われる絵だよ」
「不思議なものですね」
ゆっくりと時間は流れていく。絵画の他にも、生け花を見たり、キッチンを覗いたり。何にも縛られることなく、束の間を楽しんだのだった。




