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《2章迄完結済15万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第2章 限定カフェ編

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第22話 新学期のはじまり

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4月


新学期が始まった。


街はすっかり春の空気に包まれている。


暖かな陽射し。


心地よい風。


桜並木にはまだ薄桃色の花が残り、風が吹くたびに花びらが舞った。


真新しい制服に身を包んだ新入生達。


少し大人びた顔をした二年生、三年生。


出会いの季節。


そんな言葉がよく似合う春だった。


中学校の保健室。


ガラッ。


「失礼しまーす!」


勢いよく扉が開いた。


「ひなちゃん!怪我したから手当してー!」


怪我人とは思えないほど元気な声だった。


机で作業をしていた朝倉陽奈は顔を上げる。


そしてすぐにため息をついた。


「ノックしなさいよー?」


「めんどい」


「ノックだけで???」


即答だった。


呆れる。


視線を向ける。


そこには片膝を擦りむいた女子生徒。


中学二年生。


保健室常連組の一人である。


陽奈は一瞬で状態を確認した。


歩けている。


顔色もいい。


泣いてもいない。


他に目立った怪我もない。


擦り傷。


以上。


診断終了。


「今回は何したの?」


「雑巾がけした直後の廊下でスケートした」


「何を言ってんのこの子は」


意味が分からない。


本当に分からない。


「新入生に見られたらどうするのよ」


「真似する子も出てくるかもでしょ?」


「大丈夫だよ」


女子生徒は親指を立てる。


「ちゃんといないこと確認したから」


「へぇ」


「コケてから」


「コケてから」


陽奈はそのまま復唱した。


「それじゃ意味ないでしょー」


「結果オーライ!」


どこがだ。


「新学期の床はワックスでピカピカしすぎてるから、床が悪い」


謎理論をかましてくる中二女子である。


ほんと担任どういう教育してるんだろ。


「もう先輩なんだから、危ないことはしちゃダメでしょ。」


「新入生のお手本なんだよ?」


お説教をしながらも手は止まらない。


消毒。


ガーゼ。


包帯。


慣れた手つきで処置を終わらせる。


「はい、終わり」


「ありがとうー!」


お礼はちゃんと言える子である。


やってる事は意味がわからないが…。


「もう廊下でスケートしないこと」


「えー」


「えーじゃない」


「びー?」


「アルファベットじゃないの!」


「お返事は!」


「はーい」


よろしい、陽奈は満足そうに頷いた。



しかしその後しばらく。


処置が終わっても女子生徒は帰らない。


保健室の回る椅子に跨り。


キコキコ揺れる。


これもいつものことだった。


保健室に来て。


怪我の処置を受けて。


しばらく居座る。


無理に追い出したことはない。


保健室は怪我を治す場所。


でもそれだけじゃない。


生徒達の居場所になることもある。


それも保健室の大事な役目だと陽奈は思っていた。



やがて椅子遊びに飽きた女子生徒が近寄ってくる。


「ひなちゃん何してんのー?」


「んー?」


陽奈は机を指差した。


「仕事ー」


机の上には色紙。


ハサミ。


画用紙。


保健だより。


季節の掲示物。


保健室前に飾る桜の装飾を作っているところだった。


「図画工作みたい」


正直な感想だった。


陽奈は思わず笑う。


「たしかに」


「それ楽しいの?」


「んー」


ハサミを動かしながら考える。


「まあ保健室の前が可愛くなるから楽しいかな」


「あと、こういう細かい作業、案外好きだから」


「ふーん」


女子生徒は両手を頭の後ろで組む。


天井を見上げる。


「私は今日なんも楽しいことないなー」


「せっかく出会いの季節なのにー」


「つまんなーい」


ぶつぶつ言っている。


陽奈は適当に流した。


すると女子生徒がこちらを向く。


「ひなちゃんさ」


「ん?」


「出会いないの?」


ピタッ。


ハサミが止まった。


「……なに?」


「だからー」


女子生徒はニヤニヤ笑う。


「いい人、いないの?」


完全に固まる。


最悪の質問だった。


しかも中二の女子から。



その瞬間。


脳裏に浮かんだのは


三月二十一日。


LAST CHRONICLE ONLINE五周年記念イベント。


リアルレイド会場。


ランキング一位。


KAITO。


そして。


貝類。


いや。


海斗。



「あの!!」


「ハルって分かりますか!?」


勢いで声をかけた自分。


振り返った海斗。


驚いた顔。


そして。


「君、もしかしてハル?」


そう言った時の声も思い出す。


支えてくれた腕。


タバコの香り。


近すぎた距離。


真っ直ぐ見つめてくる瞳。


今でも鮮明だった。


もちろんドキドキはした。


それは間違いない。


でも…


なんだろう。


なにか、違った。



ゲームの中の貝類しか知らなかった頃。


もしかしたら恋なのかな。


そう思ったことがなかった訳ではない。


だけど。


実際に会ってみて分かった気がした。


あれはきっと。


恋じゃなかった。


暫く間を置いて陽奈は頭をぶんぶん振った。


「…いないな」


「何その間!」


女子生徒が食いつく。


「絶対いるじゃん!」


「いない」


「ほんとに?」


「うーん……」


少し考える。


「いい人というか」


「推しに近い?」


「へぇぇぇぇ!!」


女子生徒の目が輝く。


「かっこいい?」


「まあ」


……長いまつ毛。切れ長の目。


欧州を思わせる美術品のような顔立ち。


思い出し、陽奈は苦笑しながら答える。


「かっこいいかなー」


「いいなーー!!」


完全に盛り上がっている。


「でもさー」


女子生徒は身を乗り出した。


「かっこいいならひなちゃんにお似合いじゃん」


「ひなちゃん可愛いもん」


「はいはい」


陽奈は適当に流した。



その時。


キーンコーンカーンコーン…


チャイムが鳴る。


救世主だった。


「ほら」


「授業遅れるよ」


「ちぇー」


不服そうな顔。


だが素直に立ち上がる。


保健室の入口まで送る。


「また来るからねー!」


「来てもいいけど」


陽奈は笑った。


「無駄な怪我は勘弁だよ」


「はーい!」


女子生徒は元気よく走っていった。


「廊下走らないのー」


「はーい!」


そう言いながらスピードは落とさない生徒


「……返事だけはいいんだから」


そう言って少し笑った。


女子生徒がいなくなった瞬間。


一気に静寂を取り戻す保健室。


春風が窓から吹き込み、優しくカーテンを揺らす。


机の上には作りかけの桜。


陽奈はその場に立ったまま動かなかった。




『いい人、いないの?』


女子生徒の言葉が頭の中で繰り返される。


「いい人ねぇ……」


ぽつりと呟く。


窓の外。


桜の花びらが流れていく。




ゲームと現実。


違って当たり前だ。


ちゃんと分かっていた。


分かっていたはずだったのに。




貝類はもっと無口だと思っていた。


もっと近寄り難い人だと思っていた。


もっとクールで。


もっと落ち着いていて。


もっと大人で。


もっと寡黙で……


自分が勝手に想像していた。




実際の海斗は。


よく喋る。


距離が近い。


笑う。


からかう。


女の子を口説き慣れてそう。


否定するつもりはないし、


海斗さんをダメだとも思わない。


ただ、思っていた人物像とは全然違った。



だからきっと。


あれは恋じゃなかった。


そう思うことにした。



なのに


ふと思い出すのは。


リアルレイドで無双していた姿だった。


銃を構える横顔。


真剣な眼差し。


ゲームの中の貝類と重なった瞬間。


そして。


「君、もしかしてハル?」


あの声。


「……会えたな」


あの表情。


「あ……」


陽奈はハッとした。


なんで。


私。


そこばっかり覚えてるんだろ。



保健室には誰もいない。


返事もない。


春風だけが静かに吹いていた。

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ご覧頂きありがとうございます!

少しづつではありますが、お話の更新を頑張って参ります。是非ブックマーク登録で最新話の更新をお待ちいただけるとありがたいです( *´꒳`*)


「面白い!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の励みになります!星1つ頂けるだけでもモチベーションめちゃくちゃ上がります!


皆様、応援よろしくお願い致します(>人<;)


◈┈◇┈◈┈◇┈◈┈◇┈◈┈◇┈◈┈◇┈◈┈◇┈◈

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