第21話 そして全員会えました
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「岩石じじぃとアキが密会しようとしてる」
休憩スペースの一角。
陽奈が盛大に吹き出した。
肩を震わせながら口元を左手で隠し、右手の人差し指を晃へ向ける。
ゲーム内では
巨大な盾を構える筋肉マッチョの白髪老人。
対するアキはクールな少女戦士。
その二人がそのまま現実で会う姿を想像したらしい。
「……殴るぞ?」
晃が呆れた顔で姉を見る。
「拓郎さんが担当してた武闘大会の手伝いしたお礼を渡したいとかなんとか」
「あー」
海斗が納得したように頷いた。
「拓郎は運営側だったんだな…」
「だからあんなイベント情報詳しかったのか」
腕を組みながら感心したように言う。
だがすぐ肩を竦めた。
「まあでもさ」
「このメンバー見たあとだとあんまり驚かないな」
全員頷く。
そりゃそうだ。
ゲーム内では、
幼女。
神官女子。
クール女子。
寡黙な銃士。
だったのだから。
「海斗さんも十分ギャップの塊だからね」
晃が言う。
「否定はしないな」
海斗が笑った。
「むしろ褒め言葉として受け取る」
「それはどうだろ」
晃が即答する。
そんな男二人の会話を聞きながら。
「どうする?」
陽奈が尋ねる。
「もう行ってくる?」
「そうだな」
晃が立ち上がった。
「一旦みんな目的達成したっぽいし」
「スタッフ入口行ってみるか」
しかし。
誰も立たない。
「……」
「……?」
晃が固まる。
全員で行くつもりでいた晃。
対して
晃だけが拓郎の元へ向かうと思っていた3人。
認識の違いである。
陽奈は机にべたーっと突っ伏していた。
「だって、男と男の密会でしょ?」
「違うわ」
即否定。
海斗も椅子に深く腰掛けている。
「なんか一回座ったら動きたくなくなったな」
実莉も頷く。
「分かる」
完全同意だった。
三人とも根が生えている。
「まあ来ないなら別にいいけど」
晃は肩を竦めた。
そして数歩歩く。
そのまま振り返らずに言う。
ボソッ
「……なんか良いもの貰えるかもしれないのにな」
ピタッ。
三人が止まる。
沈黙。
数秒後。
「行こう」
「行こっか」
「行くかぁ」
全員立ち上がった。
チョロかった。
⸻
しばらく歩く。
スタッフ専用入口。
そこには既に拓郎が待っていた。
「お待たせしました」
軽く頭を下げる。
海斗が二度見した。
改めて見る。
黒髪。
黒縁眼鏡。
イベントスタッフTシャツ。
スーツパンツ。
姿勢が良い。
いかにも仕事出来そう。
そしてゲーム内。
筋肉マッチョ老人。
拓郎。
「……」
海斗が言う。
「……本当にあの拓郎?」
「失礼ですね」
拓郎が即返す。
「だって岩石じじぃだよ?」
「岩石じじぃと呼ばれていたんですか私は」
心底不本意そうだった。
「そういう貴方もどちら様ですか」
「そりゃそうなるわな」
5年の仲の知り合いなのに誰かわからない。
妙な空気だった。
⸻
軽い自己紹介。
これで全員の認識が一致する。
そんな中。
拓郎がふと実莉を見る。
「あらためて驚きました」
「え?」
実莉が首を傾げる。
拓郎は真顔で言った。
「たくろー♡」
全員固まる。
「すきーー♡」
完璧な再現だった。
実莉の顔が一瞬で真っ赤になる。
「弄られてる!!!」
しゃがみ込む。
「いえ」
拓郎は真顔。
「当時とても元気をいただいていました」
頭を下げる。
「それ言われると余計恥ずかしい!!」
⸻
海斗が肩を震わせる。
「いやでも本当に意外だよな」
実莉を指差す。
「たくろー♡すきーー♡って言ってた幼女の中身が」
わざと間を置く。
「こんな綺麗なお姉さんだったとは」
「やめてぇ!!」
実莉が叫ぶ。
海斗はニヤニヤしている。
完全に面白がっていた。
「元気出せ元気出せ」
晃が頭をぽんぽん叩く。
「子供扱いしないで」
「よしよし」
ぽんぽん。
その横から。
ぎゅうううう。
陽奈が抱きつく。
「実莉ちゃーん」
「大丈夫だよー」
「離れて」
「よしよし」
「離れてぇ!」
両側からサンドイッチ状態。
実莉は顔を真っ赤にしていた。
「なんなのこの姉弟」
呆れたように言う。
でも少しだけ笑っている。
その様子を見ていた拓郎が口を開く。
「あの」
全員が振り返る。
「本題に入りますね」
「あ」
そうだった。
拓郎は鞄から封筒を取り出す。
一人一人へ渡していく。
陽奈。
晃。
実莉。
海斗。
全員開封。
沈黙。
⸻
『LAST CHRONICLE ONLINE CAFE』
『期間限定オープン』
『デザート一品無料券』
⸻
沈黙。
再び拓郎を見る。
券を見る。ラスクロの限定カフェ。
拓郎を見る。
券を見る。
「宣伝じゃねぇか」
晃が真顔で言った。
全員頷く。
満場一致だった。
「近々オープンするので」
拓郎は淡々と説明する。
「せっかく皆さん集まりましたし」
「人数分確保しておきました」
「よろしければ是非」
海斗が券をひらひらさせる。
「抜かりないな」
「仕事ですから」
拓郎が即答。
迷いゼロ。
直接会って話すのは初めて。
それなのに何故か
その返答があまりにも拓郎らしく感じた。
そして全員吹き出した。
五年間ずっとゲームで一緒だった仲間達。
ようやく現実で顔を合わせた。
思っていた姿とは全然違ったけれど。
だからこそ面白い。
そんな事を思いながら、
四人は笑い続けるのだった。
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