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鼓動と俺。  作者: ルーツ
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1.ブームと知識

コロナ禍が過ぎ、社会が動き出したことで、バイクブームは下火だと世間は言う。


けれど、あえて言わせてもらう。

バイクブームなんて、最初からなかったのではないか。


仮にあったとしても、それはバイクを趣味にしている人間にとって、歓迎すべきものではなかった。むしろ、ただの迷惑だったとさえ思う。


これはあくまで個人的な見解だが、その理由をいくつか挙げてみたい。


まず一つ目は、旧車の価格だ。

信じられないほど跳ね上がってしまった。


とりわけ、Kawasakiの空冷四気筒DOHCエンジンを積んだ車両は異常と言っていいほどの高騰ぶりを見せている。


もともと、ヤンキー漫画やレース漫画で名の知れたバイクは高値がつく傾向にあった。

それでも、いわゆる「極上車」で200万円を超えれば、「高すぎる」と言われていた時代があった。


私がかつて所有していたKawasakiのZ-1も、極上車で120万円だった。


それが今ではどうだろう。

同じ基準で語ることすらできないほど、相場は遠くへ行ってしまった。


二つ目は、盗難の増加だ。


バイクが盗まれること自体は、昔から珍しいことではなかった。

ただし、その「質」が変わってしまった。


かつては、憧れや欲しいパーツを手に入れるために盗み、自分で乗るというケースが多かった。もちろん、それも立派な犯罪だ。


だが、盗む人間が国内の、しかも比較的近場にいることが多かったため、発見や検挙の際に持ち主の元へ戻る可能性も決して低くはなかった。


運が良ければ、盗まれる前よりも良い状態になって戻ってくる、そんな皮肉な話さえあった。


しかし今は違う。

盗まれたバイクが戻ってくることは、ほとんどない。


車体としてではなく、パーツ単位で価値が分解され、流通してしまう。

とりわけ当時物のパーツで構成された車両は、分解された瞬間に“商品”へと変わる。


だからこそ、ほんの短時間でも気を抜けない。

ソロツーリングの途中、コンビニでトイレに寄るだけでも、鍵を三つは掛けなければ安心できない。


三つ目は、旧車専門店の増加だ。


一見すると、それは喜ばしい変化に思える。

だが、現実はそう単純ではない。


現代のFI車は、コンピューター制御によって管理されているため、異常が起きても診断と部品交換で対応できる。費用はかかるが、仕組みとしては明快だ。


一方で旧車は、壊れ方も、直し方も、もっと曖昧で、もっと人間的だ。

エンジンさえ焼き付かなければ、なんとか帰ってこられる余地がある。


しかし、いざ修理を頼もうとすると、

「うちは販売専門です」と断られることがある。


専門店という言葉から、知識や技術も含めて期待してしまうのは、買う側としては自然なことだろう。

けれど現実には、「売る専門」の店も少なくない。


そうした店に当たってしまうと、途端に行き場を失う。

これが、いわゆる“ハズレのバイク屋”だ。


そして、そういう店は決して珍しくない。


では、旧車を本当に維持していくためには、どうすればいいのか。

その話は、また別の機会にしようと思う。


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