プロローグ~世界の歪み~
誤字が多いかもしれませんが、よろしくお願いします
世界は、平等ではない。
人々は自覚せずに他人を蹴落とし、優越感に浸ろうとする。
それは世界が定めたルールなのか…はたまた人間が作ったルールなのかはわからない。
ただ、1つわかることは、それがこの世界の真理ということ。
そのレールから誰も抜け出せないということだけだ。
そして、ここにも、そのレールの上を歩く1人の少女がいた。
「はぁ……ねぇ、この紅茶を入れたのは誰かしら?」
足を組み、冷めた目をを向けながら、椅子に腰かけている少女は問う。
「あ、あの…私でございます」
手を挙げた1人のメイドがオドオドとした態度で、少女の前に姿を現す。
「ふ~ん……」
少女は、前に出てきたメイドを頭からつま先までじっくりと観察していく。
そして、手に持っていたティーカップをメイドの方へと投げつける。
ティーカップの中には、手を挙げたメイドが入れた紅茶が入っており、ティーカップは真っ直ぐメイドの方へ飛んでいく。
「ひっ……」
幸いにも、メイドに当たることなく、壁に衝突した。
ティーカップは壁にぶつかった衝撃で粉々に砕け散ったが、中に入っていた紅茶がメイドにかかることはなかった。
「なんで避けたの?」
「も……申し訳ございません!」
メイドは顔を青ざめながら、頭を深々と下げ、割れたティーカップの破片を手で拾い始める。
そこへ、先ほどティーカップを投げつけた少女がメイドの方へと近寄り、髪の毛を無理矢理引っ張り上げる。
「きゃっ…!」
メイドは、うめき声をあげながら、髪の毛を引っ張り上げられたことで、無理やり目を合わせさせられてしまう。
「あなた…この仕事を舐めてるの?」
他のメイドたちは顔を逸らし、目を合わせそうとはしなかった。
ここでやっていくには、そうするのが賢明な判断だとわかっているからだ。
少女の横暴は今に始まったことではない。
少女の横暴で何人ものメイドが居なくなったっていった。その中には、他の人に相談を持ち掛けたメイドだっていた。
だが、翌日になると、そのメイドは屋敷から姿を消していたのだ。
みんな、次の標的が自分にならないように必死なのだ。
そして、今回の標的がたまたまこのメイドだったというだけの話。
「あなた…私の紅茶を入れることも満足にできないの?そんなメイドは私には必要ないのだけど、この意味…分かるよね?」
「そ、それだけは…!」
淡々と告げる声に、メイドの顔がさらに青ざめていく。メイドの瞳の奥には、恐怖そのものが映り込んでいた。
「それが嫌なら、もっと懸命に働くことね」
そうメイドに告げ、掴んでいた髪の毛を放しメイドを解放する。
髪の毛を離されたメイドは、割れたティーカップを大急ぎで回収し、そそくさとその部屋を後にした。
「あなたたちも、もう行っていいわよ」
その少女の言葉に、他のメイドたちも続々と部屋から退出していく。
そしてメイドが全員退出したのを確認し、座っていた椅子に戻り、背もたれに体重を預ける。
「ふぅ、疲れた~」
「お疲れー」
少女の声に対し、部屋の窓際から気の抜けた声が返ってくる。
淡々としており、ゆったりとした声色だ。
「茶化さないでよ…メル」
振り返ると、そこにいたのはスライムだった。
ぷにぷにして、気持ちの良い触り心地のスライム。
ひんやりしており、真夏の時にそのスライムを抱えると暑さをしのげるくらいには冷たい。
そしてなにより、プルプルしていた。
メルと呼ばれたスライムは少女と居るときはスライムの状態でいることが多いのだが、外に出かけるときや、屋敷を散策する時には猫の姿をしている。
そんなスライムの名をメル=ビクトリア。
少女の大切な相棒だ。
「リンメルは優しいねー」
そして、このリンメルという人物こそ、先ほど横暴に振舞っていた少女であり、名をリンメル=フロストメイルと言う。
そして、このフロストメイル家の三女であり――
「だってしょうがないじゃない?この家、近いうちに戦争に巻き込まれるんだから……今のうちに、何とかしないと」
この物語の鍵としての役割を担っている少女である。