軍艦島
転移してきた先は、軍艦島の上空。魔法でふわりと浮いて、下を見る。眼下にはおっきなお船が……お船……。
「お船がない……」
「見るからにしょんぼりしてる……」
『やっぱり勘違いされてたかw』
『なんだっけ。形が戦艦土佐に似てるとかで軍艦島って呼ばれてたはず』
『ぶっちゃけただの人工島だよ。ちょっとした世界文化遺産にはなってるけど』
「ふうん」
じゃあ、結構有名な場所ってことだね。でもそのわりに、誰もいないみたいだけど。町もぼろぼろでほとんどが廃墟だ。一応、島の隅っこに比較的綺麗な場所はあるけど……。少なくとも暮らすことを目的とはしていない場所だと思う。
『海底炭鉱があって、石炭の採掘のためにたくさんの人が住んでいた、らしい』
『当時の人口密度は世界一だった、らしい』
『その狭い島に五千人以上が住んでいた、らしい』
「らしいばっかりだね」
『五十年以上前のことなのでw』
そっか。じゃあ、当時を知ってる人なんてほとんどいないか、いても当時子供でうろ覚えの人とか、かな。
ぼろぼろの廃墟だけど……。なんだか、ちょっと入ってみたくなってしまう。ちょっとだけ下りてみよう。
「下りてみる」
「え? あ、待って! ここ、許可がないと上陸禁止で……」
「大丈夫」
ゆっくり下りて……。地面のちょっと上で浮いた。
「上陸してない」
「そういうことじゃないと思います!」
『リタちゃんwww』
『屁理屈をこねちゃいけません!』
『でもリタちゃんなら結界もあるし安全に見て回れるのでは』
うん。たとえ周りの建物が一気に崩れたとしても問題ないよ。
「でも他の人はまねしないようにね」
『できないんだよなあ』
『そもそもここに来る手段そのものが限られてるから』
それもそうだね。
学生さんと一緒にぷかぷか移動。学生さんはなんだかんだ言いながらも、移動し始めたら興味深そうに周囲を見ていた。普通では見れない光景だろうから、興味があるのかも。
「すごい……教科書で見た景色もある……」
「ん……。がれきがいっぱい。気をつけて歩かないとだめだね」
「浮いてますけど」
「そうだけど」
『歩く(浮遊)』
『歩くってなんだっけ』
細かいことは言わなくてもいいよ。
どの建物も本当にぼろぼろで、ひどいものだと建物の中が貫通していたりもする。よくまだ建ってるなって思うぐらい。
「今はぼろぼろだけど、昔はここに人が住んでいたんだね」
「らしいですね」
大人が仕事して、子供はきっとあちこちで遊んで……。そんな場所だったんだと思う。でも今はもう、がれきが散乱した廃墟の町。歴史を感じるってこういうことを言うのかな。
「でも、この固い建物って五十年ぐらいでこんなことになるんだね。わりともろい?」
『管理する人が誰もいなかったらこんなものかも』
『風雨にさらされ、嵐に見舞われて、それでもそのまま、だからな』
『建物に傷ができたら、そのまま放置されて雨水が入って……とかになるだろうし』
「なるほど」
そういうものらしい。日本のお家ってすごいと思ったけど、管理が大変そうだ。
『そういえばリタちゃんちはシッショが建てたんか?』
『いや違う。俺が守護者になった時にはすでにあった』
『マジでか』
そうらしい。私も精霊様に聞いたけど、あのお家は森に守護者を置くことにした時に、当時の人里の家を真似して作ったのだとか。精霊たちが作って、保護魔法とか不思議な魔法を全力でかけたから、今もずっと綺麗なまま。
何度か増築はされたらしいけど。昔は最初の一部屋だけだったらしいし。
「軽く千年以上は使われてるはず」
『いや、一万年は超えてるはずだ。エルフが守護者になっていた時もあったから』
『マジかよ』
『リタちゃんちの方がよっぽど歴史がある件について』
歴史はあるかもしれないけど、劣化とかしないからね。あまり感じないと思う。
しばらく歩くと、島の端っこにたどり着いた。そこは明らかに整備されていて、とても綺麗で……。そして人がいた。わりとたくさん。
「あ、リタちゃんだ!」
「リタちゃんが中から出てきた!」
「配信見てるよー!」
おー……。観光の人たち、かな? 中側には入ってこないけど、きっと危険だからと思う。
「り、リタさん!」
そして、係の人みたいな人もいた。こっちを見て叫んでる。
「困ります! 入られたら困ります! だめですから!」
「結界で安心安全だよ?」
「それむしろ調査の時に欲しいです!」
『草』
『そりゃそうだw』
『一般の人は立ち入り禁止だけど、保全調査とかそういうので中に入る人はいるからね』
そうなんだね。でもわざわざ同行するのはちょっと面倒だと思ってしまう。
怒られちゃったから移動しよう。結構あちこち見れたから満足だ。
「どこならいてもいい?」
「えっと……。この先の広場になってるところがあるので、とりあえずそこなら」
「分かった」
ということで、おろおろする学生さんを連れて、そこまで歩くことにした。
壁|w・)上陸はしていない! ヨシッ!





