学生さんのおすすめのお店
「ところで、あの……。これ、なんですか?」
「適当に近くの人を選ぶ魔法。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「え……。私に何をしろと……?」
「ちゃんぽん、食べに行こう」
「え?」
『なん、だと?』
『おいめっちゃ羨ましいんだけど!?』
『俺もご一緒したいです!』
募集をかけたらすごい人になりそうだからだめです。
学生さんはちょっと悩んでいたけど、苦笑いしつつも頷いてくれた。一緒に行ってくれるみたい。
「分かりました。私でよければ」
「ん」
「お店はまだ、ですよね?」
「決めてない。おすすめがあるなら教えてほしい」
「おすすめ……。そうだなあ……」
学生さんがスマホを取り出してささっと操作する。んー……。やっぱり手慣れてる。みんな、スマホの操作が上手。すごい。
「こことか、どうかな?」
「ん」
学生さんが見せてきたのは、お店の写真。ここから電車で十分ぐらい、らしい。学生さんの家の近くらしくて、よく家族で行ってるのだとか。
『初めて見るお店』
『地元の人しか知らない知られざる名店ってやつかな!?』
『期待が高まっていく!』
「勝手にハードルを上げるのはやめてあげてほしいです……」
確かに、私が教えてもらうお店って、わりと有名なお店も多いらしい。あまり知られていないお店にも美味しいお店ってありそうだよね。地元の人しか知らない……。期待してしまう。
「地図、出して」
「あ、はい」
学生さんがスマホを操作して、地図を見せてくれる。んー……。よし。大丈夫。
「じゃあ、行くよ」
「え」
学生さんの手を取って、その場から転移した。
そうして転移した先は、普通の町中。ビルとかもちゃんとある。一応誰かにぶつかったりしないように、ちょっと上空に転移した。
もちろん学生さんもちゃんと浮かしてあげてる。落としたりしてないよ。
「あ……高い……」
「ん」
「きゅう……」
「あ」
『あ』
『ちょwww』
気絶しちゃった……。どうしよう。
『あのね、リタちゃん。普通の人はそんな上空に、しかも足場もない場所に転移したら、正気ではいられなくなると思うんだ』
『せめてビルの上とかにしてあげて?』
んー……。そうだね。次は気をつける。
そのまま地上に下りて、魔法で学生さんの意識を覚まさせる。ちょっとした刺激を加えただけだけど、学生さんはすぐに目を覚ましてくれた。
「あ……よかった、地上だ……」
「ごめん」
「あ、いえいえ。大丈夫……。でも、気をつけてほしいです……」
「ん……」
『注意は大事』
『この子は将来大物になるな!』
『何の判断だw』
この近辺の景色は知ってるらしいから、ここから案内してもらう。大通りとは違う細い道に入って、少し歩く。そうしてたどり着いたのは、二階建ての建物。一階がお店になってるね。
「ここです」
チェーン店みたいな大きなお店じゃない、本当に小さいお店。個人でやってるお店かな? ここが学生さんのおすすめらしい。
「おじゃましまーす」
学生さんがスライド式のドアを開けて中に入っていく。私もそれに続いた。
お店の中は、カウンター席とテーブル席が少しだけ。多分、十人と少しぐらいしか入れないお店だと思う。そんなお店のカウンターの奥で、おじさんが一人のんびりと本を読んでいた。
「ああ、いらっしゃい。その子が噂の魔女さんか」
「です。ちゃんぽんと皿うどん、お願いします」
「おう」
おじさんが手早く調理を始める。なんだか、私が来るのは知っていたみたい。
「いつのまに連絡したの?」
「地図を見せる時にささっと」
「おー……」
スマホに慣れてる人は本当にすごいね。どんな連絡もとっても早い。
カウンター席に座って、のんびりと待つ。この待つ時間がわりと好き。
「ところで……えっと……。リタちゃんって呼んでいいの?」
「ん。別にいい」
呼ばれ方はなんでもいいよ。呼び捨てでも別に構わないと思ってるから。不思議と少ないけどね。
「あと、敬語とかじゃなくていいからね?」
「あ、うん」
さっきからちょっと気になっていた。敬語になったり、ならなかったり……。話しにくそうだなって。見た目は私の方が年下に見えるし、気にしないでほしい。
『なお実年齢で考えると……』
『それ以上はいけない』
それは気にしちゃだめだと思う。
「えっと……。リタちゃんは、この後どこに行く予定?」
「ん? まだ決めてない。美味しいものを探すつもり」
カステラとちゃんぽん、皿うどんは最初に聞いたものだったけど、他にもあるはずだと思うから。まだまだいろいろ食べたいね。
それに、観光名所とかもいくつか見てみたい。楽しみ。
それを説明したら、なるほど、なんて納得していた。どうしたんだろう?
それよりも……。なんだかいい香りがしてきてる。もうすぐ完成かな?
わくわくしながら待っていたら、おじさんが大きな器を私の前に置いてくれた。
壁|w・)唐突に足場のない場所に、不安定にぷかぷか浮いていた時の心境を答えよ。





