拷問だー!
ルドガーさんのお家に向かっててくてく歩く。もちろん商人さんを引きずったまま。紙はもちろん貼り付けたままだから、街のみんなに興味深そうに見られてる。
張り紙を読んだ人の反応はだいたい同じ。軽蔑の視線を商人さんに向けていた。
『これルドガーに許されても再起不能では?』
『今だ! 石を投げるんだ! 俺たちの分も!』
『本当に投げられていて草なんだ』
そうだね。石を投げられてる。ちゃんと私に当たらないように、近づいて、商人さんに当ててる。小石だけどぺちぺちと。
でも正直そこまでやるとは思ってなかったんだけど……。
「おい! こいつ、いつも獣人族をバカにしてた商人だぞ!」
「ついに捕まってやがる!」
「小さい女の子を襲って返り討ちとかかっこ悪いな!」
やっぱり、街の人たちみんなから嫌われていたらしい。獣人のことを悪く言っていた人だから当たり前かもしれない。気分良くないよね。
「なあ、嬢ちゃん」
私には当たってないし気にせず歩いていたら、石を投げた人が話しかけてきた。何だろう?
「なに?」
「こいつ、俺たちにくれないか?」
『これはあれですな? やらないか案件ですな?』
『懐かしい言い回しもそうだけどリタちゃんに聞かせんなバカ』
意味が分からないけど……。ともかく。私の答えは決まってる。
「だめ」
「そうか……」
「ルドガーさんに引き渡す予定だから」
そう言うと、話しかけてきた人はぽかんとしていたけど、やがて嬉しそうに笑った。
「そうか! ルドガーにか!」
「ん」
「そうだなそれがいい。あの臭い料理と一緒に閉じ込めてやろうぜ!」
「…………。なるほど」
『なるほどじゃないが』
『おい街の人、変なこと言うなw』
『リタちゃん、食べ物で遊んだらだめだよ?』
そんなことしないよ。食べ物で遊んだりしない。それはとっても悪いことだと思う。
「食べ物で拷問するだけ。アニメでもやってた」
『アニメ? 何の話だ?』
『そのアニメ知ってるけど拷問じゃないからなあれ!』
心配しなくても食べ物で遊んだりはしないよ。大丈夫。
ずるずる引きずって、ルドガーさんのお家に到着。ドアを開けて入ると、椅子に座っていたルドガーさんは安心したようにため息をついた。
「遅かったな。心配した、ぞ……」
そしてルドガーさんの言葉は、商人さんを見て少しずつ尻すぼみになっていった。
「魔女殿……。まさか、こいつが……」
「ん。私を狙ってきた。いろいろ知ってるから、ルドガーさんの好きにしてほしい」
「なるほどな……」
にやり、とルドガーさんが笑う。商人さんの頭を掴んで顔をよく見て、こいつか、と小さくつぶやいた。ちょっと怖い声音だね。
「他にも仲間がいるはずだ。吐き出させてやる」
「ん。提案がある」
「なんだ?」
「あの料理作って、こいつと閉じ込めよう」
魔法で臭いをおもいっきりきつくして、閉じ込める。効果があると思う。そう考えて言ったんだけど、ルドガーさんはなんだかとっても悲しそうな顔になった。
「いや、あの……。拷問? あの料理で……?」
「ん」
「あれは、俺の故郷に伝わる伝統ある料理で……」
「伝統とか知らないよ。不意打ちであの臭いをかがされたことは忘れてないから」
「あ、はい……」
『草』
『これ、実はリタちゃん、わりと怒ってたんやなって』
『でも食べ物を粗末に扱うのはよくない』
「大丈夫。その後はちゃんと食べるから」
味そのものはいいからね。臭いだけこの商人さんに押しつけて、美味しい部分は私がもらう。商人さんには一口もあげない。私が食べる。
とりあえずルドガーさんも納得してくれたみたいで、料理を作ってくれることになった。
ルミナさんたちがちょっと苦い顔をしていたけど、魔法で臭いを防ぐと伝えたら納得してくれた。
というわけで。
「ぐああああああ!?」
結界を箱みたいに作って、臭いと商人さんを閉じ込めておいた。料理は私が食べる。手にはあの臭い料理があるけど、魔法で結界の内部と繋げていて、臭いは全部商人さん行きだ。がんばれ。
「もぐもぐ。やっぱり味はいい」
「そうだろうそうだろう」
ルドガーさんも満足そう。もだえる商人さんを微妙な顔で見てるけど。
『美味しいと言ってもらえて喜んでいいのか、もだえられて悲しめばいいのか分からない、みたいな顔やな!』
『それにしてもリタちゃんまた変な魔法開発したなあ』
ルドガーさんの料理は美味しいけど、臭い。それを美味しく食べるためにちょっと作ってみた魔法だった。最終的にはちゃんと臭いは消すよ。
「早く言え。でなければずっとこのまま……」
「俺が知ってることは全部言うからこの臭いをやめてくれえ!」
「…………」
『即落ち!』
『めちゃくちゃ複雑そうな顔してるw』
『すぐに解決して嬉しいような、そこまで臭い? と傷ついてるような』
「…………」
「こっち見ないで」
私に視線を向けられても困る。
『こっち見んな』
『認めろよ。お前の料理はくちゃいんだよ』
『家族にすら避けられてるという事実を受け入れろ』
へこんでしまうのは理解できるけど、ね。
その後はスムーズに商人さんから情報を聞き出すことができて、ルドガーさんは商人さんを連れて街を回ることになった。一掃するのだとか。
「すまないが魔女殿。明後日、また来てほしい」
「ん」
ということで、獣人国での食べ歩きは持ち越し。明日で一気に終わらせるみたいだから、私はまた日本に行こうかな。
「魔女様、また来てくださいねー!」
「ん」
手を振るルミナさんに振り返して、精霊の森に帰った。明日はどこに行こうかな?
壁|w・)ルドガーさんの伝統料理は拷問に最適!





