21話 化け物2
~フィー視点~
私は王太子の命令で動いている。優秀な者がいるのにデオルのことだから私一人でやれるように命令と言う形で。おそらくはデオルは暴走しているって王太子は言っていけど、本当に暴走しているのなら王都自体が壊されていたと私は思う。
魔力の残滓を追って着いたのは小さな廃村。此処はモンスターに襲われたらしいが所々直っているところを見るに誰がか直していたのだろう。デオルがここにいるのかは分からないけど、探さないと。無事でいてほしい。・・・ひどい、有様だけど。
「君ラガ僕ヨリモ劣ッテイルノハ努力ガ足リナイセイダ」
「ぁっ……」
「ドウシテ、僕ヲオ父サンオ母サン……イ__」
「デオル!?」
「ン? フィー……なんで……ここに?」
私が大きなことでデオルを呼ぶと先ほどまで首を絞めていた男を離して怯えた子供のように動揺している。何があったのかは分からないけど、この男は捕まえておかないといけない。・・・デオルは返り血で染まっている。
そのことからこの惨状はデオルがしたことは想像できる。男女だけではなく、子供やお年寄りまで……殺されている。全員が指名手配犯とは言えここまですることはないと思ってしまいくらいにはひどい。顔が半分が消し飛んでいる者。
壁にめり込んでいる者や体の一部がぐちゃぐちゃになってしまっている者までいる。あの男は生き残りだったのだろう。王太子が言う通りだったのかもしれない。デオルは暴走していて、この廃村にいる老若男女問わず殺した。
「・・・フィー? あの……」
「コレはデオルがやったの?」
「ぁはっ、うん」
「そっか、帰ろう?」
「ゲㇹッ……そのガキから離れた、方が正解だぞ」
「お前は?」
「ガキの恩人だった奴みたいにな」
「ッ!?!?」
男の言葉にデオルが肩をビクッとさせた。デオルに恩人? 私はそんな人を知らない。デオルの方を見ると、嘘がバレて親に叱られるのを我慢するような子供みたいな反応をした。そんな反応を私は見たことない。
なんでデオルがこんなことになっているかは戻ってから聞かないと、あと……デオルからこの男を守らないと殺される可能性もある。左腕は今も怪我しているから私でも守ることくらいは出来る。デオルは今、絶対に精神が不安定だ。
「デオル……大丈夫だから帰ろ?」
「大丈__あの人も言っていた。大丈夫って、僕は”普通”ダッテ」
「デオル? 私を信用できない? 何したら信用できる?」
「孤独はいやだぁ」
デオルはそういうと泣き崩れた。私は彼がこんなにも一人を怖がっているのは知らなかった。一人でも何も問題ないと思っていたけど、泣き崩れる程なのね。私が出来るのはデオルを抱きしめて落ち着かせることだけ。
「デ__「よくやった」__オル?」
「うむ、この男は確保しろ。デオル・アグールは治療した後、拘束して隔離」
「王太子」
「フィーベル嬢どうした?」
「私のデオルに何した」
「簡単だ。眠ってもらった」
私がデオルに歩み寄ろうとした瞬間に何かを撃ち込み、眠らせた。私を動かしたのはデオルを油断させて拘束するため? 王太子の英雄にする宣言はもしかして嘘? 決めつけはよくはないけど、何もしていないデオルを拷問室に連れて行っている時点で怪しむべきだった。
今回の件で王太子は信用は出来ない人間として数えておかないと。安全だって言っていたのに襲われてデオルが何かをされたのは分かる。王城は安全ではないと私も分かっていた筈なのに信用しすぎた。私が近くに居て守らないと。
「さて、傲慢の牙だったか?」
「はっ有名人じゃねぇかよ!! 俺は泣くも黙る傲慢のき__ぐぅ」
「貴様には情報は吐いてもらわねばならん。だから死ぬ前に全て吐け」
「何を吐けばいいのか、分からないな。俺らは依頼主とは会わないのでね」
「情報くらいはあるだろ?」
「知っている奴はみんな殺されたさ。俺が知っているのはガキの記憶を観ることだけだ」
傲慢の牙……確か、なんでも屋と言われている正体不明の集団。一切の手掛かりの残さずに依頼されたことをこなすことで有名。ただの噂話かと思っていたけど、本当に実在するとは思ってなかった。ってことは他の六つもある集団の噂は本物?
それにデオルの記憶を観て一体何をする気? その依頼主を見つけて吐かせないと。そもそも記憶を観るのは禁術って話で誰も知らない。ただ、冒険者の間で記憶を観ることが出来るスキルがあるって話題にはなっていた。
確か”記憶の廻廊”って呼ばれるダンジョンの深層のどこかにあるとされるスキル。何故スキルがダンジョンで取得できるかは分からないけど、ポイントで解放できるのに何故? 確かにポイントで取得するよりもスキルブックと呼ばれるダンジョン産のアイテムでも解放できる。
「ソレで何を知った?」
「アイツが、転生者ってことだけだよ。前世の記憶を観たラ嗚あナリ屋我ッた」
「貴様……どうした?」
「助ケ手ぐレぇ~、グゥボッ」
「ッ!! 王太子、下がれ!!」
先ほどまで普通に喋っていた男が急におかしくなった。デオルが何かしたのかと思ったが、おそらくは何も関係ない。直接的には関係はないと思うけど、デオルの前世の記憶は関係しているんだろうね。今は私に出来ることをしないと。
騎士も男に剣を向けているから異常事態ではある。口から何かが出てきたと思ったら急に男を包み込んだ。王太子にデオルをさっさと連れて行くように言った。ただもう遅いかもしれないけど、何もしないよりはマシだ。
【羽ァ……又、オトコの殻ダ。是モ長く葉モタナイ】
「貴様は何者だ?」
【雲? アァ■■■のオン神だ。ココ出羽、デオル化】
「私のデオルの恩人? 化け物みたいだけど」
【スマナイ南。魔だ、依リ代が三ツ殻ナイ】
目の前にいる化け物はなんとも言いえない姿であった。男の身体はぐちゃぐちゃになっているが顔はしっかりとあるのが不気味だ。依り代が見つかっていないってこんな気持ち悪いのには、依り代として適正ではないってことか。
デオルの精神的にも良くないから眠っていてくれて良かった。ただ恩人と言うことはコレはデオルの前世で世話になったモノだということだ。こんなのが近くに居たとなるとデオルも記憶を観られてああなるわけだ。
【君経ちハ依り代には向ゐ手ナイ】
「貴様、名はなんと言う?」
【名ぁ舞えカ。亡死ってイルだ郎?】
「・・・」
【コン回抱け、サーびすダ】
化け物が腕だったモノを上げると光に包まれた。目を開けれないほどの光に包まれて思ったことがある。あのリースであれば油断しなければ勝てるが、この化け物には無理だと。次元が違うと言うよりかは住む世界自体が違う。エンシェントドラゴンと対峙した時と同じ感覚だ。
もしデオルに危害を加えようとしていたら、この化け物に私は立ち向かえるだろうか? もしの話なのに考えただけで汗が出てく____
【■■■を頼んだよ? 君には期待している。今回のことはデオルの記憶から消しておくよ】
___今、普通に喋った? この化け物は私達の想像を超えているのかもしれない。




