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1話 デオル・アグール1

 ここがハティツィール学園かぁ。王都にあって貴族は必ず通わないといけない学園なのは知っていたけど、ここまで大きいとは思っていなかったなぁ。まぁ僕は学園を卒業したら貴族ではなくなるから通う意味はあるのかってね。


 僕の名前はデオル・アグール、年は14歳。前世では日本人で飲食店員だった。いわゆる転生者ってやつで神様に特別な力を授けそうって言われたから、「何か僕が自由に出来る空間をください」って言ったからソレを叶えてはくれたよ?


 その力の名前は”異空間”と表示される。いやさ……ここは魔法もある世界だからステータスってものあるのは理解はできるんだけどさ。せめて亜空間とかが良かったよぉ。細かい指定を言ってなかった僕が悪いから文句は言わないよ!!


 文句があるとしたら僕を貴族の息子として転生させたことだよ。しかも辺境伯の妾の子供ってどういうことだよ。アホか!? おかげさまで5歳の時にステータスが発現する儀式をやった後に、固有スキルやレアスキルがないかを確認する。


 僕にはそのスキルはなかったが”異空間”があった。コイツはスキルには属さないみたいで異物として家で扱われ、領地から離れた森に一人で暮らすことを強制された。親からすればそのまま死んでくれた方が良かったのかもしれないな。


 昔から自分たちの都合で子を捨てたら神罰が下るって恐れられているみたいだ。一定の年齢であれば許さるみたいだけど。許される年齢は18歳。ここを卒業したら僕が貴族ではなくなる理由がソレだ。家族に僕は半分捨てられた。


「ほらよ。堕落貴族」

「うわ。丁寧に扱ってくださいよ」

「ハッそんなゴミをどう扱っても問題はないだろ」

「そんなヒドイことは言うべきじゃないよ。一応兄さんはまだ貴族なんだから」

「申し訳ございません。坊ちゃま」


 馬車から降りてきて乱暴な従者に対して注意するのはアデル・アグール。正妻の息子で僕の腹違いの弟だ。ちなみに僕が長男で次期当主候補だった。まぁ当主の席には全く興味がないので喜んで弟に差し出してやるよ。


「兄さんは貴族用ではなくてあちらの平民用ですからね」

「マジで!?」

「えぇ兄さんからすれば屈辱でしょうがお父さ__」

「よっしゃ。アデル、頑張れよ」

「・・・」


 嫌がらせってことは分かっているが僕としたら全然ありがたい。だって今回は絶対に波乱が巻き起こること間違いなしだから。異世界からの勇者や教会の聖女様、王太子殿下にその婚約者などなど。嫌すぎるよ。


 平民にも字の読み書きや計算式などが普及しているのは知っていたけど、こんな学園まで用意されているとは思ってもみなかったよ。それくらい、国王陛下が努力しようとしているってことなんだろうけどな。分かるのはいただけないけどな。


 まぁそうしないと貴族どもの反感を買うって理由だとは思うから僕からは何も言えないんだよねぇ。進言できる機会なんてものは今後一切ないと思うし。


「分かっていないな。兄さんが謝ればボクの方から父様に言ってあげるよ」

「何を? 君らの方こそ謝ってほしいよ。まぁあと、4年は我慢するけどね」

「ふざけているのですか!?」

「あまりここで大声を出すと悪評が流れてしまうよ。正門だしね」

「くッ」


 それだけ言うと僕は貴族専用の学園から遠ざかった。アデルには頑張ってほしいよ。僕は何も出来ないわけだしねぇ。もし僕が貴族としてここに通っていたら他の家からはいい顔はされないだろうな。それくらいには僕の悪評が流れている。全て家が流したデマだけどね。


 ある意味ではアデルも被害者だから恨むつもりは全くない。幼いのによく鍛錬もしていたのを見ていたんだから……それがこうなってしまったのは正妻のせいもあるからな。僕へのイメージが堕落貴族なのは仕方ないけど、アデルまで被害を受けさせたくない。あと婚約者さんの方にもね。


 そういえばフィーもこの学園で教鞭をとるって言っていたけど、貴族だけなのかな? フィーとは僕が7歳の時に森の中で血まみれで倒れていたエルフの名前だ。フィーが愛称ってことは教わったけど本名は知らないな。会えたら分かるからいっか。確か普通のエルフって言っていたよね。



 僕はクラス表を確認してその教室に向かおうとしたら教師みたいな人に引き留められた。平民専用ってのに意外とデカいからびっくりだよ。そんなことよりも今は目の前にいる人か。


「君がデオル・アグールか」

「はい。そうです」

「君の事情は聴いている。この学園で何か出来ると思わないことだな」

「・・・はい」


 はぁ……教師が警戒するのは分かるけど、何もやっていないんだよ。フィーから聞いたから僕は知っているけど、噂の内容が酷すぎるんだよ。何が傍若無人で気に入らない奴は”異空間”に追放するだよ。一回もやったことがないのに。


 これは僕が使用人や家の騎士のストレス発散に使われていた時に父が流したらしい。しかも見かねた辺境伯が自ら罰を下したってことになっている。真相は全く違うのにねぇ。前世だったら児童虐待で訴えれるぞ。1番しんどかったのは暴行の後に庭の大きな木に吊るされた時だな。


「心変わりしたのであれば我々から上に掛け合って貴族クラスに戻してもらう」

「それは結構です」

「へ?」

「面倒なだけですし、家が許さないでしょうし」

「君の実家からそう言われているのだが……」

「そうなんですね。そうだとしても結構です」


 教師はポカーンとしたので僕は「失礼します」と言って横切った。僕のスキルをよく知らないで変な噂を流せたものだね。“異空間”ってのは使い勝手はいいんだけど、追放するには向いて無さすぎる。僕がいくら時間の流れや環境を変えれるって言っても魔力を使う。


 無駄な魔力の消費は避けたい。しっかりと住めるようにした“異空間”は一つしかない。それをあの家の使用人に使うわけないだろう。ちなみに今、作ってある“異空間”は七つだ。大変だった。


 この世界はステータスが見れるのだが、ほとんどゲームみたいだったHPやMPなどもあったそレベルもある。スキルも色々と取得出来るみたいだけど、ポイントがいるから相当大変だ。レベルもそのポイントでアップさせることが出来るのだが……


「ここか。通り過ぎるところだった」


 今日から僕が所属する教室に着いた。1-Fと書いてあるのだけどもコレは一番低いランクを表しているとのこと。ZSというクラスも存在しているらしいけど、誰もそこに行ったことがない。


 冒険者も同様にランク分けされていて下からF.E.D.C.B.A.S.SS.SSS.ZSがあるらしい。フィーに教えてもらった時は「いや、多っ!!」ってリアクションしたくらいだ。確かフィーはSSSランクって言っていたと思うけど。


「おい、扉の前にいると邪魔だ!!」

「それはすまない。君もこのクラス?」

「だったら問題か? あぁ?」

「いや、僕もそうなんだよ。デオル・アグールって言うんだけど__」

「はっ、お前があの堕落貴族様かよ。・・・イメージとは違うな」


 そりゃそうだろうねぇ女神の祝福とか言う儀式が終わった後から腹いっぱい食えるのは3日に1回。肉は生焼け、パンはカビが生えてるしスープに関しては腐ったものが出て来ていたからねぇ。それを食わないと餓死する可能性が高かったから選択肢はなかったんだよ。


「君は?」

「ふん、狂犬のガーリーだ。冒険者でAランクだ」

「へー」

「お前から聞いたんだろ!! もっと驚け!!」

「ここじゃFだし。すごい人なのかも知らない」

「・・・決闘しろ」

「お断りします」


 僕はガーリーと言う女の子を無視して教室に入ったのはいいが先ほどまで賑やかだったはずの教室が静まり返った。僕が入って来たからではないって思いたいんだけど、タイミング的に僕が原因かぁ。とりあえず、さっきの子に名乗った感じで自己紹介したが何も反応を返してくれない。


 何もおかしなことはしていないと思うんだが、ここまで空気が冷たいのは久しぶりだな。もしかして僕の悪評を知っている人たちなのかな? 全部嘘だけど、そんなことを言っても信用なんてしてくれないだろうから何も言わないけどねぇ。


「お前……本当に堕落貴族だな? 私の決闘申し込みを蹴るのがどうゆうことか分かってんのか?」

「どうなるのさ」

「こうなるんだよ!!」

「危ないだろ」


 コイツ頭おかしいのかよ。教室で大剣を振り回すとか。そういえば狂犬って自分で名乗っていたけど、こうゆう所から名付けられたのかな。他の関係ない人たちまで巻き込むことはないだろうに……まぁ逃げようとしている奴をガーリーに向かって投げている僕が言えたことではないか。


 僕以外の人を斬る気はなさそうだな。それだけ分ければいいや。斬ろうとしたら即”異空間”行だったんだけどな。悪ではないから少し様子見かな。この教室には強力な結界でも貼っているのかってくらい丈夫だな。


 担任が来るまでは耐えるかぁ。

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