第五章:戦隊の誓い
アイが行方をくらませてから数週間——。
リリの中でその喪失感は、なお癒えぬままにあった。だが、彼女は立ち止まることを選ばなかった。
灰の戦士・リリは、正式に150代目ヒーロー戦隊の一員として迎えられたのだ。
リリ「……私が、ヒーロー戦隊に?」
ヒーロー協会幹部「そうだ。君の力は、もはやサポーターの枠を超えている。君が先の戦いで見せた灰色の閃光……あれは物理強化属性の極致。戦隊として戦ってもらうしかない」
リリ「……私ひとりじゃ、何もできないよ。私は……」
幹部「君は一人じゃない。アイ博士が遺した支援データ、そして我々が選んだ新たな仲間たちがいる」
こうしてリリは、新たな仲間たちと出会った。
紅炎の戦士・カイ「へぇ……お前が“灰色”のリリか。随分と落ち着いた顔してるな」
碧刃の戦士・ミナト「よろしく。あんまり喋らないタイプか?」
雷光の戦士・ルナ「灰って、無属性の一種なんでしょ? うちら、全属性集めて最強戦隊って感じだね」
リリ「……よろしく、お願いします」
その目はまだ揺れていた。だが、彼らの無邪気なやり取りと信頼感に、少しずつリリの心はほどけていった。
やがて彼らは、悪の組織の出現を察知。
リリたちは初任務へと赴いた。だが、戦場は想像以上に過酷で、敵は人造魔術兵器を操る未知の集団だった。
カイ「くそっ!数が多すぎるっ!」
ルナ「囲まれてる!退路が——!」
ミナト「待て、リリ!お前、何を——」
リリ「……私が前に出る。アイが教えてくれた、護るって戦い方……やってみせる」
全身を灰色の魔力が包む。
肉体が軋む音。精神が鋭く研ぎ澄まされる感覚。
敵の弾幕を物ともせず、リリは一人、敵の中枢へと突撃した。
リリ「私は、姉として……アイの妹として……今度は、護る側になる……!」
激戦の末、初任務はなんとか成功。
カイ「信じられねぇ……一人であそこまでやるなんて」
ルナ「これが、灰色のヒーロー……」
ミナト「……あいつ、まだ何かを背負ってる顔してるな」
その夜、リリは一人、空を見上げていた。
リリ「アイ……見てた? 私、ちゃんと……前に進んでるよ」
その声に応えるように、夜空のどこかで、淡い金色の光が瞬いた——。
(第六章へ続く)