第四章:決別と真実
ある日、空が割れるような轟音とともに、重力がひずんだ。
世界を覆うような黒い靄の中から現れたのは、明らかに“異質”な存在。
ヒーロー協会が全戦力を集めても敵わない強敵。その前に、リリとアイは立っていた。
リリ「……アイ、あれは……」
アイ「ああ、間違いない。強い。おそらく今までのどんな相手よりも、ずっとな」
リリは汗を握った手のひらで拭いながら、アイに向き直る。
リリ「……一緒に戦おう。私が支えるから、あなたがその魔術で――」
アイ「リリ姉、違う。今回は、逃げてほしいんだ」
リリ「え……?」
アイの顔はいつになく真剣で、どこか寂しげだった。
アイ「これは……お前のためにも、この強敵の出現は、必要だったのかもしれない。だが――ここでお前と別れないといけない」
リリ「……何を言ってるの? 逃げろって……一人で立ち向かうなんて……!」
アイ「この相手は、私の……いや、“仲間”だったんだ。攻撃的じゃない。でも、“敵”として動く必要があったの…いや…………」
リリ「じゃあ、あれは最初から……!」
アイ「そう。ここで私は“消える”。それが………に抗う、唯一の道なんだ」
リリは目を見開き、言葉を失った。
リリ「……私も、行くよ。あなたがいない未来なんて、望まない」
アイ「ダメだ。リリ姉は、生きてほしい。お前だけは、絶対に」
アイの瞳に、悲しみと覚悟が滲む。
アイ「私は、誰よりもお前を大切に思ってる。だから、私の選んだこの道だけは……信じてくれ」
強敵が一歩、こちらに歩み寄った。空間が軋むように揺れる。
リリ「アイ……やめてよ……そんな顔、しないでよ……!」
アイは小さく微笑んだ。
アイ「ありがとう、リリ姉。私は、ずっと幸せだったよ。お前の妹でいられて」
強敵がアイの元に近づき、その手に光を纏わせた。
リリの目の前で、アイの姿が強烈な閃光に包まれ――
リリ「アイ―――!!」
気づいたときには、そこには誰もいなかった。
アイの気配も、強敵の姿も、どこにも残っていない。
取り残されたリリは、何も答えのない空に向かって、ただ、立ち尽くした。
灰の風が、そっと彼女の頬をなぞっていた。




