4にゃ
思考にふけっていた吾輩は気が付くとレベッカの頭に乗っていた。
どうやらレベッカの手によって乗せられたようだ。
自分の世界に入り込みすぎていた。
天才猫である吾輩はこうやってすぐ考え込んでしまう癖がある。
気をつけねばならぬことをわかってはいるが……
レベッカはどうやら自分の村へ戻っているようである。
楽しそうによくわからない歌を歌いながら歩いている。
悩みがなさそうで、うらやましい限りである。
吾輩が来た方角には先ほどの巨木が多くそびえている。
だが、レベッカが向かっている方向にはそれほど多く木は生えていない。
どうやら吾輩は森の中心部にいたようである。
なぜ吾輩はそんなところにいたのか、ますます謎は深まるばかりであるな。
「レベッカ!」
レベッカを呼ぶむさくるしい声が聞こえる。
「お兄ちゃん!」
なるほど、こやつがレベッカの兄か。
レベッカと同じ金髪だが、体格が全く違う。
身長はおそらく180㎝ぐらいで、ジムで鍛えているみたいにマッチョである。
ちなみに吾輩はジムにいたあのマッチョどもは嫌いではなかった。
なぜならあやつらはよく鳥肉のささ身をエサにくれたからだ。
少し味が薄かったが、あれはあれでうまかった。
またいつか食いたいが、それは果たして可能なのだろうか?
「レベッカ、その頭にいるものはどうしたんだ?」
マッチョが吾輩を指さす。
「この子はね、クロマルっていうの!」
なんだと!なぜ吾輩の名前をレベッカが知っているのだ!
「黒くて丸いから、クロマルって名前を付けてあげたの」
、、、子どもの考えはどこでも変わらないということか。
まあ、吾輩もこの名前に愛着を感じている。
よくわからないダサい呼び方をされるよりましである。
「名前を聞いているのではない、どこで拾ってきた」
「近くの川でお水を飲んでるの見つけたの!かわいいでしょ!」
吾輩のかわいさがまた一人の幼女を虜にしてしまったか。
天才でかわいい、まさに吾輩は完璧であるな。
「元の場所に戻してきなさい」
バカな、このマッチョには吾輩の魅力がわからないのか?
まあ、マッチョにモテても困るが。
あやつらはいいやつが多いのだが、力が強いのでなでるときに
少し痛いのが玉にきずである。
そして、兄弟げんかが始まってしまった。
マッチョ(名前はダニエルというらしい)が吾輩を森に戻してこいと言う。
そして、レベッカがそれに反対する。
それはともかく、吾輩は大きな問題を抱えていた。
それは、、、腹が減ったのである!!
あのくそまずい実も1口しか食べていないので、空腹は続いている。
とにかく何か食いたいのである。
それを主張するため、伝わらないのを承知でニャーと主張してみる。
「ほら!クロマルもレベッカと一緒にいたいって言ってるよ!」
そんなことは言っていないが、メシをくれるなら考えてやろう。
「そんなわけないだろう、おおかた腹が減っているとかであろう」
なんて優秀な男なんだ、ダニエル。
ダニエルの言葉に同意するように再びニャーと鳴く。
「では、今日一日だけ家で面倒を見よう」
ダニエルがそう提案する。
「腹をすかせたまま森に返すのは、あまりにもかわいそうだからな」
「ほんと!お兄ちゃん!」
「ああ、でも今日だけだ。明日には必ず森に戻すからな」
「なんで!」
「こいつの親や仲間が探している可能性があるからだ」
残念ながら、吾輩は数年前から一人猫である。
「あ、そっか!そうだよね。じゃあ今日だけ一緒に寝ようね」
いつのまに一緒に寝ることになったのだ。
「明日になったら、レベッカがお友達、探してあげるね」
まず、見つかることはないであろうな。
それより空腹で死にそうだ。早く何か食わせてくれ。