21にゃ
吾輩は今ピンチに陥っていた。
「おい、お前。なんでこんなところにいるんだ」
吾輩は冒険者のランドによって宙づりにされていた。
吾輩は行商人のティルの荷物に紛れて、町に向かっていた。
吾輩もバレてはいけないと、最初はティルやランドの行動に気を配っていた。
しかし、途中から吾輩の悪い癖が出てしまった。
飽きてしまったのである。
吾輩とてよくないのはわかっておる。
むしろ、あいつらが悪いのである!
あやつらは食事時ぐらいしか荷台を確認しないのだ。
だから、最初は緊張感があって楽しかったのだが、途中から慣れてしまったのだ。
ふかふかな回復草の上で居眠りをしたとしてもしょうがないではないか!
「ティム。こいつ、どうする?」
ランドが吾輩をぶら下げたまま、ティムに尋ねる
「どうすると言われましても。いまから村に戻るわけにはいきませんし……」
ティムは困った顔をして答える。
「とりあえず町まで連れていきましょう。どうするかはそのあと考えましょう」
ティムは吾輩の扱い方を考えるのを先送りにした。
「良かったな。おまえ」
ランドが吾輩からぱっと手を放す。
吾輩はネコとしての本能が発揮し、すたっと着地する。
「おっ、結構身軽なんだな。確かクロマルだったか?」
ランドが吾輩の動きに感心する。
ふふん、すごいであろう。あまり吾輩を見くびらないでほしいな。
「たしか、レベッカちゃんがそう呼んでいましたね。頭もいいみたいですよ」
ティムが吾輩の頭をなでる。
吾輩の優秀さがわかるとは。ティムはなかなか優秀であるな。
吾輩はティムに賞賛のニャーをしてやる。
「それより夕食の準備をしましょう」
ティムがランドに声をかける。
「あぁ、そうだったな。こいつのせいで忘れてたぜ」
そう言って、そのまま2人は食事の準備を始める。
「明日にはテレーサに着きそうだな」
食事を終えたランドが片付けをしているティムに声をかける。
ちなみに食事は村の時よりも少し具の多いスープとパンだった。
ティムは吾輩の分もちゃんと用意してくれた。
少しだが肉も入っていて、なかなかうまかったのである。
「そうですね。大きな問題も起きずにテレーサに着けそうでよかったです」
テレーサとはおそらく町の名前であろう。
「小さな問題はあったがな」
ランドが吾輩に目を向けて言う。
「もしよければなんだが、クロマルはオレが預かろうか?」
ランドがティムにそう提案する。
なんだ?町に着いたら考えるのではなかったのか?
「そうしていただけると正直助かります。でも、どうして?」
ティムも急な提案を疑問に思ったようである。
「あぁ、クロマルだったらアイツの遊び相手にちょうどいいと思ってな」
「アイツ?あぁ、リンちゃんのことですね」
リンちゃん?誰であろうか?
「クロマルなら小さいし危険性も低そうだしな」
そう言ってランドは吾輩を持ち上げる。
「リンちゃんの体調はいかがですか?」
「すぐにどうこうなるわけではないが、少なくとも良くはないな」
ランドは吾輩をなでながら、ティムの質問に答える。
こやつ、なかなかなでるのが上手であるな!
「そんな状況なのに、護衛を引き受けていただきありがとうございます」
ティムがランドに礼を言う。
「気にしなくていい。クルーツ村の回復草はリンの治療に必要だからな」
ランドが吾輩のアゴの下をなでる。
「もしかして、だから護衛を引き受けてくださったんですか」
「あぁ、あの村の回復草が町に届かなかったら、おれが一番困る」
どうやらあの村の回復草はなかなかいいものだったらしい。
よかっであるな、レベッカ……
吾輩が覚えているのはそこまでであった。
ランドがなでるのが上手すぎて、いつの間にか眠ってしまっていたのである。
そして、吾輩が気づいたときにはすでに町の中にいた。
第2章開始しました。毎日更新していきます!
今日は15:00にも更新します。
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