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Case 01-3

2019年9月19日 改修完了

2020年4月28日 第二次改修完了

2020年5月19日 第三次改修完了

2020年7月13日 第四次修正完了

2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期

2021年02月03日 上記修正内容と同期

2021年02月10日 上記修正内容と同期

2022年02月28日 内容変更


 意味不明な使命(オーダー)を押し付けようとする声の主たちが追い払われた

 そこに明らかに作り物っぽい天使のコスプレをした少年が現れる……




【TIMESTAMP_ERROR 転生の間?】




「……何者だ?」

『という事で次行ってみよう』

「おい、ちょっと待て」


 この少年はちゃんと八朝を見ている……ようにはとても見えない。

 ただ、今回は実体がある存在のおかげでキチンと反応が分かった。


(もしかして、聞こえていないのか?)


 少年が耳に手を当てて何か音を探すような仕草を行うが

 何も見つからなかったらしく、ヤレヤレと嘆息する。


無言(・・)は肯定として受け取るよ

 それじゃあ、こっち来て鏡をよく見てごらん』


 一歩後退った少年が鏡を実体化し

 両手で持ってこちらに向けてくれる。




 鏡の中に、脳と眼球と耳が空中に浮いている怪現象が映し出される。




「な……!?」


 驚愕に顔が歪ませた気配がする(・・・・・)

 今更思い出したかのように周囲を無感覚が包み込んだ。


 漸く天の声擬きや少年が自分の話を無視する理由に思い当たる。

 少年はそんな代わり映えのしない有様を見て、こちらに笑顔を向ける。


『その姿だと何かと不便そうだし

 創造神の名に賭けてキミに相応しい身体を作ってみせよう』


 少年は鏡を消し去ると

 4つのホログラムのような画面を空中に呼び出して何らかの作業を始める。


『さて、最初の準備が完了したよ』


 作業開始から1分も経たない内にそう宣言される。


 驚愕を隠し切れず、創造神に促されるままに別の方向に向き直る。

 椅子の後方5m辺り、そこにはいくつかのの棒立ちになった人体が並んでいた。


『さ、君の身体を用意したよ

 つまりキャラメイクってところだね』


『いっぱいあるから、じゃんじゃん選びたまえー』


 八朝(やとも)は並べられている人体に近づく。


 キャラメイクという理解不能な単語が出たが

 なるほど確かに選択肢は多岐に渡っている。


 一例を上げてもこんな感じである。




  ・端正な顔の美男子

  ・筋骨隆々の中年

  ・肥満だが理知的(スマート)な印象の女性

  ・華奢で欧米風の幼女

  ・宙に浮いた胎児

  ・体中に深く皴と刺青が刻まれた老人

  ・(暗くて見えない)

  ・(暗くて見えない)




『きみの魂を走査して作ったものだから、

 どれにしようか迷っちゃうのは仕方ないよねー』


 その言い方に微かな違和感を抱く。

 だが文句も言ってられない状況なので後に質問攻めにすることにする。


 そうしていると途端に目を引くものが現れる。


 長い黒髪に髪飾りが留められ

 全体的に白く顔は艶めかしく赤みがかかっている。


 しなやかな肢体の少女から目が離せなくなる。


『お、いいじゃんいいじゃん

 これできみは明日からTS生活だね!』


 確かにいいかもしれない。


 記憶を失くし、本能に抗う経験(こんきょ)の無い八朝(やとも)

 まるで催眠術に陥ったようにふらふらと髪飾りの黒髪少女に近づいていく。


 その雪の結晶のような髪飾りに触れようとした瞬間に異変が生じた。




(……ッ!!??)




 八朝(やとも)は先程の数百倍レベルの頭痛に見舞われる。

 その余韻で正常な視界が保てない。


 痛みで正気に戻った八朝(やとも)

 自分がこの身体達のどれとも違う長身の青年であることを思い出す。


(いったい何……が……)


 ふと黒髪少女を顔を見ると

 右頬に皴を刻むくらいに妖しい笑みを浮かべていた。


 舌なめずりをして、目を閉じながらこちらにじっと顔を向けている。


 弾かれた様に更に隣を見ると

 何故か何もなく列が歯抜けになっている。


 よく見るとラストに『百目鬼』と、それに怯える黒髪の少女がいた。


『あれ、どうやらご不満で?』


『うーん……これでも苦労して作ったんだよ

 きみの『新しい自分になって生まれ変わりたい』のニーズに応えただけだよ』


(もういい)


 八朝(やとも)は創造神に費やす意識をカットし

 先ほど思い出した自身の姿の記憶に集中する。


 先程、あの神霊がやっていたことを再現する。


 4つの画面……だけではどうにもできないので

 目を閉じて一つの()のイメージを作る。


 すると、怯える少女の瞳の中に一人の青年が出現する光景が映る。

 最初は短髪、三白眼、背は高く、筋肉はもやしとゴリラの中間である男の裸体。


 最後に見覚えのある制服一式が独りでに着せられ

 宙に浮かぶ脳髄が、普通の男子学生を自力で形成した。


「これでいいんだろ」

『エクセレント

 まさか僕の魔法を完全模倣するなんて予想外だ』


 満足そうに頷く創造神。


 誇らしそうな視線を八朝に向けているが

 それが信頼感に依らない不気味なモノである事に気付いている。


『あ、ちなみに

 万が一でも他のを選んだら……』


 創造神がカジュアルに八朝(やとも)の魂に似せたオーブを作り出す。

 それが老人のアバターに入り込むと、無数の目を生やして爆裂した。


「ひっ!」


 黒髪少女が完全に怯えてしまっている。

 それを庇うように少女と少年の間に八朝(やとも)が割り込む。


「これのどこが『キャラメイク』とやらか言ってみろ」


『えー、ちょっと動いたり変な力があったりするだけじゃん!

 それぐらいの誤差(・・)なんて君なら乗り越えられると信じているよ!』


 創造神は純粋な瞳を煌めかせるように、そう答える。


『あ、その人たちは全員君の仲間だから連れていくと良いよ』


 八朝(やとも)が抗議の声を上げる前に大勢に囲まれる。


 それは服を着ている以外は先程までのキャラメイクと瓜二つで

 各々に自分の状況を確認し、やがて八朝(やとも)達を発見するとすかさずワッと集まる。


「俺は■■ってんだ、よろしくな!」

「ここは一体どこなのじゃ……」

「さぁ、そんなの知る訳ないじゃん。

 あー■■ちゃんごめんねぇ、ごはんでちゅよー」

「あうー」

「あ……ヴぁ……ェ……コポポ」


 あの百目鬼すら友好的という状況に八朝の頭が追いつかない。


 取り敢えず目の前にいる未だに服を纏っていない女の子に近づいていき

 自分の着ているコートを少女に適当に羽織らせる。


 ふと、胸ポケットに何かやや固い違和感を感じる。

 取り出してみるとどこにでもあるような手帳型のメモ帳(リングノート)であった。


(日本語……?)

『なるほどなるほど

 そのメモ帳は君の助けになる、是非とも無くさない事をお勧めするよ』

「どういう意味だ?」

『……いずれ必要になるさ』


 創造神は両手を広げて八朝(やとも)達を扉へ促す。


 あの女の子も八朝(やとも)を急いで追いかけるが

 1m以内に近づかない所で止まって様子を伺っている。


『さぁ、最終試験だ

 この迷宮(チュートリアル)を超え、地上を目指すんだ!』


 電子音っぽいファンファーレと共に扉が開かれた。

 外には空の青とは違う光を湛える、水浸しの廃墟の街が広がっている。


 何もない空を、団結を誓う鬨の声が際限なく響き渡った。


続きます

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