●Case 01-2
2019年9月19日 改修完了
2020年5月4日 第二次改修完了
2020年5月19日 第三次改修完了
2020年7月13日 第四次修正完了
2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期
2021年02月03日 上記修正内容と同期
2021年02月10日 上記修正内容と同期
2021年03月29日 内容変更
2022年02月28日 内容変更
2026年05月09日 内容修正
【TIMESTAMP_ERROR ?追憶-001】
目を開けると四方八方を真っ暗闇に囲われていた。
(今度は何だ?)
八朝は前後関係の断絶に、そのように呻く。
夢にいて、学校で授業を受け、今度は正真正銘の無の真っ只中。
これで二度目なので、狼狽せず待つ事にする。
小一時間の後、何もなかったここに初めての『声』がもたらされた。
『おお、勇者よ!
死んでしまうとは情けない!』
随分と軽いノリで死亡宣告されてしまう。
そうは言われても、そもそも『死ぬ』とは一体?
『故に不出来な貴様の魂は410番目の売却処分に出され』
『我等の世界の所有物となった』
『即ち、これは貴様の世界における異世界転生なのである』
声の主は数人いたらしい。
その割には誰一人として、八朝の都合を無視し、矢継ぎ早に何かを語る。
但し、どの語彙も理解の範疇を超えている。
洪水のような音を聞き流し、別の手掛かりを探そうとする。
そこに、無視できぬ違和感があった。
『安心するがよい、貴様は間違いなく人間だ』
言われなくとも、八朝は一般人である。
やはりこの声達は、自分の都合でしか言葉を発していないようだ。
『大枚を叩いて導入された貴様には』
『魂の枯渇が止まらぬ我らの世界の役に立たねばならぬ』
『故に……』
云々。
以降、飽きるような長話のアンコール。
なので違和感について考えてみる。
先程から、離島・本土の学校・今の状況と場面が目まぐるしく変わる。
どれが現実なのか、どの場面でも問題を抱えている。
(少なくとも、今は流石に夢だろう)
もう一度状況を確認しようとして
同じ結論に至った。
声の主以外の感覚が、全て消えてなくなっている。
(……流石に冗談と言ってくれ)
その状態と符合するのは離島の最後の場面。
即ち、大破壊でゴミクズのように死んだ後の感覚喪失。
死後の世界、その五文字が過ぎる。
『『『『喝!!!!!!!!』』』』
全方向から脳を殴りつけるような怒声が発せられる。
あの声の主が一斉に俺への嫌悪感を表明したらしい。
「……少し、黙っててくれ
今、起きた事を整理している所なんだ」
『その割には流暢に喋るではないか』
『であれば問題は無かろう』
『我々の都合を優先させるがよい、廃棄物風情が』
尚も言い募る声の主達。
人を『廃棄物』とは随分な物言いである。
『貴様は我らの世界を救うべく!』
『魔王を倒せ!!』
『それが貴様の使命である!!!』
もう彼らに構う必要もない。
幸いにも道筋が示されたのである。
集中すると、再び頭痛に覆われていく……
◆◆◆◆◆◆
両肩に、信じられない重量を感じる。
高々、枯れ木のような両腕に掴まれた如きで、何故。
それは、両腕の源となる人物からの重圧。
夥しい死の臭いが、まるで鼻の粘膜を焼くように
『◾︎◾︎よ
貴様の復讐、実に見事であった』
皮肉のように聞こえる。
視線は老人とは異なる、背景の地獄へ逃れようとする。
『しかし、気づいておるのだろう
お主の求める物は、もうここにはない』
逆上しそうになる。
(……)
大切な誰かから呼ばれた『……』の像が
この老人の汚らしい痰に絡め取られるようで
今にして思えば、本当はそうでもないのに。
『徒に屍を積み上げても無駄じゃ』
口角を吊り上げ、蔑むように
喀血までして風前の灯でしかない、コレ如きに
眼も意識も、己の全てが彼に呪縛される。
それは、常識的な追憶がそうであるように
『記憶的予定調和』に基づいた、抗いようのない
『お主もまた、儂と同類よ』
◆◆◆◆◆◆
追憶から戻って、猛烈な吐き気に襲われそうになる。
しかし、ある疑問が浮かぶ
何も身に覚えの無いはずなのに
まるで記憶にあるように、ざらついた嫌悪感が。
『『『『喝!!!!!!!!』』』』
またも中断される。
喝を過小評価し過ぎたらしい。
『我々の許可なく何をしている』
『記憶なぞ必要ないだろう』
『貴様は使命のみを果たせばよい』
そう言われても『魔王討伐』が何なのか説明してくれない。
そもそも『魔王』が一体何なのか何も見えてこない。
……いや、彼らにそんな期待をするだけ無駄だろう。
「健忘症相手に無茶を言いやがるよな
そこはまず『記憶を取り戻せ』からなんじゃないのか?」
声の主たちに1ミリ程度の期待を込めて疑問を投げかけてみる。
『魔王を倒せ!』
『『魔王を倒せ!!』』
『『『魔王を倒せ!!!』』』
……全く会話にもなっていない。
どうやら先程の懸念は正しかったらしい。
「そもそも俺は廃棄物ではなく八朝風太だ」
「ついでに言うと本当だったら高校に通ってる
まぁ、金は好きだな……それさえあれば使命?とやらも聞いてやr……」
『『『『喝!!!!!!!!』』』』
もう何度も聞いた天の声擬きの駄々っ子である。
そう言えば、もう一つ試していないものがあった気がする。
「魔王を倒せか、お断りだ
ついでに使命も俺が『勝手に』決めさせてもらう」
「俺の使命は『記憶遡行』
つまり……失った記憶を全て取り戻す事だ!」
そう宣言すると真っ暗闇の空間を埋め尽くすように光球が現れ始める。
火、水、氷、雷、烈風、怒涛、閃光、轟音、瘴気、金剛石、特異点、魔法陣、スノーノイズ、刺々しい水銀、焼けた汚泥、魔力の猛り、擦れ合う数多の薄刃、嫌な音を立てて人体を咀嚼する血の塊。
ありとあらゆる滅びのカタチが八朝の姿を捉えて離さない。
『身の程知らずが』
『やはり不良品であるか』
『煩わしくあるが』
『使命に相応しく、一から改良してくれよう』
星々がバクンと脈動し、次々と八朝に向かって落ちていく。
近づく毎に大気全体が混ぜ返されて重く高い二重の鳴動を撒き散らす。
『お前はその傲慢さ故に』
『滅び去る』
「そうかい
お前等が409人も無駄にした理由が良く分かったよ」
『戯言を抜かすな
貴様はその410番目となる……滅べ!』
『それは困るなぁ』
突然暗闇が叩き割られ
崩落点から眩い白光が降り注ぐ。
亀裂が全ての星を捉え
そのカタチを犯し潰していく。
『……!! ……! ……』
星々の輝きが鈍るたびに
天の声擬きの声も徐々に聞き取れない代物に劣化していく。
まさに死したかの如く無音となった。
『あり得ぬって言ってもさ
偶にはそんな使命でもいいんじゃないかな?』
逆光に覆われたシルエットが光の漏れ出る空よりゆっくりと降り立つ。
地に足を付けた瞬間、暗闇が一瞬で吹き払われ真っ白な空間に様変わりする。
急激な変化に追いつけない八朝の視界を鋭く明滅させ、きらきらと捻り込む。
『という事で、きみのその使命を受け入れよう』
そこにいるのは少年であった。
金髪黒眼でカーキー色の襤褸を身に纏い、頭上に光輪と背中に1対の羽根。
どう見ても作り物にしか見えない天使のような何かであった。
続きます




