Case 03-7
2020年7月13日 Case 03より分割完了
2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期
2021年4月21日 ノベルアップ+版と内容同期(二回目)
【同日同時刻付近 水瀬海岸(辰之中)】
駆け上がった光は高度45°付近で真っ白に咲き誇る。
エリスの証言で、疑惑が確信に変わり、恐怖に引き攣った声を上げる。
「エリス!」
『Hpnaswbjt!』
この光は元の世界で既に知っている。
架空の映像コンテンツであるが、確かアレは非人道兵器の一つ。
備考:
【!】WARNING【!】WARNING【!】
Enemy Firing "M590mod FFF-PAS.zip"
Brace For Impact
光の中から現れたのは、黒い釘の豪雨であった。
それらは八朝達の前方200m、後方100mの範囲を
正に巨人の棍棒が一撃でサイロを叩き潰すが如き轟音を伴って蹂躙した。
破滅の二分音符が過ぎ去ると、土煙の中でエリスの障壁魔術が見える。
八朝達には把握できていないが、半径2mのドーム状の障壁だけでも500本近く散乱していた。
土煙が晴れてから辺りを見渡すと
びっしり生えた黒い釘によって明るい夜空を映す水面が黒く濁って見える。
「何……今の?」
三刀坂はとても恐ろしいものを見たような表情で障壁を見上げる。
新たに張り直された三重障壁のうち2つが既に存在せず、残っていた障壁もびっしりとヒビが入っている。
神出来は幸運にもギリギリ障壁の範囲内で無傷であった。
『あの化物の攻撃だね
丁度その辺りに反応見つけたし』
「エリス、あの釘の攻撃、1階梯水属性電子魔術で止めれるか?」
『無理無理無理!
計算が終わる前にふうちゃんたちが肉骨粉になっちゃうよー!』
無情にもここで作戦会議が中断される。
何故なら、同じところから2発目の花火が上がり始めたからである。
「あ……」
「エリス! 間に合わない! もう一度障壁!」
『Hpnaswbjt!』
再び鋼鉄の豪雨が圧し掛かる。
ボロボロになった魔法障壁の向こう側で、あの筒を片手で構えた化物がこちらに迫ってくる。
その射線をこちらに向けて、同時にRATから再びシステムアラートが鳴り響く。
備考:
【!】WARNING【!】WARNING【!】
Enemy Firing "M371A1mod2 HeatPress"
Brace For Impact
化物の持つパイプから放たれた弾丸は
半球状の障壁に激突し外層をかみ砕きながら斜め上に跳ね上げられた。
HeatPress……即ち成形炸薬弾に燃料気化爆弾の性能が加えられたものである。
障壁の内側で大爆発を引き起こし
有りっ丈の一酸化炭素を肺に押し込んで死に至らしめる悪魔の兵器。
現代科学で作成不能な超兵器が不発のまま、八朝達の後方を空しく飛んでいく。
『Qnge zc clwuobpzd eb / Qouk ja lu bax jr kafzwkh wx / Yzsbwf ji fpurzf enpep ml iagtsdjq ii』
『Dkntqjld!』
唐突にどこからか電子魔術の詠唱が聞こえ
後ろから音階が極限まで下げられた風鳴りが聞こえ始める。
付近の空間を捻じ曲げて進む超重力弾が、神出来に向けて発動される。
「しまっ……!?」
八朝は目の前の化物に注目し過ぎて反応が遅れた。
三刀坂は悍ましい予感がして神出来の方に振り向いてしまったために化物の接近を許してしまう。
そしてRATは化物が超重力弾の方へ突進していき
すんでのところで踏みとどまっている様子を電池切れのスノーノイズの中で認識した。
「え……?」
「化物が……異能力者を庇っただと……!?」
絶句する八朝と三刀坂は
全身に細かくヒビが入っている化物から5つの赤い光点が現れるのを目撃する。
そうして二人が認識する背景は、急速に色褪せて真っ暗になっていく。
暗闇に引き寄せられるように、化物との距離が引き離されていく。
「クソッ! 引き離される!」
どうにかしようと足掻く八朝には三刀坂の呼ぶ声が聞こえていない。
どころかいつの間にかあの五月蠅いRATもすっかり静かになっていた。
そうして暗闇の中を走っていると急に闇が晴れた。
【同日・朝(7:10) 南篠鶴地区・某所】
「!?」
反射的に上体を起こす。
走っていたはずがいつの間にか寝かされていたらしい。
窓から朝日が差し込み心地よい天気が八朝を迎えていた。
布団を跳ね飛ばすように起きた八朝はある違和感に気付き始める。
「あれ……俺は確か後遺症で寝れない……それにここは」
八朝の自室は和室であるはずだが
ここはペールトーンの桃色が主軸となっている。
それに見慣れない家具も多い。
ふと壁にかかっている表彰状に目が映る。
そこに書かれていたのは……
「神出来……縁……ま、まさか……」
ふと横を見るともうひとり分のスペースが余っていた。
そのふくらみが、可愛らしい唸り声を上げながら起き上がる。
服装も確認した時と同じ、間違いなく神出来縁本人であった。
「……」
目を擦り、ばったりと目が合う。
脳処理がオーバーフローして冷や汗をかいている八朝と
段々と意識が明確になるにつれて顔を引きつらせる神出来。
「ッッッッッ!!!!!」
八朝は異能力者の身体強化が乗った平手を食らう。
それでも意識を失えなかったので、その場から逃げ出すが今度は様々な小物が豪速球で飛んでくる。
混乱し過ぎて鍵の開け方を忘れてしまい、ドアにへばりついてしまった八朝はふと昨日のカードの事を思い出していた。
審判の逆位置
意味:再起不能
【TIMESTAMPERROR 弘治の隠れ家】
「成程……それで平手打ちを食らったと」
「簡単に言ってくれるなよ」
もう治った筈のタコ殴りの傷を擦りながら
弘治に今回の事件の顛末を語った。
大まかな概要としては以下のようになる。
依頼者からは拒絶され、部長からはゴミを見るような目で睨まれ続け、三刀坂からは無視される事となった。
勿論雪代屋での甘いひと時も、しびれる程に無味恐慌な空気の中執り行われた。
取り敢えず依頼者の夢遊病を改善すべく
水瀬地区の学生寮への転居も決まり、それ以降は生傷もないらしい。
因みに頼りにしていた記憶遡行もハズレ。
どころか、三刀坂と依頼者の日常という意味不明な内容であった。
無論、こんなものでは笑い話ぐらいにしかならず……
「汝も健全な……否、健全すぎる男子であるな」
という感じで弘治にも憐れまれたレベルである。
こんなものを話題にする訳にもいかず、話を切り替える事にした。
「まあ、歳刑神がハズレで良かったと思うよ」
「そうはいかん
眷属よ、おかしいと思わないか?」
「何がだ?」
「水星の魔方陣……それは明らかに依頼者の異能力ではない
しかも聞き覚えの無い電子魔術の詠唱、もう分かっているのではないか?」
「この事件にはもう一人別の人物が噛んでいる」
弘治の指摘は尤もである。
だが何のために神出来を狙っているのか。
しかも『異世界知識』を持ち出してまでの犯行。
自然とその犯人像は固まっていく。
(鹿室……或いは掌藤親衛隊のいずれか)
そして水星の魔方陣を見抜いた咲良も例外ではない。
だが、それだけの人間が狙う価値を彼女が持っているとは到底思えない。
事件は多大な謎を残して、一応の幕を引いたのだった。
【2■時■■分 ■■■■■】
「タリナイ……タリナイ……」
真夜中の空の下で、幽鬼の様に繰り返す。
痩せ細った身体が悲鳴を上げている、熱が体内を焦がしているのに手足に力が入らない。
「ノガシタ……ノガシタ……」
恨めしそうに呪詛を繰り返す。
水平線を窪んだ目で睨み、四つん這いになりながら血溜りができるぐらいに両手を握りしめる。
「ツギコソハ……ワガアルジ……ニ……」
顔だけを起こして、何もない虚空を狂気に陥った人特有の四白眼で眺める。
そこにまるで何かがあったかのように気づいて、口を半月のように歪める。
「否……我ガ生贄ヨ、暫クハ生キ延ビヨ」
◆◇◆◇◆◇
使用者:神出来縁
誕生日:7月25日
固有名 :Rhumvha
制御番号:Nom.81688
種別 :S・VENTI
STR:3 MGI:2 DEX:1
BRK:1 CON:2 LUK:4
依代 :鍵
能力 :門戸接続
後遺症 :夢遊病(改変の可能性有)
■■■■■■■■ ■■■
■■■■■■■ 03■■ 夢走 - In Dream Wondering
END
これにてCase3
『■■■■■の魔の手』の回を終了致します
『彼が忘れていた一人は三刀坂の事かも?
彼女、やけに八朝に突っかかってきますし……』
『あと記憶遡行の内容が変でしたね
八朝じゃなくて依頼者のものだし、状況的にも……』
『それよりも前に真犯人探しです
まずは直近に会うかもしれない鹿室から始めましょう』
『次回は『鹿室の証言』
引き続き見守って頂けると嬉しいです』




