Case 01-1:異世界人を変換する能力
2019年02月02日 完成
2019年04月30日 第一次修正
2019年06月18日 第二次修正
2019年09月19日 構成変更
2020年07月13日 第三次修正(タイトルのみ)
2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容を同期
2021年02月03日 上記修正内容と同期
2021年02月10日 上記修正内容と同期
2021年03月29日 内容変更
2021年09月29日 ストーリー変更(全体移転・書き直し)
2022年02月28日 内容変更
2025年05月17日 内容変更
……。
…………。
………………。
潮騒からは遠い、
展望スペースとして整備されていない東屋からの景色。
見上げると大空の景色と、
陰とはいえ様々な表情が見えなくもない木目の紋様。
眼下には長閑だが、色々と煩わしい港町の色彩。
それらが自分にとって何の意味も持たないこの光景こそが
彼にとって救いであった。
言い換えるなら虫眼鏡もなしに
羽虫を観察することに等しい。
レンズ越しに見る羽虫は複雑で、生き生きと動き、
どれをとってもグロテスクなのに対して、
裸眼で見る羽虫は空間を泳ぎ回る単なる点に過ぎない。
『……。』
学生としての本業を怠り、
田舎という緩い倫理観で許された自由を謳歌することに
流石に疑問は持ったのか。
言い訳のように教科書を開き、
義務ですらない勉強を始める。
『ここにいたんだぁ』
間抜けな声と背中を叩かれる衝撃でのろのろと振り向く。
彼女は居候先の娘で、
島で唯一の同世代の人間で、割と仲が良く……?
(あれ? どういう姿……していたんだっけ?)
自分にとっては日常の習慣のように
染みて取れない記憶のはずが、
洗い流されたかのように思い出せない。
『全く、それではこの先思いやられますよ』
『早く戻りましょう』
続いて同性と異性の友人。
彼らは自分に恩があって
その縁で互いにそれなりの関係まで進んで……
(いや、この島の同年代は……!)
怪訝な顔をしていたのだろう。
二人は困った表情で見つめあっている。
『何が起きたかは分かりませんが、
そろそろ午後の授業が始まるので行きましょう』
二人に手を引かれて、山の頂上にある校舎へ。
無論、そんな狭隘で傾斜のある土地に
校舎なんて存在しない。
だが
(どういうことだ? 夢でも見ているのか?)
記憶にない校舎に吸い込まれていく。
手を引かれる力は強く、
やがて屋内の暗さが目立ち始めるとともに
二人の気配がまるで幻覚から覚めたように消える。
「……何だ、どういうことだ!?』
明らかに暗すぎる下駄箱で、
その異様な光景が徐々に鮮明となっていく。
折り重なる死体の数数。
口から黒い血の跡を垂らし、
目を見開いて各々が苦悶の表情で絶命している。
……何も見覚えが無いのに、確信だけはある。
ざまぁみろ。
(……!? そんな筈はない!
一体何が起きて……)
ふと、自分を引いてた両腕が見える。
その先には何もなく、
断面から一滴も血が溢れていない。
既に腐乱した後の人体の残骸。
その直下に、先ほどの二人がいた。
「どうした! しっかりしろ!」
『しっかりって、何のこと?』
「無事なのか、よかっ」
無事であるはずがなかった。
あの腕の持ち主なら、
既に……いや、少なくとも数日以上前に。
『よく見てよ、無事な訳ないでしょ』
「……!」
『またそういう顔するんだ、しらばっくれちゃって』
「何が……」
『今度は逃さない』
両頬をゾッとするほど冷たい手の骨で掴まれる。
あの2人のものではない、
本当の、この世界でただ1人の友人の声をした、
崩れかけの骨が。
『これが、君の罪』
「……ッ!」
激しい頭痛と共に起き上がる。
衝撃で机からは鋭い音、
椅子は床面を引き摺る音、そして驚く教師の表情。
『何だ、どうした◾︎◾︎
そんなにこの問題やってみたかったんか?』
風景は変わり、20人程度のいかにも都市型の普通の教室。
黒板に書かれているのは『魔力の諸原則の提唱者』、
白墨の付近は『属性魔術』
そんな学問など存在しない。
「……ッ!」
ふたたび激しい頭痛に襲われる。
立っていられない程の衝撃に頭がくらみ、
風景が歪み始める。
「◾︎◾︎! どうした!?
……まさか二回目か! おい!」
教師の指示と共に身体が担ぎ起こされる。
謎の授業は一時中断し、患者の自分は保健室まで歩く。
「◾︎◾︎君」
心配そうにする保健委員の声。
にしてはノータイムで肩を貸してくるなど、
割と距離が近い?
でも何も思い出せない。
「ゆっくりでいいから、思い出して」
凡そ普段の生活ではお目にかかれない励ましと共に
意識が寸断される。
時は3か月前
転生したての頃に遡る……
第一章 : A Ailment of Awaking and Amnesia
初めまして。仁更秦雀と申します。
小説初心者の身でいきなり長編小説を書こうとしていますが
生暖かい目で見守って下さい。
ご意見、ご指摘などがありましたら
忌憚なくアドバイスして頂けると幸いです。
それでは、この小説ともどもよろしくお願い致します。
9月19日追記
この話は7分割されたCase1(第一話)の冒頭に当たります