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EP89 ガーディオンVS

夏本番!


元気出してこー

 ロウフェルはナノマシンからロングソードとカイトシールドを造り出し、サダコは身長の二倍はある巨大なステッキを造り出した。


 二人が武器を取り出した事で迎撃モードへと移行したガーディオン型アンドロイド達は、数にして数十体。ぐるりとクルー達を囲み、セントラルタワーを守る事を主任務として設定された彼女達は、後手防衛をプログラムされているらしく、戦闘モードに変わった事は見て分かるのだが、彼女等から攻撃してくる事は無いようだ。


 「・・・・・・こっちから仕掛けても良いの?」


 「私に聞くな・・・・・・」


 雨宮の居ない時間と言う事もあり、やらかすと怒られるかも知れないとサダコの脳裏にふと過る。ロウフェルは特に何も考えていないようだが、先制を取るつもりも無いらしく、何とも言え無い無の時間が辺りを包み込む。


 (あれ?何も考えずに腕試しが出来るとか思っちゃったんだけど・・・・・・これって怒られる奴?)


 (倒したらお小遣いが貰えるかも知れない・・・・・・)


 既に給料を使い果たし、お菓子を購入する為の金を欲しているロウフェル、そんな事は起こらないのだが敵を倒せばお小遣いが貰える物だと考えている。


 しかしそんな間が焦れてしまったのか、ロウフェルが動き出し、左手にシールド右手にロングソードを構えたま迄跳び掛かる。


 「攻撃を確認、敵対行動と確定、迎撃、殲滅を開始します」


 エターナルグレーのコロニーは強力なフィールドによって守られており、火器を使おうがよっぽどの事が無い限りフィールドが減衰したり穴が空いたりする事は無い。

しかし無駄なエネルギーを使う事を避けるように設計されているタワー周辺の防衛戦力は、火器を持たず四十センチほどの金属棒を手の中から取りだし、飛びかかったロウフェルのロングソードを叩き割り、そのままの勢いでロウフェルを地面に叩き伏せた。


 「がぁっ!?」


 「ふぅんっ!」


 ロウフェルが取り押さえられた瞬時に危険を察知したサダコは、フルスイングでロウフェルを取り押さえた瞬間のアンドロイドを捉え彼方へとホームラン、それを皮切りに一斉にアンドロイド達は動き出し、周りのクルー達も戦闘状態に雪崩れ込んだ。


ーーーーーーーーーー


AGフォースVS (エリーside


 「こうやって外で五人揃うのは久しぶりですね」


 「エリーとしては中々ブリッジから離れられなかったから、ちょっと運動不足だけどね~」


 「・・・・・・それは皆一緒。アメリア以外」


 「私はブリッジクルーじゃ無いしねー」


 「皆火器管制ぐらい憶えて欲しいんだけどなー」


 イファリス・エリー・ホムラ・アメリア・センリの五人は、少し離れた所でロウフェル達を見ていたのだが、周りから同数のアンドロイド達に囲まれ、背中合わせに各々の武器を構え、今にも飛びかからんとジリジリ躙り寄ってくるアンドロイド達に相対している。


 「武装解除は求めません、抵抗を止めなさい」


 アンドロイド達の一人がよく判らない警告をしながら五人の中心に居るアメリアに掴み掛かる。


 「んんっ!?力強い!?うぉっ」


 目にも留まらない早さで両手首を掴まれ、そのままつるし上げられたアメリアはそのまま鳩尾に膝を入れられた事で強制的に全ての空気を一気に吐き出させられ、瞬時に意識を失った。


 「あめ・・・・・・きゅ」


 流れるような動きでイファリスの後ろに回ったアンドロイドの一人は、釣り上げられたアメリアの方を向き助けに入ろうと動き始める前に、首を両手で掴み同じ様に釣り上げる。


 あらぬ方向に曲がったイファリスの首を見たエリーは一気にその場を離れ、自身の周りにスキルフィールドを展開し追いすがってくるアンドロイドの一人を弾き飛ばす。


 「ちょ・ちょっとおかしいのよ~」


 そう。アメリアもそうだが此処に居るクルー達は、全員バトルドレスを装備している為露出している部分は無い。しかもこの第三世界では戦艦の主砲さえ無傷で受け止められるレベルの防御力を誇る新型BMシリーズを身に付けているのにも拘わらず、アメリアはその装甲を貫通し意識を刈り取られ、イファリスはその堅さを無視するレベルの力で首を折られた。


 BMシリーズには紋章技術を用いた魔力防壁を展開する機能や、ナノマシン変質技術による生体因子コントローラーが備わっており、その物の自重を重くしたり軽くしたりする事も出来る。


 だがそれを完全に無視したアンドロイド達の攻撃に晒され、眷属クルー達でさえ互角以上に戦う事が難しい状態になっている。


 (ナノマシンはちゃんと機能しているの、多分アンドロイド達の機能として何か有るの)


 センリがチェーンソーをフルドライブさせ、アンドロイドの一人を両断し、残った三人のアンドロイドにのしかかられ押しつぶされる。


 ホムラはスキルをフルで使用し、全ての攻撃を回避する事に専念しているが攻撃の手が出ず、エリーが離れた事で残る四人のアンドロイドの一斉攻撃を辛うじて躱し、エリーの思考時間を稼ぐ。


 (あのアンドロイドの断面・・・・・・ナノマシンスキャンなの!・・・・・・通った!)


ーーーーーーーーーー


ガーディオン型アンドロイドNo.88745484 D・ブレイバータイプ 銀河帝国所有


 Σエナジー 18000/50000


 イマジンキャンセラー 正常


 フォーチュンキャンセラー 正常


 ガーディオンリンク 正常


 フィンガーミサイル 10/10


 アイ・レーザー ロック中


 電磁フィールド発生装置 破損


 アンチグラビティシステム ロック中


ーーーーーーーーーー


 (・・・・・・ほぇ?)


 その情報が手に入ったのは、丁度ホムラに向かって四十の指が向けられた瞬間の事。その一歩早く未来を見たホムラはバイザーの下で青い顔になり、絶叫。


 「はぁーー!?ミサイルとか無いでしょ!!」


 「違うのよ!ミサイルじゃ無いのよ!当たったら死ぬのよ!」


 エリーの思考加速によって導かれた結論は、フォーチュンキャンセラーと言う謎の装置の機能、精神生命体と肉体の結合を絶つ、それは即ちエーテルサーキットへの妨害機能、肉体のコントロールを瞬間的に失い無理矢理肉体から精神生命体が離れる。つまり、死ぬのだ。そしてミサイルで肉体を消滅させる、これが彼女達ガーディオン型アンドロイド達に基本戦術として組み込まれたプログラムだと言う事がエリーには判った。


 逆だと確実には仕留めきれない事がエリーには直ぐに分かった、しかしそれが判った所で見えない攻撃など止めようが無い。


 エリーに出来る事はスキルでホムラを守る事だけだったが、ごっそりとフィールドに干渉する何かがエネルギーを奪ったが確かに防ぎきった。両断されたアンドロイドのエネルギーが尽きた事を確認し、エリーは慌ててホムラを抱えてロペの影に隠れる様に撤退した。


 「どしたのぉ?」


 「みんな死ぬ!みんなしんぢゃう!」


 エリーは直接ロペに触れ、分析を済ませたガーディオン型アンドロイドの詳細をロペに渡した。


ーーーーーーーーーー


side ロペ


 (あー・・・・・・見た事無い奴だこれ)


 ロペはエリーから齎されたガーディオン型のスキャンデータの一部をサラッと見ながら、長く生きたロペの記憶の中に全く存在しない情報で在る事を改めて確認、エリーの分析にさっと目を通し、自分は大丈夫だと思い腰のアタッチメントに入っている黒いチョークのような物を取り出した。


 「否定・接近・五メートル」


 ロペは空中に黒いチョークのような物で魔方陣のような物を書き、周囲五メートルを覆う不思議なフィールドを展開して少し考える時間を捻出する。未知のフィールドに遮られたミサイルやレーザー、アンドロイド達はその周辺に居るティオレやエクス達にターゲットを切り替え、飛びかかっていく。


 (なぜか分解出来ないからこれ以上の情報は出て来ないみたいだけど・・・・・・、これ良く見たら銀河帝国の所属になってるんだけどなぁ)


 ティオレに向かっていったアンドロイドはレイピアで穴だらけになり、煙を上げながら動きを止めた。機能停止にまで追い込んだ事で次へと意識を切り替えたティオレは、視線とナノマシンリンクにより可能な限り当たりを警戒していたのだが、レーダーに反応しないスキルの予備動作を見逃し明後日の方向を向いた。


 「ティオレ!トドメを刺しなさい!」


 「!!」


 アンドロイドの視線は動きを止めながらもティオレから離れず、ロペの眼にアンドロイドの閉じない目から一筋の光が奔るのが映る。


 それは紛れもない光、ハイパーヒューマノイドの上位種に進化したロペやティオレで無ければ感知出来ない光速の何か。ティオレはロペの言葉に強烈な悪寒を感じ普段は到底そんな動きは取らないが、アンドロイドの視線から身を守る為に思いっきり背を反らし、ティオレと同時にロペの声に反応し頭を抱えて、自身の直ぐ後ろにしゃがみ込んだアマリーの頭をその後頭部で思いっきり叩き付ける形になり、アマリーはその勢いに負け完全に地中へと姿を消した。


 「アマリーっ!?」


 「其れ処じゃ無い!早くトドメを刺しなさい!」


 しかし破損したアンドロイドはエネルギーが切れたのか二度目の光を放つ事は無く、完全に沈黙していた。


ー僕は埋まり損かよー!


 穴の下からアマリーの悲痛な声が聞こえる地上は乱戦となり、簡易的に対策が伝達されたクルー達はアンドロイド達の視線が交わる場所を高速で避けつつ、味方と接触しないようにナノマシンリンクを絶やさないで全方位の情報を共有する。眷属クルー以外のクルー達は早々に撤退し植栽の裏に隠れたのだが、ガーディオン達には意味を成さず、隠れた後ろから当て身で脳を揺らされ全員が意識を失いアンドロイド達に担ぎ上げられたまま拘束されている。


 既に何人かの眷属達は倒れ、本来ならナノマシンによる自動回復システムが起動し、既に初めにやられたロウフェルなどは復活している筈なのだが、一向に起き上がる気配は無い。


 (既に何人かの精神生命体がそこらに漂っている見たいだけど・・・・・・私にはどうしようも無いなぁ)


 雨宮が居ればΔエナジーを使い精神生命体を再び繋ぎ合わせる事が出来るのだが、Δエナジーを操るには素質や技術が要る。ロペには才能はあるが技術が無い。雨宮からそれを教わりたいのだが、雨宮自体がそれを旨く説明出来ない為に雨宮はそれを出来ないで居た。


 ロペは武器すら構えずジッとしているお陰でどうやら敵視されずに居るようで、その影に隠れたエリーとティオレはアンドロイド達の視線が自分達の方を向かないかハラハラしながら周囲を警戒している。


 眷属クルー達は慣れてきたのか少しばかり形勢が傾いてきたようで。先程迄一方的にやられ徐々に数を減らしてきたが、時間が経つにつれバラバラになったアンドロイドが増え、倒れ際のカウンターを躱し始める者達が現れた。


 「エクちゃんエトちゃん、こっちに向けないでねぇ」


 「もーだいじょうぶやよー・・・・・・あっ」


 「流石にもうそんなヘマは・・・・・・あっ」


 高速でフラグを回収するイロリナート姉妹は、お互いの倒したアンドロイドの視線が自分達と目が合ったらしく、肉体から精神生命体が引き剥がされその場に空の肉体が崩れ落ちた。


 (あーあー・・・・・・二人共・・・・・・)


 とは言え助けにいこうにも下手に動けば自分がターゲットになって仕舞いかねない事もあり、ロペは光が身体を貫き、肉体と精神生命体に引き剥がされたエクスとエトラの二人を眺め次の手を考えている間に、自然とロペの周りに生き残ったクルー達が集まってきた。


 「ロペ様!もうこれ以上は!」


 「あいつら疲労しないんです!」


 「あーっ!フィールドが狭いですっアーッ!」


 主に攻め手に欠け回避に専念していたクルー達が、疲労困憊の状態でロペのフィールドの中へと転がり込み、息も絶え絶えに愚痴をこぼしながら回復を待っている。


 「皆そろそろギブアップする?」


 ロペはもう良いだろうと、そろそろ雨宮を待とうと軽く促したつもりのロペだったが・・・・・・。


 「「「「「「「「「「やだ!!!」」」」」」」」」」


 全員が歯茎を剥き出しに威嚇する柴犬のように唸り、声をシンクロさせて完全否定。


 (もー・・・・・・皆銀河きゅんが帰ってきそうな予感がしてるんだねぇ)


 少しでも良い所を雨宮に見せたいと膝を折る事を拒否したクルー達は、瞬時に脳内とナノマシンへのリンクを訓練用戦術試験リンクから、殲滅用戦略リンクへと切り替えティオレとアマリーの二人を除く全員が雨宮からキツく注意を受けていた事を忘れ、武器を抜いた。


 (あーあ・・・・・・、これ何て説明しようかなぁ)


 そしてこれに反応したのは勿論アンドロイド達。


 「殺傷能力の高い武器を確認、制圧モードから殲滅モードへ変更を申請」


 (申請?あぁそっか、銀河きゅんの管理下にあるのか。じゃあだいじょ)


 「モード変更申請が受理されました。殲滅モードへ移行します」


 「通るんかいっ!!」


 ロペはてっきり雨宮はその申請を却下し、この地獄絵図を終わらせると思っていたが、雨宮の回答は申請を許可し何かを望んでいるのだと悟るロペは、今迄はサポートに徹していたが自分が前に出なければならない事があるんだと、長い長い過去の思い出を振り返り初めて見る今を心に刻み、やはり雨宮は面白いと改めてその口元がふにゃと緩む。

 「しょーがないなー」


 ロペは遠い遠い過去に見た目が良いと言うだけで選び、それ以来数えるのも嫌になるほど振るってきた黒い革の鞭を取り出し、二つ折りにして勢いよく張る。


パァーーーーーーーーン!


 爆弾でも爆発したかと思うほどの大音量が辺りに響き渡り、突如自分達の真後ろから飛んできた大音量の波に驚いたクルー達は一瞬振り返り、その謎の迫力に息を呑む。


 「ちゃんとした戦闘行為は久しぶりだなーぁあっと」


 つかつかと他のクルー達を差し置きガーディオン型アンドロイド達の前へと進み出るロペに併せたかのように、アンドロイド達の後ろから一人・・・・・・一機色の違う布を纏ったアンドロイドが進み出た。


 「高密度精神生命体を検知、機能制限を解除。Σエナジーフルストリーム」


 青白い電撃を放つオーラを纏ったアンドロイドは全ての機能をフル稼働させ、十本の指の形状を鋭利なナイフのの様な物へと変化させ、両目と口の辺りに戦艦の主砲かと間違えるほどの高エネルギーを収束させる。周囲の瓦礫が重力を無視し下から上へとパラパラ立ち上っていくが、そんな事には一切興味を示さず足の裏から重力をコントロールして居るであろう波動を放出し、ロペが彼女の完全変形を見守っている様子をその場に存在している全てのアンドロイドが注目し、情報量が多かったのか彼女の後頭部が開き、後ろの瓦礫を吹き飛ばすほどの勢いで放熱し、完全な臨戦態勢が整った。


 クルー達は全員でアンドロイド達がしているのと同じ様に、一際異彩を放つビーチにでも来たか?と疑う赤い紐ビキニの機体を注視し。リアルタイムでナノマシンリンクの出力を全開にし、ロペへと情報を集約する。


 より情報を多く手に入れ、より相手の不足している情報を把握した方が勝つという、図らずしも高次元な電子戦へと突入した双方は、時にクルー達の情報収集を邪魔するようにミサイルが飛び、そのミサイルを魔法で打ち落とす。出力が僅かに上がった機体へとレーザーガンが火を噴き、バリアで防がれる。


 そんな時間が続くかと思われたが、アンドロイドよりロペの演算能力の方が上回っていた様で、ロペは雨宮と同じ黒いオーラを纏い鞭の柄を握り込みながら、フリフリと中空を踊らせるように鞭を撓らせ、時折空気を弾くようなパンパンと乾いた音が鳴り、ロペは五メートルは有るで在ろう鞭の射程範囲へと辿り着いた。


 「保留、反転、増幅、破壊」


 辿り着いたと同時にアンドロイドの首から上が宙を舞い、それと同時に宙を飛ぶアンドロイドの顔面から四方八方へと光線が飛び交い、ロペはそれを全て打ち払った。


 観る事こそが今の自分達の闘いだとクルー達は言い聞かせ全てを一部も漏らさず観察していたのだが、クルー達は自分達が何を見ているのか把握しきれず、少しの興奮と少しの羨望、そして少しの嫉妬と少しの恐れが入り交じり、ロペがこんなに強かったのかとフルフェイスの下で生唾を呑み込む。


 全ての情報を咀嚼する事無くダイレクトにロペへと送っているのに、当の本人は何食わぬ顔でその生情報を秒に満たない時間で完全に戦略として構築し直し新しい分析結果を瞬時にクルー達へと拡散する。只観ているだけでクルー達の戦闘能力は向上し、軍としての練度が上がっていく。圧縮された情報達はサーバーを経由し銀河旅団全体へと共有され、同時にロペの異常な戦闘能力の高さもクルー達へと伝わっていく。


 ロペは右手で鞭を片手持ちしフラフラと次は誰が掛かってくるのかと挑発するようにこれ見よがしに振ってみせるが、既に最大戦力が機能を停止しているアンドロイドはまだ何か隠し球があるのか、ジリジリとセントラルタワーの入り口の方へと移動していく。


 (まだ何か有る?・・・・・・ん?)


 アンドロイド達がタワーの入り口に集まり始め、エレベーターを背に警戒に入るとエレベーターの扉が開き雨宮がコアルームから戻ってきた。


 「銀河きゅん戻ってきたんだねぇ・・・・・・」


 雨宮は戻ってくるなり死屍累々の惨状を目にし、肩を竦めロペの方へと歩み寄っていく。


 「詳細を聞くぅ?」


 「手短にな・・・・・・」


 ロペは掻い摘まんで状況を説明すると、雨宮も何となくクルー達の行動が読めていたのか、辺りをさっと見渡すと全員へとナノマシンの風を散布し、双方の戦力を復活させる。


ーーーーーーーーーー


side 雨宮


 異世界の管理者を牢屋へと入れた後の雨宮は地上に戻り、案の定ちょっかいを出していたクルー達とアンドロイド達を復活、再生し雨宮は近くのベンチへと腰を下ろした。


 「ふぅー。皆やり過ぎだろーロペまで混ざっちゃってさー」


 「あははー、久しぶりに身体を動かしたくなっちゃってぇ」


 「一応味方同士なんだから・・・・・・ってまぁこんなもんか」


 「手加減なんて出来ないょ?」


 「せやせや、あんな攻撃反則やわぁ」


 運命を断ち切る超高出力レーザー攻撃、この機能はアンドロイド達にとって必要に成る事態に成ったからこそ装備されたのだが、本来は当たり前だが味方に向かって使うような物では無い。


 雨宮が戻ってきた事で周りに退避し、アンドロイド達に気絶させられていた者達も彼女等に肩を支えられともに雨宮の元へと集まってきた。


 「まぁ、散々やられてどうだった?」


 「おにーさんああいうのは教えておいて欲しかったなー」


 サクッと意識を刈り取られたアメリアは雨宮の後ろに回り、自慢の胸を雨宮の頭に乗せながら深いため息をつく。


 「良い実戦訓練になっただろうに」


 普通そう言うのは教えて貰えるもんじゃないだろ?と雨宮はアメリアの上半身に少し体重を掛けて感触を楽しむ。


 無傷のままで精神生命体だけを切り離された者が多かったが、それはアンドロイド達にとってそれ以外の有効打を見つけられなかったと言う事も意味している事から、戦闘能力という点においては互角かそれ以上で有ると言う事はハッキリした。しかし雨宮にとってはこの戦闘はあまりよろしくない物で在ったらしく・・・・・・。それもその筈、雨宮はつい数時間前に惑星一つを丸ごと再生したり、その場に存在した生物などを丸ごと分解再生したりと、今日までに溜め込んだエネルギーの大半を消費し虚脱感に襲われている。その上で最もエネルギーを使ったランキングトップファイブの中に入る、エターナルグレー防衛の為に配置したガーディオン型アンドロイド達を破壊され、更に眷属クルー達を含む多くのクルー達が死んでしまった為、エーテルサーキットの再生に多くのエネルギーを消費した。


 訓練や試しなどと言うレベルとはかけ離れている事態に雨宮はついついため息が出る。


 「銀河きゅん?そう言えば最後に一体色違いのアンドロイドが出てきたけどアレは・・・・・・」


 「あー・・・・・・プロトタイプガーディオンか、アレはどこから来たのかわからんのよな」


 「ええっ!?」


 「因みに俺が造ったのでも無い」


 「んんっ?」


 「此処に来た時に初めて気付いたんだけどさ、何か一体多いって」


 「大丈夫なのそれ?」


 「多分・・・・・・。でもロペは簡単に倒せたんだろ?」


 「まぁ・・・・・・武器使ったけどぉ・・・・・・」


 「だろ?アレが一杯居る訳じゃないから問題ないさ」


 「でも全身からあのレーザーが出るのは反則だとおもぅ」


 雨宮が言うにはエターナルグレー防衛システムは生産を主にしているのだが、設計は出来ないらしく、輩出する生物にしても防衛に配備するがーディオンにせよ、システムでは生み出す事が出来なかった為、エターナルグレーではガーディオン型アンドロイドを複製する事しか出来ず、元々彼女達は他の誰かが設計図をエターナルグレー防衛システムにインストールしたのだと言う事だ。そして恐らくその何者かがプロトタイプガーディオンを置いていったのだろう。


 ロペとの闘いではあっさりやられたように見えるプロトタイプだが、本来の性能が発揮出来ていたのなら、一機で世界を破滅へと追いやる事が出来るレベルの超高性能アンドロイドで、尚且つ雨宮が詳しく調べた所、妙に人間くさい人格を有していたのだと言う誰得情報まで雨宮はだらだらと話していたのだが、其処まで話してロペがその話に食いついた。


 「銀河きゅん何で人格消しちゃったの?」


 「別に消したんじゃねーのよ、出荷状態に戻っただけ。要らないから其処は復元しなかったんだわ」


 「そう言うもの?」


 「こっちで新しく生み出されるのに元の世界の情報全部持ったままとか、普通に考えたら困るだろ」


 「そう?銀河きゅんも今回はちゃんと前世の記憶持ち越してるじゃん?」


 「・・・・・・そう言えばそうだな」


 「まぁそれは私が色々出来るようになったから、今回から初めて出来るようになったんだけどねぇ」


 「色々?」


 「まぁ、それもこれも記憶が戻ったから思い出せた話なんだけど、詳しく話すと世界の成り立ちから話す事になるし、何千年掛かるか・・・・・・」


 「そんな深い話なのか」


 「元々銀河きゅんは世界を跨ぐ度に記憶を失うからねぇ」


 「何で?」


 「んー、普通の人間としてはそれで普通なんだけど、銀河きゅんはそれじゃ駄目なんだよねぇ?役目が果たせないから」


 「役目?」


 「そ、でもその話は船に帰ってからにしようねぇ。疲れてるでしょ?」


 「そうだな、それにエネルギープールの残量が気になるから、それについても考えないとな」


 「旦那様?この子達はどないしますの?」


 雨宮が直したアンドロイド達は元の配置に戻り、一応直したプロトタイプガーディオンも立ち尽くしたままで此方を見ている。


 「プロトタイプは連れて帰るか」


 「「「「「怖い怖い!!」」」」」


 「だがあいつをこのままにしておけば、連合軍が持って行ってしまうかも知れないぞ?」


 「それも困るねぇ、と言うかアンドロイドって簡単に持って行けるの?」


 「まぁ無理だろうな」


 「戦争に成りそうですね」


 ティオレが少し周りを見て回っていたが、粗方問題が無い事が分かったのか雨宮の側に戻ってくる。・・・・・・そしてその真後ろにプロトタイプガーディオンがピタリとくっ付いている。


 「わぁ!?」


 声を上げてティオレが振り向くと、何故かそれに併せてするりと動き視界に入らないように動く。


 「何をやってるんだ・・・・・・」


 「置いて行かれても困るのですが・・・・・・」


 「「「「「シャベッター!」」」」」


 「お前喋れたのかよ、いや、機能的には皆喋れるのは知っていたが」


 プロトタイプガーディオンは眼に当たる部分を閉じたまま、そっとティオレの肩に手を置き雨宮を覗き込むようにひょこっと顔を出し、口元だけを不満げに引き締め雨宮が考えを変える事を待っている。


 「と言うかこの子は自我を持っているんだねぇ」


 「当たり前です、私はその辺に居る量産型の妹達とは違います。私は・・・・・・」


 「ハイハイ、皆銀ちゃんの用事が終わったから一回船に帰るのよー」


 雨宮はふぅと短いため息をつきながら立ち上がり、プロトタイプの頭にぽんと手を置くと、踵を返し一旦ラピスへと帰る事にした。


 その雨宮に続き周りのクルー達も、自分が壊してしまった周囲の地形を戻しその場を立ち去っていく。


 「ロペ様?」


 「ん?」


 「戻らないのですか?」


 「ん、戻るょ。先に行ってて」


 「・・・・・・はい」


 ロペは全員がその場を去った後、一人でその場に残り先程雨宮の座っていたベンチへと腰を掛ける。


 (あぁ・・・・・・もうめちゃくちゃだねぇ)




Σエナジー


 運命を司ると言われている第四のエネルギー。


 世界や生物、無生物等を造る際には必要とならないが、被造存在が世界に配置される際に紐付けられ、一定量供給される有限エネルギー。


 又の名を運という。


 運とは無意識下で認知していない事柄を決定付ける要素の一つで、それを認識した際に当人の有利に成るか否かその二択を良い方向に決定付ける為に消耗する。


イマジンキャンセラー


 運命を司るΣエナジーを消費し、数多の幻想を消し去る波動を放つキャンセラーシステム。かつて未曾有の大破壊を齎した悪しき管理者の発明品の一つ。ガーディオン型アンドロイド達全ての口の奥に装備されている。


フォーチュンキャンセラー


 運命を司るΣエナジーを消費し、精神生命体の世界との接続を強制切断するキャンセラー微粒子加速砲。効果範囲こそ極小極短だが、かするだけで死ぬ。ガーディオン型アンドロイド達全てのメインカメラの奥に装備されている。


ガーディオンリンク 


 ガーディオン型アンドロイド達全てに網羅された高速双方向情報通信網。エターナルグレー防衛システムを中心としあらゆる情報をリアルタイムに共有する事が可能だが、距離が離れる程タイムラグが大きくなるΣ空間通信方式を利用している為、エターナルグレーから離れる程情報に齟齬が発生する。


フィンガーミサイル 


 ガーディオン型アンドロイド達全ての両手の指に装備された消耗品。女性の指の細さ程のミサイルだが、ミサイルの中身は小型水素爆弾で在る為、ミサイルの外郭部分に効果範囲圧縮の紋章が刻み込まれており、周囲に大きな影響を及ぼす事は無い物の、その爆発に巻き込まれた部分はこの世界から消滅するだろう。


アイ・レーザー 


 ガーディオン型アンドロイド達全ての眼球型粒子加速砲にプログラムされた物理殺傷兵器。Σエナジーを極少量消費し、破壊的な力に変換し物理的に攻撃する。この攻撃に晒された相手は鈍器で殴られたような錯覚を覚え、衝撃で吹き飛ばされる。


電磁フィールド発生装置 


 あらゆる物理的干渉を阻害する、電磁誘導フィールドを発生させる装置。Σエナジーの消費量により比例する質量を発生装置からズレた位置へと誘導する事で攻撃を回避する。光学兵器に対してもある程度有効だが消費エネルギーが比較にならない程多くなり、銀河旅団の使う携帯小型粒子加速砲を数発避けるだけでエネルギーが枯渇する。


 が、一般的な第三世界の光学兵器なら数十発は無視出来るぐらいの物で在る。


アンチグラビティシステム


 とある世界で発明された超小型重力制御装置を転用した反重力発生システム。システム的に無重力空間では機能せず、重力下空間での使用を想定された制御装置。


 漫画の飛行術のようなふわふわとホバリングするような使い方は出来ず、反作用により勢いよく射出されてしまう為、重力が強ければ強い程超高速で撃ち出される様に目標へと突っ込んでいく。


確率誘導装置


 Σエナジーを使用する際に必要な変換装置のような物。


 この装置を通さずにΣエナジーを使うと、結果が予測出来ず任意の結果が得られない事から必要とされ造られた。しかし完成には程遠く、この装置を通したとしても成功率は八十%を下回る。しかしこの装置を通す事で方向性を決定付ける事が出来る為、ある程度の結果は約束される。

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