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EP87 新しい|惑星《ほし》

夏前倒しも嫌だけど、暑い梅雨も嫌だなぁ。

 ラピス中央部に収納された主砲は一瞬全てを白で埋め尽くす程の光を放ち、周辺宙域に放流された構成資源が一気に収束し一カ所へと集まっていく。


 光の中で二つのコアが完成し一気にナノマシンが増殖を始め、それに併せて惑星(ほし)の命が芽吹き始める。


 自らの身体がそれで在ると分かっている様に放流された構成資源を渦巻く様に纏い始め、光へと還元された構成資源は形を失いながら徐々に大きさを増していく。数分もすればそれは雨宮の知る物とは少し違う・・・・・・否、かなり大きさの異なる月へとその姿を取り戻していた。


ーーーーーーーーーー


マギア・ラピスメインブリッジ


 「ふぅ・・・・・・」


 エネルギープールのエネルギーを六十%も消費し惑星を一つ再生した雨宮は、シートに背を預け頭に手を当てて深くため息をついた。しかしそれを聞いたブリッジの男衆は、たった六十%かとそう思ったのだがそれもその筈、普通惑星一つを作り出すのにどの位のエネルギーが必要なのか等解りようも無い。そんな事が起こりうるとも考える事など今まで無かったのだから当然と言えば当然である。


 「もう何が何だか解らんな」


 「神にでも成ったのかよ?」


 「管理者なら誰でも出来る・・・・・・あれ?」


 雨宮は何時の間にか管理者権限を手に入れていた事に気付き首を傾げる。


 (・・・・・・あの虫か)


 今迄はロペを通じコピーした管理権限を使い世界の外側に触れてきた。しかしその権限は飽く迄コピー、権限のホストが居て、ロペにそのつもりは無いのだろうが全ての権限を凍結しようと思えばそれも可能だった。雨宮はナノマシンを通じて完全な権限を手に入れた事で未知の世界をその手に収める事になったのだが・・・・・・。


 (既に無い世界の権限を手に入れてもなぁ・・・・・・何か引っかかるが・・・・・・)


 思考の海に沈みかけた雨宮を引き戻す様に各地に散っていた本来のブリッジの主達が続々とブリッジへと戻ってきた。


 「ただいまぁ」


 ふと雨宮がブリッジの入り口の方を見ると、海王星ダンジョンの浅層にいた不定形モンスターの青いプリリンをその腕に抱え、ロペは疲れ切った表情で副艦長席へと腰を下ろした。


 「もう頭が焼き切れそうだょ~」


 冷たいのか何なのか、シートに背を預け天を仰いだままプリリンを顔面にもにっと乗せ、ぷるぷるとその姿を震わせるぷりりんは何処か雨宮の方を見ている様で、雨宮は目と目が合った様な奇妙な感覚を覚える。


 (・・・・・・あ?・・・・・・あぁ気になるのか)


 プリリンと言えば雨宮もダンジョンからの出際に犬とプリリンに成った転生者を拾ってきた事を思い出した。彼女等は特に連れて歩いては居ないがラピスの中にで勝手にうろちょろしている様で、時々犬の背に乗ったプリリンを見かけるという話を雨宮は聞いていた。彼女等も新しい人生?を悠々自適に過ごしている。時々雨宮の元へと戻ってきてNVDのコックピットに入っただの、姉の毛が抜けてウザいだの報告しに来る。


 「二人はその辺をうろうろしてるぞ、散歩でもしてるだろ」


 「ほぇ?」


 ぷりりんはロペの顔の上から飛び退いて入り口の方へとぽいんぽいんと弾む様に移動したのだが、扉はIDが無ければ空かない為、再び雨宮の方をジッと見つめている気がする。


 雨宮は遠隔操作で扉を開けてやるのだが、ふと二人にはIDを持たせていたと思い出す。


 「ロペ、コイツにはIDを出してやっていないのか?」


 「ずっと持ち歩いてたから忘れてたねぇ」


 何処に?と雨宮は思わなくは無いが、そう言えば背中に張り付いていたり、座布団代わりに尻の下に敷いたりしていた様な気がする。ぷりりんの称号ステータスには『ロペの座布団』の文字が輝いている。


 ロペは端末を操作し、供給の再開されたエネルギーを使ってぷりりんの身体?にナノマシンを埋め込んだ。


 「ん、これでおっけ。あそんどいでー」


 ぷりりんはぽいんぽいんと弾む様に開いた扉から出て行った。


 「で」


 「ん?」


 「アレは何?どうなってるの?何をしたの?」


 (おや?)


 「惑星ってさ、登録が必要でね?」


 「ああぁそういう事か」


 惑星を一つ作り出す為には世界との紐付けが必要で、世界のエネルギー循環のサイクルに入れ込む為に何処でそのエネルギーを受け取り、どうやって排出するか等、様々な要件をクリアした上で成り立っている為、其れ等の要件全てを満たしていると言う事を解りやすくする為に、登録という手順を踏む事に成るのだが、今回の件は結局新しく作った訳では無い、死の惑星となる前、それこそこの世界に月という衛星がコピーされ配置されるより遙か昔の情報が存在していた為、雨宮はその情報を読み。この世界ではやはり既に死の惑星として存在していた月の内側だけを世界単位でロールバックし、外側を数千年単位で巻き戻した。


 ロペから見れば見た事も無い月の核(コア)と、それに併せた様に造り出されていく姿を目の当たりにした物だから、新しく作り直されたと思ってもおかしくは無い。事実とは違うが雨宮も詳細を詳しく伝えていた訳でも無く、後から手に入れた力を使って事を成したが為に、ロペの混乱も然もありなんと言った様子で、まぁ座れよと説明をする為の言葉を探している。


 「色々言わなけりゃイカン事も多くてな?何から順番に言えば良いか」


 「マッサマンで色々遭った訳だね」


 「まぁ・・・・・・そういう事なんだわ」


 雨宮固有の位相空間には今も謎世界の種が有り、ロペ達の見られない雨宮の内部情報(パーソナル)には既にロペの過去、ベロペとしての管理者権限を遙かに超える権限が雨宮の好奇心を刺激し続けている。


 この世界の事もまだ隅々まで見られていないのだが、雨宮は更に外側の方へとその目を向けていた。


 「えーっと・・・・・・まずごめんな?」


 「ぉ?」


 「グレン・カリバーン死んでたわ」


 「あら」


 厳密には雨宮が到着してから完全に乗っ取られたのだが、説明を省く為に端折り、後で纏めて詳細をデータ事渡そうと思い雨宮は端的に事実をブリッジで語り始めた。


 (ショウコには・・・・・・共有データで良いか)


 「あの虫達は別の世界から来た侵略者の手駒で、マッサマンに巣を作っていたんだが思ったよりこの世界に適応出来なかったらしくて、さっと分解した。そしたら色々出来る様に成ったんだわ。で、避難民は全スルーした・・・・・・俺はな。他の奴らはちょいちょい助けていたらしいがね?月をリログする時にその辺の奴らは適当に再配置するつもりだが、既に死んでいた奴らは情報が手に入らなかった奴が多くて全部データを放棄した。で、あの月は本物の月迄遡って再生した・・・・・・と」


 「情報が多ぃ」


 ロペは頭を抱え、周りの皆は首を傾げて雨宮の言葉をそれぞれ咀嚼し、状況を把握する事に努めている。後ほどデータを共有すれば労力を使わずに理解出来るのだろうが、そう言う考えは皆無い様だった。


 大分端折って説明したがロペは徐々にその内容を理解し始めた様で、足りない部分を補う様に矢継ぎ早に雨宮を質問攻めにし、雨宮は用意していた答えを淡々と語る。全ての情報が出そろった所で月の完成が間近で在る事を知らせるアナウンスが雨宮の脳内へと響く。


 「もう直ぐ月が元に戻るぞ」


 「元にて・・・・・・もう違う惑星じゃん?月じゃ無いじゃん?」


 雨宮の隣・・・・・・肘置きに腰掛けたジェニが雨宮の肩に背を預ける様に呆れた声で眼を細める。外の様子を映したモニターを直視出来なくなったからなのだが、他にもそれを見ていたARモニターを皆はさっと閉じ、目頭を押さえて一息つく。そしてそれが間に合わなかったテツや切嗣達が、どの位有るのか分からないレベルの光で眼を焼かれ転げ回っている。


 「「「眼がぁ!」」」


 完全に光が収まった後、雨宮達銀河旅団は改めてマッサマンの様なコロニーへと降り立ち、宇宙港らしき場所へと寄港する。


ーーーーーーーーーー


????


ーーようこそエターナルグレー国際宇宙ステーションへ、貴艦隊の所属と所用をお教え下さい


 「マッサマンじゃ無いのか此処」


 この惑星の元と成った惑星が健在で有った頃、この惑星は資源採掘用の惑星としてその世界に有り、採掘に従事する者達の集まる小さなコロニーから始まり、その大きさを徐々に拡大していき、歴史を重ねる毎に人は増え、文化も集い、多くの人々が集う惑星へと変化していった。


 しかし、この惑星には現在マッサマンで在った場所に産まれた者達しか存在せず、流石に雨宮でも別の世界で消えていった者達を作り出す事は出来なかった。と言うよりそんな事をする必要が無いのだ。


 「この宇宙港は自動化されている様だな」


ーー・・・・・・海王星圏銀河帝国所属、銀河旅団・・・・・・登録しました、貴艦隊の寄港を歓迎致します。ようこそエターナルグレーへ


 「人が間に入らないから早くすんで助かる」


 「中はどうなってるんだろうねー?」


 外から見たこの惑星は然程今迄見てきた月とは変わらず、空気も無い。半円のカプセルに覆われたコロニーが一つ存在するだけで、それ以外は何も無かった。しかしこのコロニーの大きさが尋常では無い。以前のマッサマンより遙かに巨大で、尚且つ文明が進んでいる様に見える。とても過去の物とは思えない。


 「中の人達に色々説明しなきゃだから、ジェニちゃんお願いね?」


 「えぇ~!?又交渉事ぉ?」


 「ジェニちゃんしか出来ないから」


 「しょうが無いねぇ・・・・・・」


 そんなやり取りが在りながらも、自身の立ち位置には然して不満が無い様子のジェニは、銀河帝国宰相という新たな肩書きを持って、交渉へと挑む・・・・・・と言うよりジェニの頭の中に在るのはほぼ強制、若しくは脅迫と呼べるやり方で、仮に共和国の政府やそれに準ずる者達が居た場合、ラピスにて手に入ったデータを元にこの惑星その物の所有権を主張し、全ての人間をこの惑星から排除する事も考えている。


 「ま、簡単に終わる事さね。チョイチョイッと終わらせてくるかぁ」


 「頼むよ」


 「あーいあい」


 ジェニは早速肩を竦めつつブリッジを後にし、外へと出て行った。


 「銀ちゃん、この惑星のデータが欲しいんだけどぉ?」


 「ああそうだったな」


 雨宮はナノマシンサーバーへと共有データを流し、そのデータへと一斉に眷属達がアクセスを試みた。惑星一つのデータはかなり巨大で、開発部門や研究部門医療部門等、処理能力の高い者達以外では徐々に咀嚼しつつデータを入手する他無く、エターナルグレーのデータを完全に我が物とするまでには多少の時間を要する事だろう。


 「凄い一杯資源が有るんだねー?聞いた事の無い物質も混ざってて楽しみー」


 エリーは戦闘系の能力を持ちつつトップクラスの処理能力を持っている為、そのデータを丸ごと呑み込み自身の高い処理能力で一気にデータを展開、惑星の全てを理解する。


 「母星か・・・・・・難しい話だねぇ」


 ロペも又突出した能力を以てデータを自分の物とし、分析に入っていた。


 「雨宮、このデバイスでデータ展開可能なのか?」


 新庄を初めとする非眷属クルー達は手に持った携帯端末を操作し、そのデータを展開しようとするのだが、そのモニターには絶望的な程の必要時間が表示されており、大凡生きている間に見られる情報では無いと新庄は端末をコンソールへ遠き、エターナルグレー宇宙港周辺を映し出すモニターを手元に引き寄せ、そのまま雨宮の返事を待つ。


 「時間の無駄だからやめておいた方が良い、ロペかエリー辺りが解りやすくしてくれるさ」


 「期待していよう」


 「私が見た事の無い惑星の情報とか理解するのに時間掛かるょ?しかも余所の世界の話しだし、しかも銀河きゅんの改良も加わってるし」


 他の眷属達の中にもロペやエリーに匹敵する頭脳の持ち主も多数存在し、雨宮へと様々な疑問や質問が降りかかり、徐々に雨宮の表情が曇っていく。


 (お前等質問しすぎ!ウザい!)


 「銀河きゅん?」


 (後で全部ロペに聞け!)


 雨宮は眷属達からのリンクを一旦遮断し再びARモニターへと視線を戻す。入港したドックの中には、人型をした何かが忙しなく動き、マギアシリーズ全巻の外部点検を行ってくれているらしい。


 「アレってもしかしてアンドロイドって奴か?」


 切嗣はモニターを拡大し、人型の一個体をズームアップして追尾する。


 銀色のキラキラと僅かな光沢を放つ髪となけなしの服装・・・・・・、胸と股間を覆うだけの布を装着したほぼ外見は人間と遜色ない姿をした、人とは違う存在。


 雨宮はナノマシンを散布し改めてエターナルグレーの情報を確認する。


 「若干違うな、バイオロイド・・・・・・この世界で言う機人種と類似した存在だな。違うのは生体機械では無く生物機械と言った表現が合っているのか分からんが、肉体の延長としての生体部品では無く、存在その物が機械として作られた人間・・・・・・と言った所か?」


 「ややこしくてわかりにくいねぇ」


 「安心しろ俺も解らん」


 雨宮も混乱している通り、その存在がどういった物であるかはさておき、このまま艦内に閉じこもっている事が目的では無いので、雨宮達は挙ってエターナルグレーの情報を収集するべく外へと繰り出す事にした。


ーーーーーーーーーー


エターナルグレー国際宇宙ステーション


 管外へと出た雨宮達一行は、つい数時間ほど前迄居たマッサマンとの違いに驚き、そして宇宙港へと詰めかけていた避難民達も又、意識を失った一瞬とも永遠とも思える時間の間に、一体何が有ったのか全く解らず、宇宙港内は混乱を極めていた。


 「おい!此処は一体何だ!?俺達を如何するつもりだ!」


 「・・・・・・照合完了しました、対応データなし、ようこそエターナルグレーへ」


 「おいっ・・・・・・エターナルグレー?なんだそれは?何処の事だ?」


 「当コロニーは資源開発衛星として、アストラAー78887番地より誘引移動させた世界でも最高品質の資源惑星で・・・・・・」


 雨宮達は混乱する避難民達の事を横目で見ながら、外へと移動しその光景に目を見張る。


ーーーーーーーーーー


エターナルグレー国際宇宙ステーション前ロータリー


 「「「「「おー」」」」」


 辺り一面に緑が生い茂り、メインストリートと思われる通りの到る所に街路樹が植林され、大気を循環させる目的で吹く風には以前の人工フレーバーの臭いでは無く、緑の香りが仄かに混じり、雨宮に地球の環境を想起させた。


 多くのビルや建物が建ち並ぶメインストリートが直ぐ近くに見えるのだが、澄んだ空気を胸一杯に吸い込んだ雨宮は、どこか日本の片田舎に居る様な錯覚を覚え、ふと郷愁の念に駆られる。


 「・・・・・・空気ってのは大事だな」


 「あぁ、俺もそう思う。前世の事をハッキリと思い起こしたのは今日が初めてかも知れない」


 「おぅ。田舎の空気を思い出したぜ、なんかヤバいもんでも空気に混じってないだろうな?」


 「地球の空気かぁ・・・・・・何か覚えてないけど、これだなーって感じするねぇ」


 「「「何でアンタが!?」」」


 テツ・新庄・切嗣の三人は、ロペが自分達の感情に同調する事に違和感が大きい様で、非常に驚いていたのだが、ロペからしてみればあんたら私の事知らんやろ。とそう思う。


 「あんた達三人が産まれた世界よりもっと前の世界に私は居たんだょ?ハッキリとは覚えていないけど、知っていてもおかしい事なんて何も無いょ」


 ロペは雨宮の腕を引き、メインストリートへと続く道を歩き始めるが、その後ろからゾロゾロと十数人も引き連れて歩く事に抵抗を感じた雨宮は振り返り、散開させ此処に見て回らせる事にした。


 「どうするの?広いょ?銀河きゅん」


 「判ってるんだが・・・・・・」


 雨宮の頭の中には、自分で生み出したこのコロニーの全体図が入っている為、何処に何が有るかは把握しているのだが、以前のマッサマンより数倍の大きさに成っている事も承知している。徒歩で回ろうと思えば半日は完全に潰れてしまうだろう。


 「海王星みたいにタクシーとか回ってないのかねぇ」


 「・・・・・・呼ばないと来ない」


 「そうなんだ」


 「省エネルギー政策なんだとさ」


 「エネルギー困ってたの?」


 「この衛星はどうしても地球圏を脱してしまうらしい、そのせいでマッサマンと同じ様にエネルギーを軌道維持の為に使わざるを得なかった様だな」


 「じゃあどっかにパルスエンジンが?」


 「いや、この惑星は魔導ジェネレーターを使ったグラビティフィールドを反転する事で、軌道維持のエネルギーを生み出しているんだけど、ジェネレーターの性能が不十分なのと、そもそもフィールド発生装置が未完成だから、維持にめちゃくちゃエネルギーを喰うらしい」


 「えぇ・・・・・・それって放って置いて良いの?」


 「いや、駄目だろ徐々に太陽系から離れてくぞ?」


 「其処は直さなかったんだ」


 「いや知らんのよ、魔導ジェネレーターとかグラビティフィールド発生装置とか、この世界の物と違いすぎてどうしようかと思ってさ」


 「フィールド発生装置はラピスのフィールド発生装置が使えない?」


 「・・・・・・構想がそもそも全く違うのよ、似た様な効果が有るんだが全くの別物なんだ」


 「その辺はキュキュちゃんとかに投げたら良いと思うょ?」


 「そか、物だけ作ったら何とかなるか・・・・・・」


 「大丈夫だょ、皆出来る子だょ」


 雨宮は少し考える様に首を傾げたが、少しだけ開き直ってロペの案を呑んだ。


 「良し、じゃあ今からコアルームへ行こう。ゼニスとライ、コッファ・キュキュを呼び出して・・・・・・と」


 必要な人材をピックアップし、この場に呼び出そうと考えていると、雨宮は何か忘れている様な気がして頻りに首を傾け眉をひそめている。


 「ん~・・・・・・?」


 「どうしたの?」


 「なんかこのタイミングで呼んだ方が良い奴が居た様な気がするんだよね」


 「良いんじゃ無い?」


 雨宮達一行は太陽系各地から戻ったばかりのゼニス・ライ・コッファ・キュキュを呼び出し、マッサマンで在った頃中央議事堂の在った場所にやって来た。


ーーーーーーーーーー


エターナルグレーセントラルタワー


 見上げても天辺が見えないほどの高さの謎の塔の元へとやって来た一行は周辺を警戒するアンドロイドに囲まれていた。


 「所属と目的を」


 「銀河きゅん?このロボット達は?」


 「・・・・・・ぎんがきゅん・・・・・・照合出来ませんでした」


 「あ・いや、そうじゃなくてね?そっちに話しかけてないんだけど」


 「何やってんだロペ?」


 一人何処を見ているのか分からないアンドロイドに近付くロペは、雨宮の方を振り向きながら問いかけるのだが、その言葉をアンドロイドに汲み取られ、会話の成り立たない状況を自ら作り上げてしまっている。


 「マスターコード0000登録、銀河帝国・皇帝・雨宮銀河」


 「・・・・・・マスターコードの上書きを確認、銀河帝国・雨宮銀河をマスターゼロへと登録、ようこそマスター」


 雨宮は造り出す際に全ての記録されていたデータをナノマシンサーバーへと移し、アンドロイド達を管理するサーバーのデータを基礎データを除き全て破棄していた。


 (この惑星を造った管理者の居た世界の情報とか有ってもしょうが無いしな)


 この世界にとって必要の無い情報を無駄に垂れ流す必要も無いと、雨宮はこのエターナルグレーには何一つ古いデータを残していない。ただ、雨宮の気がかりは他の者達とも一致しており・・・・・・。


 「銀河きゅん他のとこもこんな感じなの?」


 「全部な」


 「それ大丈夫なのぉ?」


 覗き込む様に不安げな表情を浮かべるロペは、アンドロイド達の後ろの扉へと向かおうとするがぐいぐいと押され「立ち入り禁止です」と阻まれている。


 「ぬぐぐ・・・・・・ものすっごいパワーなんだけどぉ・・・・・・?」


 「そりゃそうだ、向こうの世界ではこのアンドロイド達が世界を守っている・・・・・・いたんだからな」


 「何それ・・・・・・守護者なの?」


 「そうだな、こっちの世界で言う勇者とかそんなのだ」


 「それにしてはこっちの勇者より力がありすぎる気がしますね」


 入り口の前でごにょごにょしている所で呼び出した知恵者達が到着し、アンドロイド達を観察しだした。


 「まぁ当たり前と言えば当たり前なんだが、この世界と比較してはどうかって感じだな」


 「ん~・・・・・・何て言うか等身大人型決戦兵器みたいですねぇ」


 ゼニスは白いロングヘアーをフリフリと揺らしながら、身動き一つ取らないアンドロイドの一人の周りをぐるっと回り、制服の中に手を入れようとしてバシッと手首を叩かれている。


 「いッ!たぁ!?」


 生身のままでも普通の人間よりは遙かに強固なハイパーヒューマノイドの手首がだらりと垂れ、痛む手首を押さえながらぴょんぴょんと跳ねるゼニスを見たキュキュとコッファは、武器を抜こうと腰のナノマシンを溜めておくベルトに手を伸ばしたが、その手を雨宮に止められ、どうしたものかと痛む手を押さえて雨宮の側に戻ってくるゼニスを見る。


 「止めろ、武器を抜くな。死ぬぞ」


 「「「「先に言ってください!?」」」」


 彼女達アンドロイドは、正しくはワンダーガーディオンと呼ばれる存在で、彼女達の居た元世界である通称ワンダーエルゴと呼ばれる第十八牧場世界は、非常に多くの生物を生産していた世界なのだが、他の世界からの侵攻を受け世界は滅び無くなってしまった。


 そんな世界を守っていた世界の内部管理者、この世界で言うファムネシアの位置に居たのがエターナルグレー防衛システム、無機生物型管理システムの一機としてそのシステムがあり、その端末として産み出されたのが彼女達ガーディオン型アンドロイドだ。


 彼女達の役目はエターナルグレー防衛システムの防衛であると共に、ワンダーエルゴ全体の警察活動や防衛活動、そして外敵の排除。其れ等が主だった役割であったのだが外敵の排除に失敗し、エターナルグレー防衛システムはあえなく破壊され、ワンダーエルゴの外部管理者は逃亡したのだ。


 そしてその世界を破壊したのがハグラスティルバ、蟲の王である。


 「無機生物型管理システムかぁ・・・・・・話が通じるのかなぁ・・・・・・?」


 「大丈夫だよ、俺が造ったんだから。今マスター登録しただろ?」


 「え?あ?それの話だったの?さっきの」


 「そういう事、俺としては外部管理者の方が気になるんだがな」


 「確かに、何処行ったんだろうねぇ?」


 到着したばかりの彼女達には、基礎的な情報以外は何も登録されて居らず、宇宙港も新規登録するだけでほぼスルーして中に入れる状態になっている。今目の前に居る彼女達もシステムを守る為の行動を行っているのみで、それ以外の事は何もしていない。全てのアンドロイド達が真っ新な状態に戻っているので、ロボットと言っても差し支えない状態になっている。


 「ボス、このアンドロイド達は元々こう言う存在だったのですか?」


 「いや・・・・・・違うはず、データの上では個々の感情を備えるシステムが装備されているし、スペックとしてはこのガーディオン型だけじゃ無く、レーサー型やらシェフ型やら色々居る様だが、人型なのは変わらない様だな・・・・・・」


 「ではそのシステムを起動させれば、感情が動き始める訳ですね?」


 「・・・・・・その予定は無い」


 「?」


 雨宮はライから目を離し、塔の入り口を開けさっさと中へ入ってしまった。


 「「「???」」」


 呼び出された四人はそのまま放置され、ロペと共に首を傾げ雨宮へと付いていこうと再び入り口へと近付くが、アンドロイド達の対応は先程と変わらず、五人は門前払いの状態でその場に取り残される事になった。

ワンダーエルゴ 第十八牧場世界


 資源惑星エターナルグレーを中心とした、生物繁殖用システムを用いた生物交易を主な役割とする中規模世界。数多の世界へと向け様々な生物を輸出し、その替わりに更なる生物を生み出す為のリソースを他の世界から対価として得ていた。


 牧場世界は管理者によって産み出される生物に特徴が有り、その大きさや用途等も様々。


 ワンダーエルゴは主にエルフ系生物を他の世界へと放出していたが、造り出していた管理者が精神構造の作成に失敗していた為、感情の起伏に乏しいエルフが数多の世界へと溢れていったが、その容姿は非常に美的な感覚を刺激し他の生物を引きつける。魅了の因子を組み込まれて産み出されたエルフ達は管理者達にワンダーエルフとして通常のエルフとは分けて管理されていた。


 蟲の王《ハグラスティルバ》によって世界を奪われるまでは、エルフを輩出していたが、一時的に蟲の王に寄ってエルフとは名ばかりの別物が他世界に流れ、混乱を招いているという話もあるのだとか。


 蟲の王は世界の規格違いを把握出来るほどの知能を持ち合わせていなかった為、生産工場を掌握する前に世界のシステムを破壊してしまい、意図せずワンダーエルゴを消滅させてしまった。


ガーディオン型アンドロイド


 彼女達の役目はエターナルグレー防衛システムの防衛であると共に、ワンダーエルゴ全体の警察活動や防衛活動、そして外敵の排除。


 ガーディオン型は非常に高性能であり、その全てがエターナルグレー防衛システムと繋がっており、システムによって手足の様に様々な場所へと出向き無感情に世界を守ってきた。しかし産み出してきたエルフ達と接するうちに彼女達アンドロイドの中にも、感情を芽生えさせる者達が現れ別系統のアンドロイドへと進化していく事になった。


 ガーディオン型はワンダーエルゴに散逸するアンドロイド達の雛形であり、最終形態でもある。


 感情を持つアンドロイド達はガーディオン型に憧れ、その姿を英雄視し、彼女達の為に役割を果たす事を至上命題としている。第三超広域開拓世界等で言われる所謂勇者という存在と同質の存在である。しかし彼女達は勇者システムには干渉せず、エターナルグレー防衛システムによって守られていた為に、委員会の目をすり抜けてきた。


 ワンダーエルゴの最後


 蟲の王《ハグラスティルバ》に寄って無意味に破壊された世界は、エターナルグレー防衛システムの生物防衛プログラムによって、第三超広域開拓世界へとそのシステム全てをインストールされたアンドロイドを脱出させ、自己保全を図ろうとしていたのだがあまりに急で尚且つ世界の崩壊速度が異常に早かった為、第三超広域開拓世界への次元航路を特定した所で世界は崩壊した。


 後にその次元航路を使い蟲の王は第三超広域開拓世界へとやって来る事になる。


 バイオロイド


 ガーディオン型アンドロイドを元に造られた、対人間を想定して作り上げられた繁殖用生産兵器。


 他の世界の遺伝子を手に入れる為に数多の世界へと送り込まれていた第十八牧場世界の斥候的存在。


 エルフ系の容姿を参考にしてシステムが造り出した、ワンダーエルゴで最も多くのバリエーションを持つ種族。しかしワンダーエルゴ内にはほぼ存在せず、そのほぼ全てが他の世界へと旅立っていき、エターナルグレー防衛システムへと遺伝子情報を送り続けている。


 が、飽くまでも参考にした物であり、その容姿は提供を受けた側からの評価は低い・・・・・・所の話では無いらしい。


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